マンション物件選びのポイント/マンションの間取り

子育て世代に向くマンションの間取り研究

「マンションの間取り研究」の今回のテーマは「子育て」。お子さんがいるご家庭が安心して子育てできるマンションの間取りを検証します。ポイントは、親の目配り、子どもの動線、収納です。(2018年8月改訂/初出:2010年6月)

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

子育ての環境が整いやすいマンション

最近はキッズルームやパーティルームなど、子育て中に役立つ共用施設を設けたマンションが増えました。そのようなマンションでは同世代のファミリーが集まりやすく、ママネットワークも充実し、子育てしやすい環境が整います。
 
キッズルームの例。雨の日でも遊べ、ママ同士のコミュニケーションの場にもなる

キッズルームの例。雨の日でも遊べ、ママ同士のコミュニケーションの場にもなる


共用施設の充実もうれしいですが、今回は専用部分、つまり各住居の間取りでは、どんな工夫があると子育てしやすいか考えてみようと思います。

キーワードは
・収納
・子どもの作品を飾るスペース
・子どもの動線
・キッチンの安全性
・子ども部屋の位置
・和室

の6つです。
 

すっきり暮すためには収納量をチェック

子どもがいる・いない家庭で大きく異なるのは「モノの多さ」ではないでしょうか。おもちゃや洋服、習い事の道具、幼稚園や小学校から配布されるプリント、工作の類まで、子どもに関するモノがいっぱい。片付かなくてイライラしてしまうお母さんも多いと思います。
 
マンションの間取り例。一般的なファミリータイプ、82m2、3LDK(クリックで拡大)。

【図1】マンションの間取り例。一般的なファミリータイプ、82m2、3LDK(クリックで拡大)。



【図1】は約82m2、3LDKのファミリータイプのマンションの間取りです。この間取りで薄い青色がついた部分が収納です。子育て世代なら目安として住戸面積の8%程度の収納が欲しいところです。
 

便利なシューズインクロゼット

最近では、玄関にシューズインクローゼット(S.I.C)を設ける間取りもよく見かけます(【図2】A)。シューズインクロゼットとは、その名のとおり「靴を履いたまま入るクローゼット」のことで、靴をしまうのはもちろん、ベビーカー、三輪車、キックボード、サッカーボールといった、外で使う道具をしまうことができて便利です。スキー板やゴルフバックなど長モノをしまうのにも大変重宝します。
【図2】玄関まわりの拡大図。玄関には下足入れとシューズインクローゼットがある

【図2】玄関まわりの拡大図。玄関には下足入れとシューズインクローゼットがある。


今回取り上げた間取りでは、従来の下駄箱は残しつつ、その脇に大容量の靴をしまえるシューズインクロゼットもついています。戸建て住宅のように外部倉庫が持てないマンションでは貴重な収納スペースです。
 

作品が飾れるスペースがある

お子さんが幼稚園や学校で描いた絵や工作を飾る、ニッチ飾り棚などのちょっとしたスペースがあると、お子さんのヤル気ががぜん違ってくるかもしれません。(【図2】Bの部分)。
 
玄関のニッチイメージ。ちょっとしたモノを飾ることができます

玄関のニッチイメージ。


ニッチとは壁をくりぬいて作った棚のこと。飾り棚とは、扉がなくオープンになっていて、子どもの作品などを飾れるスペースになっている棚のことです。棚の確保が難しい場合は、廊下の壁などにコルクボードを貼って、お子さん専用のスペースを作ってもいいですね。

次は子どもの動線を検証し、冷蔵庫の理想的な位置と子育て世代に人気のキッチン形式をチェックします。
 

子ども動線を検証する

キッチンには危険がいっぱいあるため、親は、子どもにはなるべくうろちょろして欲しくないと思っています。なのにも関わらず、子どもは頻繁にキッチンに出入りします。それはなぜか。それは、キッチンには「冷蔵庫」があるからです。
 
子どもは冷蔵庫が大好き

子どもは冷蔵庫が大好き


子どもの動きを見てみると、お茶やジュースといった飲み物、おやつなどをゲットするために、しょっちゅう冷蔵庫を開けに来ます。

冷蔵庫を頻繁に開け閉めされるのはそれはそれで困ったことですが、今回はそれは子どもの習性上しょうがないことだとあきらめ、冷蔵庫の位置がキッチンの入り口付近に設定されているかチェックしましょう(【図3】C)。
 
