慰謝料の決め手は婚姻期間

慰謝料と一言でいっても千差万別。裁判で争うことなく、話し合いで決めることができれば精神的に楽かも

慰謝料と一言でいっても千差万別。裁判で争うことなく、話し合いで決めることができれば精神的に楽かも

ガイド:
慰謝料が決まる要因は何ですか?

澁川さん:
一番は、「婚姻期間」と「内容」ですね。婚姻期間が長くて、かつ、悪質だと高額です。 また「収入」も影響します。例えば、支払い者の年収が1000万円と300万円だった場合を比べると、請求された慰謝料が500万円のケースでは、年収が多いと請求額も通りやすいです。年収が低いと慰謝料額も少なくなる傾向にあるようです。近年の経済格差が影響していると思われます。

例えば、婚姻期間が30年くらいで、浮気の証拠がたくさんある。なのに、あくまでシラを切りとおし、妻に苦痛を与え続けたというケース。夫の収入がそれなりにある場合だと、慰謝料額は500万~700万円くらいですね。

それに、ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)も加わっていれば、さらに100万~200万円くらい上乗せされることもあるでしょう。

ガイド:
婚姻期間が短いと慰謝料も安くなるのでしょうか?

澁川さん:
婚姻期間が10年くらいで、200万~300万円ほど、 婚姻期間が3年程度であれば100万~200万円くらいでしょうか。

いくら悪質でないとはいっても、やっぱり浮気は浮気ですからね。 ちなみに、慰謝料だけで1000万円を超える例は、一般人の場合はほとんどありません。 ただし、財産分与を入れて数千万円から数億円というケースはあります。

裁判になると証拠が重要

ガイド:
慰謝料の相談で特に印象に残っている事例はありますか?

澁川さん:
妻が、夫の浮気現場に乗り込んだのにも関わらず、裁判では不貞行為はなかったと言い切られたケースですね。結局、精神的慰謝料しか認められず、たしか、慰謝料は80万円くらいだったと思います。

ガイド:
やはり、裁判になると証拠が大切だということですね。

澁川さん:
他には、妻が夫のDVを訴えて離婚しようとしたのですが、夫側は妻の不貞を理由に離婚を拒否し、裁判では離婚が成立しなかったという事例があります。証拠は妻が男性と2人きりで車に乗っているだけの写真数点でした。妻は、子どもの同級生の保護者である男性(つまり同級生の父親)に学校行事のあとに車で3回ほど送ってもらっただけという主張でした。このような非常に薄い証拠でも裁判官が採用することもあります。つまり、裁判においては証拠も重要ですが、裁判官の印象も重要ということです。

経費をかけても慰謝料は取れないケースも

ガイド:
慰謝料を請求する側から見た時、何か気をつける点などはありますか?

澁川さん:
よくあることですが、探偵社に200万円も300万円も払い、その分をのせて慰謝料を500万円や600万円などと請求するケースです。結局は、慰謝料が100万円前後となり、赤字になったというケースがありますね。 やみくもに経費をかけても、慰謝料は取れないんですよ。

結婚2年目程度で離婚裁判をし、弁護士の費用が慰謝料の何倍にもなってしまった、なんて笑えない話はたくさんあります。

協議離婚、調停離婚、裁判離婚のそれぞれでも請求額を変えたほうが良いケースもあります。協議では相手方や相手方の親の顔色を見て、調停では調停委員の顔色を見て、裁判では裁判官の顔色を見て、それぞれ請求額をよくよく検討する必要がありますね。

弁護士とのトラブルにも注意

また、最近では離婚弁護士とのトラブルが増えています。昔と違って今では、離婚を弁護士に依頼する割合は高くなっているのですが、それにつれて、弁護士トラブルの相談も急増しています。弁護士との問題は離婚のお金の問題に直結しています。

