自動車評論家とって新技術の理解は楽しい一時なのだが、難解な技術となれば苦労と苦悩が伴う。もちろん、時間も掛かる。これまでで、最も理解に時間が掛かった技術のひとつにプリウスのTHS(ハイブリッドシステム)がある。正直に告白すれば、今でもシステム概要の70%くらいの理解度と思っている。そのプリウスの次期モデルがニューヨーク国際オートショーで発表された。

THSもTHS IIに進化。THS IIはハイブリッド・シナジー・ドライブをコンセプトに開発。シナジーは共同作用とか共用相乗効果を示しているが、THS IIはハイブリッドによる高環境性能と省燃費、パワーなどの走行性能の向上の両立を図ったことから、ハイブリッド・シナジー・ドライブとしているわけだ。ハイブリッドシステムの基本構成は現在のプリウスを踏襲し、駆動用のニッケル水素バッテリーの高密度化や駆動用モーターの高出力化、発電機の高回転化、さらに駆動用電源系をコンバーターを用いて274Vから500Vに昇圧。エンジン本体や駆動系の低摺動抵抗化やアトキンソンサイクルのなどにより徹底的な高効率化が図られている。

高電圧化は、いわば電気の変速のようなもので、例えば10V×10Aは100V×1Aと同じということ。コンバーターによってエネルギーロスが生じるのだが、同じパワー(仕事量)を得るのに電圧(ボルト)を上げた分、電流(アンペア)は少なくできる。THS IIの詳細は発表されていないが、電動模型では高電圧にして、電流値を小さく使ったほうが、同じバッテリー容量でも長持ちする。もちろん、モーターの効率も大きく影響するのだが、低出力型モーターを限界近くで使うよりも、高出力型で余裕を持たせたほうが効率は向上する。高電圧化により従来サイズのままモーターの出力を上げることも可能になり、その相乗効果でパワーと燃費の両立点を高くしたと考えて良いだろう。

アトキンソンサイクルについては、圧縮行程よりも爆発膨張行程を長くしているのが特徴。以前、マツダが使っていたミラーサイクルも狙いはまったく同じ。アトキンソンサイクルでは上死点後もしばらく吸気バルブを開けた状態にして、混合気の一部を吸気管に戻す。ミラーサイクルでは吸気行程中に早めに吸気バルブを閉じてしまう。つまり、実効吸気ストロークが短い状態になる。相対的に膨張行程が長くできるので、シリンダー内の圧力を無駄なく使えるわけだ。排気圧力に逃げていた分を少なくして燃費を向上させるシステムといえる。