「めまい」がするほど独創的

ヴェルティゴ クラシック
ピエール・クンツ ヴェルティゴ クラシック
自動巻き、レッドゴールドケース、アリゲータストラップ、グレイゴールド
313万9500円(予価、今秋発売予定)

針が目にも留まらぬ早さで急旋回する「ヴィルヴォルタント・レトログラード」や1本針がサイクロイド曲線の軌道に沿って時刻を表示する「インフィニティルーピング」など、遊び心あふれる複雑時計をこのところ連発するピエール・クンツ。そして今年は、針が落下する「ヴェルティゴ」だ。

スイス時計の中でも特異な作風が際立ち、なにかエキセントリックな人物を連想しがちだが、クンツ本人はいたって真面目な人柄で、生粋の時計師として機構やデザインを発想しているところが興味深い。なにしろ、ブランドのスローガンは「スピリット・オブ・チャレンジ」だ。フランク・ミュラー・ウォッチランド・グループの優れた製造技術が背景にあり、自由な発想で時計づくりに挑戦できるのは、幸せなことに違いない。

さて、2009年のハイライトとして脚光を浴びる「ヴェルティゴ」という新作。スクエア・ケースを採用し、文字盤は左右上下に整然と区切られ、時計というより、各種のメーターが並ぶ工業製品のようなイメージだ。右上に正方形の60分表示、その下に丸い回転ディスクによる60秒表示を配し、左半分はすべて12時間表示に割り当てられている。

ヴェルティゴ スポーツ
ピエール・クンツ ヴェルティゴ スポーツ
自動巻き、ステンレススティールケース、ラバーストラップ、
186万9000円(予価、今秋発売予定)

この12時間表示の針の動作が、まさに遊び心全開の「フリーフォール」なのである。ご覧のように、一番下から時間の経過にしたがって上昇し、最上部の12 時に達するやいなや、ストンと最下部まで落下するのだ。本人に直接確認はしていないけれど、子供たちを連れて遊びに行った遊園地のフリーフォールからインスピレーションを得たとも伝え聞く。なんとも愉快なエピソードだ。

針が終点から始点に瞬時に戻るという点では、レトログラードの仕組みと同じだが、針が落下する様子は、頭では分かっていても、目にするたびに驚かされてしまう。ちなみに、ヒッチコック監督の名作映画『めまい』の英語原題は、この時計と同じ“VERTIGO”。本人もこのネーミングに思いがあるにちがいない。スリリングな落下が恐怖やめまいを引き起こし、それを見る者をどきっとさせる。こんな体験をさせるとは、かなり洒落のきいた時計だ。今年一番の「おもしろ複雑時計」と呼べそうだ。


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ヴェルティゴ
時、分、秒を別々に表示するレギュレータ仕様。時針が上下に動く機構が見て取れる
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