一戸建ての売却/一戸建ての売却の基礎知識

家の買換え~売るのが先か、買うのが先か

家の買換えで難しいのは、売りと買いのタイミングです。いったいどちらを優先して考えるほうが良いのか、売り先行と買い先行におけるそれぞれのメリットや注意点を考えてみましょう。(2018年改訂版、初出:2010年7月)

執筆者:平野 雅之


自分の家を初めて買うとき、あるいは単に売るだけのときとは違い、買換えには「それぞれのタイミングをどうするのか」という大きな問題が待ち構えています。

たいていの場合は「売ったお金を使って新しい家を買う」または「売ったお金でこれまでの住宅ローンを返して、新たに住宅ローンを借りる」ということになりますが、これらが同時にできるとはかぎりません。

むしろ、それぞれの段取りに数週間~数か月のズレを生じることのほうが多く、その調整に頭を悩ませることになります。

それでは、家を買換えるときに「売ることと買うこと」のどちらを先行させるべきなのか、その基本的な考えかたとそれぞれの問題点をみていくことにしましょう。


売り先行のメリットと注意点

引越しをする家族のイラスト

買換えの段取りをあらかじめよく考えておくことが大切

中古住宅市場があまり活発ではない時期、あるいは中古住宅の需要が少ないエリアなどでは、「売れなかったらどうしよう」という心配が生じます。

また、中古住宅の取引が多い時期やエリアでも、自分の家が希望した価格(予定した最低価格以上)で確実に売れるという保証はありません。

そのような心配をせずに済むのが「売り先行」のパターンです。

実際に自分の家が売れてから(売却の契約をしてから、または売却代金を受け取ってから)買換える家を決めれば良いのですから、新居の購入予算が明確になるうえ、当然ながら「売れなかったら……」というリスクはありません。

ただし、売却の契約が成立した後でも、その残代金を受け取るまでは契約解除のリスクがあることに十分な注意が必要です。

しかし、自分の家を売って買主へ引き渡すときに、新たな家が用意できていなければ、一時的な仮住まいを用意しなければなりません。ほんの数日間であればホテル住まいも考えられますが、たいていの場合は賃貸物件を借りることになるでしょう。

仮住まい期間中の賃料が発生しますが、新居を購入するまでは住宅ローンの支払いがないため、あまり大きな負担増にはならないでしょう。それよりも「旧居から仮住まいへ」「仮住まいから新居へ」と2度の引越しをすることによる手間と費用を考えるべきです。

仮住まいの立地によっては、子どもの学校の問題が面倒になることも考えられます。

新居購入のめどが立っていれば、日常生活に必要不可欠なものだけを仮住まいに運び入れ、残った荷物を段ボール箱に入れたままトランクルームに預けておくという選択もできます。

また、売りを先行させた後で新居の購入を焦ると、中途半端な気持ちのままで買う物件を決めてしまったり、希望条件を満たさない物件で妥協してしまったりということもあるため、落ち着いて慎重に考えることが大切です。


買い先行のメリットとリスク

買い先行の場合には気に入った物件、納得できる物件が見つかるまでじっくりと探して、先に購入の契約を済ませてから自分の家を売り出すことになります。買いたい物件がすぐに見つかっても、購入申し込みのタイミングを逃すことがありません。

ただし、最低でも購入の契約時に支払う手付金に充てるだけの資金を持っていることが必須条件で、さらに「自分の家が少なくともいくら以上で売れるのか」を事前にしっかりと把握しておくことも大切です。

「売り先行」の場合のように仮住まいを経由した2度の引越しは必要なく、現在の家から新居へスムーズに引越すことができます。

しかし、購入物件の決済(残代金の支払い)までに自分の家が売れていなければ、しばらくの間は新居と旧居の両方で二重に住宅ローンを支払わなければならないことにもなりかねません。それが長く続けば、かなりの負担増になることもあるでしょう。

そのため、急いで売却しなければならない状況に追い込まれ、不本意な価格での売却に応じざるを得ないケースもあります。

媒介業者の一部には、わざとこのような状況を作り出し、業者にとって有利な価格で買い取ったり、特定の相手に買わせたりしようとする会社もあるため十分に注意しなければなりません。

