8月24日、医師と助産師にしか法的に許されていない内診を看護師におこなわせていた疑いで、神奈川県警が同県の堀病院の捜索を開始しました。これを受けて、厚生労働省も全国の実態調査に乗り出すと言っています。

内診は、なぜ医師か助産師に限定され、看護師がおこなうのは問題だと言われたのでしょうか。

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誰が内診をしてくれるかということは、長くつらく危険でもある陣痛期を誰が共に過ごしてくれるかということです。

業界の常識だった看護師の内診


今回の摘発理由である看護師の内診については、実は専門家の間で意見が割れています。厚生労働省は平成14年に「内診は『助産』行為に当たり、看護師は行ってはいけない」という通達を出しました。その法的根拠は助産師、看護師の業務について定める保健師助産師看護師法で、ここでは「助産」は助産師しかおこなえないことになっています。

しかし、医師団体は「内診が助産行為に当たる根拠はどこのあるのか」と反論し続けてきました。実は、長い間、日本の個人産院では看護師が内診することは常識でした。そのため医師たちは、厚労省の通達以降も、看護師による内診を認めるように働きかけてきました。

今回の摘発は、医師たちのこの組織的な反論に対し、国が有無を言わせない態度に出たのです。

本当の問題は内診ではない


医師たちが看護師の内診を続けたいと考える背景には助産師不足があります。本当にそのとおりで、たくさんの産科医が、助産師を募集してもこない状態で、私も見ていてお気の毒なほどです。今この時点ですべての個人産院で看護師の内診を取り締まったら産科崩壊が加速し、日本のお産はたちゆかなくなるでしょう。

ただ、なぜ個人産院では、助産師がいないことが当たり前になったのでしょうか。私は、今回の事件ではそこまでたくさんの人に考えて欲しいと思っています。看護師が内診をするということは、出産施設でありながら助産師が誰もいないか足りない、あるいは、いても十分にお産に関わっていないということとイコールです(堀病院には助産師が勤務していましたが助産行為にかかわっていなかったと疑われています)。その意味で、今回の摘発は、本質的には内診の問題ではありません。助産師の存在自体が、本当の問題だと思います。

医療派の産科医 VS.自然派の助産師


医師が助産師を雇いたいかどうかは、実は、その医師がどんなお産をしたいと考えているかを反映しています。もちろん、助産師を雇いたくても雇えない先生はたくさんいますが、中には雇おうという意欲がなく、看護師の内診が認められれば雇わないでおきたいと考えている先生もいるのです。

私は助産師を雇いたくないという医師に何人も出逢っていますが、その医師たちには共通点があります。自分の考えで投薬(陣痛促進剤など)、会陰切開(えいんせっかい・赤ちゃんの出口を切開すること)、粉ミルク補充などの医療的な干渉を行いたいと思っていることです。

実はこれらについては、医師と助産師の間には、教育の段階からして見解の相違があります。一言で言えば産科医は医療派で助産師は自然派。助産師から自分の医療行為について異論が出ることを好まない医師は、助産師を雇いたくありません。助産師は、正常出産なら医師なしでとりあげられるお産のプロですから、医師に対して意見を言います。

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