【図3】キッチン部分の拡大図。冷蔵庫の位置(C)やキッチン形式(D)に注目。

【図3】キッチン部分の拡大図。冷蔵庫の位置(C)やキッチン形式(D)に注目。

 

間取り図から冷蔵庫の位置を確認する方法

マンションの間取りでは、キッチン内に「冷蔵庫を置くスペース」と「食器棚を置くスペース」があらかじめ想定されています。

冷蔵庫の奥行きはおおよそ60センチ~80センチ、食器棚の奥行は40センチ程度なので、冷蔵庫を想定している場所だけ奥行きが深く取ってあるか、もしくは近くに冷蔵庫専用のコンセントが設けられていることで、どこに冷蔵庫を置くか想定している位置がわかります。【図3】では入口に近いCの部分が冷蔵庫置き場として想定されています。

この冷蔵庫スペースがキッチンの奥側(この図ではコンロの向かい)にあると、日常的に子どもがそこまで入りこむことが増え、料理中の危険度が増してしまいます。ぜひチェックしてみてください。
 

セミオープンタイプのキッチンが人気

子育て世代のファミリーで圧倒的な人気を誇るのが、リビングダイニングと空間が緩やかにつながったセミオープンタイプのキッチンです(【図3】D)。

 
子育てファミリー層に人気のセミオープンタイプのキッチン例。リビングダイニングがよく見渡せます

子育てファミリー層に人気のセミオープンタイプのキッチン例。リビングダイニングがよく見渡せます

セミオープンタイプとは、キッチンの流しがリビング・ダイニングに向いており、吊り戸棚やカウンターで空間的な仕切りはあるものの、目の前の壁がなく、キッチンとリビングダイニングがゆるやかにつながっているキッチン形式です。

キッチンからリビングダイニングを見渡すことができるため、リビングにいる子どもを見守りながら家事をすることができます。また、リビングにいる家族とコミュニケーションを取りやすいため、炊事をする母親が孤独感を感じずに済むメリットもあります。

子ども部屋の位置と和室のもつ役割について見てみましょう。
 

子ども部屋はリビングインが定着

子育て中は、子どものちょっとした変化に気を配りたいもの。そこでリビングを通って個室に入る「リビングイン」形式の子ども部屋に人気があります。
 
リビングから出入りする子ども部屋の例。扉を開けて置けば子どもの様子がわかります

リビングから出入りする子ども部屋(奥)の例。扉を開けておけば子どもの様子がわかります


今回の間取りの子ども部屋の位置(【図4】E)は、絶妙な位置にあると思います。実際にこのような間取りのお宅を訪問した時、リビングからの位置関係や、個室としてのあり方が理想的だと感じました。
 
【図4】子ども部屋の位置と和室

【図4】子ども部屋の位置と和室



リビングやキッチンから子どもの様子がわかり、お子さんがこの部屋で勉強していてもすぐ様子を見に行くことができます。お友達がきても安心してこの部屋で遊ばせることができるでしょう。和室(【図4】F)もリビングインで、子ども部屋としても適した位置にあります。
 

子育て期にあるとうれしい和室 

近年、都市部の新築マンションでは和室を見かけなくなりました。でも、やっぱり子育て中のファミリーには和室があると便利ですよね。
 

畳のある部屋があるだけでなごみます。和室は多目的に使える便利な部屋です。

畳のある部屋があるだけでなごみます。和室は多目的に使える便利な部屋です。


赤ちゃん期はここで昼寝させて、親も横でゴロンと一休み。ハイハイ期も畳の上なら安心してハイハイを見守ることができます。「高い高い」や「飛行機ブーン」など、体を使った遊びが子どもは大好きです。和室ならそれらの遊びも親子で十分楽しめますね。

もともと畳はクッション性があり、遮音・防音性も高く、転んでもケガをしにくく、子どもが過ごす部屋の床材として適しています。子どもが小さい時は、和室でのんびり、ゆっくりする生活スタイルが向いています。

今回は子育てしやすい間取りのチェックポイントを見てきました。子どもは成長に従って個室を欲しがり、あっという間に独立していきます。そのことも考慮し、子どもの成長過程を想像しながら、その時々に合わせて使い方を工夫できる、フレキシブルな間取りを選ぶとよいと思います。

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