現在の家の住宅ローンをすでに支払い終えている場合にはこのようなリスクがありませんから、安心して「買い先行」で買換えを進めることもできます。


買い先行~新居の引き渡しまで期間がある場合

先に新居の購入の契約をしても、その引き渡しがだいぶ先になることもあります。たとえば、建設工事中の新築マンションを購入し、その完成、引き渡しが6か月後あるいは1年後、2年後などといったケースです。

このようなときは、購入の契約後すぐに自分の家を売り出しても意味がありません。中古住宅の場合、売買契約締結から引き渡しまでは通常1~2か月、長くても3か月程度であり、それよりも長期間であれば中古住宅の買主はなかなか納得しないでしょう。

そのため、購入した新居の引き渡し時期から逆算して、4~5か月前頃に売却活動を始め、1~2か月前頃に売却の契約ができれば、売りと買いの決済のタイミングをある程度合わせることも可能になります。

売り出すのが早過ぎると、結果的に「売り先行」の場合と同様に仮住まいが必要となったり、売却期間が長くなることで「さらし物件」にされ契約条件が悪くなったりすることもあります。

どのタイミングで売り出すのが良いのかは、売却を依頼する不動産業者と十分に相談をするようにしましょう。


自分の家を売りやすいのは「買い先行」?

中古住宅を検討する買主の立場から見れば、売主やその家族が住んだままの家より、空家のほうが隅々までしっかりとチェックをすることができます。

日常生活で使っている家具や家電製品などが置かれたままだと、購入希望者が細かく見ることを遠慮してしまったり、家の傷み具合や造作の様子を十分に確認できなかったりして、その不安感から購入に踏み切れないこともあるでしょう。

「買い先行」で先に引越しをして空家の状態にしておけば、購入希望者に物件を隅々まで見てもらうことができるほか、あらかじめ室内クリーニングや必要個所の補修などをして印象を高めることもできます。

「疑心暗鬼による大幅な値引き交渉」を避けられるケースも考えられるでしょう。

まるでモデルルームのような、夢をかき立てるインテリアや家具、調度品、家電に囲まれ、誰が見ても素敵な暮らしをしていれば、そのままの生活を見せたほうが良い結果につながるかもしれませんが、ほとんどの家でそれは難しいはずです。

また、売却を依頼された不動産業者にとっても、オープンルームによる集客がしやすかったり、購入希望者を案内する時間の設定が自由になったりして、空家のほうが有利に営業活動を進めることができます。

さらに、近年は空家に家具や小物などを配置して演出する「ホームステージング」の手法が拡がりつつあり、居住したまま、あるいは空家のままで売るより良い条件で買主が見つかることもあるでしょう。

「売り先行」の場合でもあらかじめ仮住まいへ引越しをして空家にすることはできますが、これから売る家の住宅ローンが残っていれば、仮住まいの家賃との二重負担になります。

買い先行なら「旧居の住宅ローン+新居の住宅ローン」の二重負担、売り先行でも先に引越せば「旧居の住宅ローン+仮住まいの家賃」の二重負担ですから、空家にして売ろうとする場合に費用面でどちらが有利だとは言えませんが……。

実際にどのようにするのが良いのかは物件ごとに異なる部分もあるため、売却を依頼した不動産業者との間で、販売方法の打ち合わせを綿密にすることが欠かせません。


関連記事

不動産売買お役立ち記事 INDEX

不動産を売り出す前にまず知っておきたい大切なこと
家の売却~依頼をする不動産業者の選びかた
家の売却~価格査定を受けるときのポイント
家の売却~媒介契約の特徴と選択のポイント
家の買換え~リスクを減らすための特約など
家の売却~購入希望者が見に来たときの対応
家の売却~少しでも有利に売る方法 その1
家の売却~少しでも有利に売る方法 その2
家の売却~売れないときのチェックポイント
家の売却~契約交渉を進めるときのポイント
家の売却~契約条件の合意から契約締結まで
家の売却~買主へ家を引き渡すまでの段取り
家の売却~家を売るときに必要な費用と税金
家の買換え~資金計画を考える際のポイント

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます