イタリア、フィレンツェ、別名フローレンス(花都)。
ミラノから南に下りてゆく買付けの日程をこなして、この街に着くと、ホッとひと息つくような気分になる。

フィレンツェではいつもショップ巡りをする。バイイングはここまでの地域でほとんど済ませてしまう。われわれの業種では一般 のショップやアウトレットから仕入れる事はあまりしない。アイテムは、工場を直接背景にもつメーカーやデザイン事務所から買付ける。ショップを見るのは空間の演出を学ぶためで、フィレンツェがそれにうってつけの街である事に異論はないだろう。
もしも世界で1都市だけ、ショッピングをする場所を選べと言われたら、フィレンツェを挙げると思う。
この街にはクラシックであると同時にモダンな、イタリアの職人技に触れる事のできるショップが、いたるところに点在している。

巨きなブランド・ストアが店を構える表通りから少し入った路地に、宝飾品、革製品、布織物など、伝統芸の粋を競った様々なショップが、こじんまりとした佇まいで存在しているのを見つけるのも楽しい。

そのような土地柄だからこそ、たとえばデジタルなインターネット・カフェにも、写 真のようにアンティークな装飾が施され、独特の雰囲気を生んでいる。

百年前にも存在し、きっと百年後にも存在していると思わせるような、ショップの数々。そういった長いスパンでの価値観をもったショップや建築物は、東京ではほとんど見られない。伝統を遮断して近代化をおこなった都市では、代官山アドレスのように、現在の価値観で街の景色がコロコロ変わってしまう。

小さくても魅力的なショップは、アルノ川周辺にも多く見られる。サンタ・トリニタ橋を渡り、骨董品を扱うショップが軒を並べるエリアに、注目しているセレクトショップがある。

  次へ
ページ: 1  2  3