複雑さを増す離婚案件に対応できず、依頼人と弁護士のトラブルが頻発し、最近では弁護士を3人も4人も変えているという人も珍しくなくなっています。

弁護士に依頼しても、事案が進まない、話さえ聞いてくれないなどのトラブルが続き、次々と弁護士を替えていくわけです。そうすると、何度も着手金を払うことになりますし、時間も無駄になり、結局不利な展開になります。最初に良い弁護士を選ばないと、離婚問題が解決する前に資金がなくなってしまうことになりかねないのです。進め方がまずいと、取れるはずの慰謝料も取れませんからね。

最近では男女ともにモラハラ(モラルハラスメント)事案がとても多く、それに伴い、離婚弁護士トラブルも一層増えています。モラハラ当事者が相手の場合、相手方の性格には複数のパターンがあるのですが、弁護士をあいだに入れた場合、相手方の出方は大きく2つのパターンに分かれます。一つは弁護士を入れた途端に大人しくなるパターン。もう一つは、弁護士に思いっきり噛みついてくるパターンです。そのほかにも複数のパターンがあるのですが、特に後者の場合、依頼人を守るはずの弁護士が被害者になってしまい、相手方との交渉を途中で投げ出してしまったというトラブルが続出しています。モラハラ事案の場合、充分な成功事例を持った離婚弁護士に依頼しなければいけませんね。慰謝料を取る以前の問題になってしまいます。

ガイド:
最後に、自分が浮気をしてしまい離婚を考えている人に一言をお願いします。

澁川さん:
いろいろな経緯はあるのだと思いますが、過去を振り返るだけでは建設的な未来は築けないでしょう。「今」をありのままに受け入れ、自分と周りの関係者のことを大切に考えましょう。 決して、自暴自棄になってはいけません。必ず、道は開けます。

最近ではバツイチ、バツ2も珍しくなくなっています。前向きな再出発はけっこうなことですが、同じ過ちをなんども繰り返さないように気を付けましょう!

ガイド:
不謹慎とは思いますが、自分の浮気が原因で離婚を考えている人にとって、慰謝料は少しでも少ないほうがいいと思います。慰謝料が高額にならないために気を付けることはありますか?

澁川さん:
早く解決しようとするあまり、相手の言い値で慰謝料を決定してしまったり、あせって公正証書を作成したり、開示しなくてよい証拠や材料を提供して慰謝料額を高くしてしまうことがあります。あわてて余計なことを言ったり提出したりしないことですね。

責めないから何があったか全て書きなさいと言われ、書いて提出したら、それを証拠に取られて、法外な慰謝料を請求されたという事例はたくさんあります。そんな馬鹿なと思うかもしれませんが、そのときになると混乱してしまって、そういうことはよくあります。

また、相手方や相手方弁護士が言うことを鵜呑みにして法外な要求に応えようと自分をボロボロにしてしまう人が多いのも最近の傾向です。相手方のみならず相手方弁護士も自分たちに有利なことしか言わないのですから、過度な要求に振り回されず、自分や自分の家族のためになる着地点を冷静に考えていただきたいですね。

ガイド:
逆に、相手に浮気をされて離婚を考えている人にも一言をお願いします。

澁川さん:
「浮気をされたのは自分のせい?」「 自分が悪かったから?」 そんなふうに自分を責める必要はまったくありません。 いいんですよ。相手を責めて、攻めて、なじっても……。 周囲がなんと言おうとも、戦ってもよいのです。戦わなくてもよいのです。

浮気されて離婚しないなんておかしい、もっと慰謝料を取ればよいのに、などと言われたり、逆に、お金に執着し過ぎなんじゃないの? とか、相手からはお金なんて取れないよ、などと言われることもあると思います。でも、自分の人生です。あなた自身が納得できることを堂々としてもよいと思いますよ。

あなたが、自分と大切な人のために選択した道なら、どの道を選んだとしても、それは正解なのですよ。 今は、泣いても怒ってもかまいません。 いつか笑える日のために、がんばりましょう!

以上、「離婚110番」 主宰の澁川良幸さんにお話を伺いました。

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