マンション物件選びのポイント/マンションの間取り

マンションの1階は買いか?メリットとデメリット

日本ではマンションは一般的に低層階より高層階の方が販売価格が高く設定されます。では、1階には魅力がないのでしょうか? 今回は「マンションの1階」に着目してメリットや購入時のデメリットを取り上げます((改訂:2018年12月/初出:2010年8月)

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

日本ではマンションは一般的に低層階より高層階の方が販売価格が高く設定されます。では、1階には魅力がないのでしょうか? 今回は「マンションの1階」に着目してメリットや購入時の注意点を取り上げます。
 

メリット1:専用庭でガーデニング&屋外活動

眺望が期待できるタワーマンションや高層マンションの上階に人気が集まる中、あえてマンションの1階に住むメリットを考えてみましょう。
マンションでガーデニングを楽しみたい人は専用庭付きの1階住戸を選ぼう

マンションでガーデニングを楽しみたい人は専用庭付きの1階住戸を選ぼう

まずは「専用庭」がついている間取りの場合。最大のメリットはその専用庭でガーデニングを楽しんだり、子どもを遊ばせたりできることです。ガーデニングといえば戸建住宅の特権のように思われがちですが、専用庭付きの1階住戸を選べばマンションでも十分ガーデニングが楽しめます。

また、土いじりをしたり、プールを出して遊んだり、自宅前で安全にお子さんを遊ばせることができます。大人でも、庭にイスとテーブルを出して、友人を招いて食事やお茶を楽しんだり、楽しみ方はいろいろあります。

このように、専用庭がある1階の住戸なら、一戸建てと変わらぬ感覚で屋外活動を楽しめるメリットがあります。ただし、専用庭での行為については制約がある場合があるので管理規約で確認してください。
 

メリット2:移動距離が短い

タワーマンションや高層マンションの上階に住む時、気をつけたいことに「住戸の玄関からエントランスホールまで意外と遠いと感じる」ことがあります。
1階住戸ならエレベーター待ちのイライラがない

1階住戸ならエレベーター待ちのイライラがない

タワーマンション・高層マンションの上階に住むと、エレベーターの数や速度によってはなかなかエレベーターが来なかったり、上下移動に時間がかかると感じることがあるようです。

そうなると、外出が面倒くさくなり、外出をガマン。家にこもりがちになるというあまり好ましくないループに陥る可能性もあります。特にお年寄りや小さなお子さんのいるご家庭では気をつけたいことです。

取りあえず「1階」ならエレベーターの待ち時間がないため、エントランスホールへのアクセスは良いはず。面倒くさがらず、気軽に外出することができますね。
 

メリット3:下階への配慮

マンション暮らしと切っても切れないことに「騒音問題」があります。特に小さなお子さんのいる家庭では、下階への音の配慮が欠かせません。その点、1階なら下への気使いがなくて済みます。ただし音は上や横にも響くので注意は必要です。
 

メリット4:災害時の避難

もしマンションで災害が発生したら、まずは地上に逃げることを考えます。高層階に住めば避難階段やバルコニーの避難ハッチなどを使用して避難しなければなりません。もともと玄関や窓から直接外に脱出が可能な1階に住んでいれば避難しやすく、他の階に比べ安全性が高いと言えるでしょう。
 

メリット5:地震時の揺れ

一般的に、マンションでは地震時には上層階ほど揺れ幅が大きくなります。1階なら揺れが比較的少なく、その分家具の転倒・破損といった被害も小さくて済むでしょう。
 

メリット6:価格

日本では一般的にマンションは上階になればなるほど価格が高く設定されています。つまり、同じ間取りでも上階より割安で購入できることも、1階の大きなメリットの一つです。

以上に挙げたように、高層階に比べ眺望こそは期待できないものの、1階ならではのメリットもたくさんあります。総じて言えば、ガーデニングがやりたい人、小さなお子さんや高齢者がいる家庭では「1階に住むメリット」があると考えてよいのではないでしょうか。

それでは次に、最下階ならではのデメリットについて考えてみましょう。
 

デメリット1:プライバシー

1階に住むと、外を歩く人の視線が気になるかもしれません。道路より建物が高くなっていればよいのですが、ほぼ同じ高さだとカーテンを閉めっぱなしにせざるを得ないことも。

