8月下旬。都内の某JR駅前に1台のマイクロバス。乗り込むと、すでに大方の席は埋め尽くされていた。いつかは靴作りで生計を立てたい学生やフリーター、すでに靴業界で働いているけど、販売職で、製造現場を見たことがないなんて人たち、およそ30人が参加した。

最初に向かったのは浅草のギルド。「ギルド・オブ・クラフツ」というブランド名で展開している手製靴工房で、一つひとつの工程を昔ながらの工具でつくるフルオーダー。実はオーダーメードは、伝統あるイギリスでも、特定の層を対象に細々と続けられている類いのもの。ところが、大量生産の反動からか、日本では作り手・買い手ともに熱烈なファンがいる。その先陣を切ったのがギルドというわけで、学生にとっては憧れのブランド。当日は底を縫い付ける作業を披露してくれたが、写真に納める参加者の姿は真剣そのものだった。

2つ目が埼玉・岩槻市にあるコンパニオン製靴。量産型の紳士靴メーカーだ。日本の靴業界の平均的なメーカーで、工場と言っても一般にイメージするそれとは大きく違う。機械こそ導入されているが、手が機械に替わっただけで、1足1足人が縫う。労働集約型産業と言われるゆえんで、靴とは、そんな無数の町工場がつくり続けて来たのだ。

最後はアキレスの足利工場(栃木)。コンパニオン製靴に比べれは大掛かりな製靴機械も導入されていたが、人の手が必要な点では変わらない。驚いたのは何室にも渡って設けられた試験室。靴の色落ち、耐久性といった試験は、たいがい専門施設に委ねられる。試験スペースがあるだけでも驚きなのに、その充実ぶりは、世界的に見ても、1メーカー規模で考えれば希有な存在。

この企画を主催した、僕も所属するシューフィルとは、“靴が好き!な人のためのカルチャーマガジン”と銘打つ靴の専門誌。靴への愛着とこだわりをもつ人と人、売り手と買い手を結ぶ媒体で、言ってみれば、“靴メーカー見学バスツアー”はその実践編。ツアー終了後は、これまた恒例となった打ち上げで、最後は参加者同士で連絡先を交換しあった。
もちろん、来年も開催する予定。ただ、「これ以上参加者が増えると、大型リムジンを借りないといけないね。都内のメーカーはろくに敷地がないから(車が)停められるか心配」とうちのボスは嬉しい悲鳴をあげてます。

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