視線が気になる窓には光は通しながら視線を遮る型板ガラスを使用したり、玄関ドアの前につい立てを設けるなどの配慮があるか、確認してみてください。
手前の手すりは半透明ガラスに、奥の手すりはルーバーにして採光や通風に配慮しながらプライバシーを守る手摺の例

手前の手すりは半透明ガラスに、奥の手すりはルーバーにして採光や通風に配慮しながらプライバシーを守る手摺の例

バルコニーの手すりは光も風も通す縦格子(たてこうし)が一般的ですが、一部分を半透明のガラスのようなものにしたり、向こう側が見えないコンクリートの手すりにするなどプライバシーの配慮をしているマンションもあります。
 

デメリット2:生活騒音

最下階のため下階への音の配慮は少なくて済みますが、反対に上階から受ける騒音に悩まされる可能性があります。上階から聞こえる足音や引き戸を閉める音、排水管を流れる水の音などが気になる時があります。静かな環境を好むご家庭は、最下階は避けたほうが良いかもしれません。
 

デメリット3:上から物が降ってくる

最下階の専用庭やテラスには、上階からさまざまなモノが降ってくることがあります。降ってくる物は、洗濯ばさみなどの小物から、ゴミ、下着やタオルといった洗濯物など。また、布団を干した時に、ものすごい勢いでパンパン叩く人がいますが、そんな人が上階にいると音や落ちてくるホコリが気になることもあるでしょう。
 

デメリット4:車の騒音・排気ガス

夜眠れないほどの騒音や窓が開けられないほどの排気ガスがないか確認。

夜眠れないほどの騒音や窓が開けられないほどの排気ガスがないか確認。

窓のすぐそばに交通量の多い道路がある場合は、車の騒音、排気ガスが気になり「開かずの窓」になる可能性があります。また、バルコニーが道路に面していれば、洗濯物が排気ガスで汚れる心配もあるでしょう。

対策としては、室内に入ってくる音を軽減する防音サッシの採用や、道路から離れた位置にバルコニーが設けてあるか、などがあります。これらは必ず確認するようにしてください。
 

デメリット5:床下からの冷気

最下階は夏場は涼しい反面、冬場は床下からの冷気で足元が冷える可能性があります。床下に隙間なく断熱材を敷き込むなど、しっかり断熱対策してあるかどうかがポイントになります。
 

デメリット6:光環境と眺望

マンションの周りに高い建物や植栽がある場合は、下層階になるほど日陰になったり、日影になっている時間が長くなる可能性が高くなります。特にメインの採光面であるバルコニーに面した方向に日陰をつくるものがないか確認しましょう。
バルコニーの前面に高木が植わっていると日影になったり落ち葉が入り込むなどの心配もあります

バルコニーの前面に高木が植わっていると日影になったり落ち葉が入り込むなどの心配もあります

高台に建つなど特殊な立地でなければ、1階では周りを見渡す眺望はあまり期待できないでしょう。
 

デメリット7:防犯性

泥棒は最上階でも入り込みますが、やはり侵入のしやすさでいえば1~3階あたりが最も注意が必要です。例えば下図のように、バルコニーのそばに木が植わっていれば、それを足がかりに2階や3階にも侵入します。
 
バルコニーと植栽が近いとドロボウの足がかりになり、低層階は特に危険。1メートル以上離れているか確認を

バルコニーと植栽が近いとドロボウの足がかりになり、低層階は特に危険。1メートル以上離れているか確認を


最近は、低層階住戸の窓に、防犯性が高いと認定されたCP製品を使う、防犯センサーをつけるなど、なんらかの防犯対策を取っている物件も増えてきました。そのような配慮のある物件なら安心です。
 

デメリット8:虫が入ってくる

1階住戸で専用庭がついている場合、窓から蚊などの虫が入り込みやすく、虫が嫌いな人には苦痛に感じることがあるかもしれません。低層階に住む場合は、周りの植栽の様子、窓の防犯対策がしてあるかどうかが重要なポイントです。
 

メリットとデメリットを知った上で総合判断

上記のように、マンションの1階にはデメリットとなる要素もありますが、それぞれ対策を取ることでデメリットを少なくすることができたり、反対に住みやすいと感じるメリットもたくさんあります。今回取り上げたメリット・デメリットを参考にして、何階の住戸を選ぶか総合判断してください。

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