仕事・給与/源泉徴収と年末調整のしくみ

確定申告で退職金の所得税が戻る?

退職金の税金は源泉徴収されていますが、確定申告で戻ってくる場合があります。確定申告の還付の届出は5年間遡ることができるので、3年前に退職金をもらってそのまま……という人もチェックしてみましょう。退職金の税金が還付されるのはどのような場合でしょうか?

福一 由紀

執筆者:福一 由紀

ファイナンシャルプランナー / 仕事・給与ガイド

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退職金を受け取ったら確定申告を検討する価値あり

退職金は支給された時に税金関係の手続きが終わっている、と思っている人も多いようです。でも、確定申告をすることで、税金が還付される人もいます。
退職金の税金が還付されるケースとは

晴れて定年退職! 退職金から天引きされた所得税を取り戻せる場合もある

退職金は支給されたけれど、確定申告する必要はない! と思っている人は、チェックしてみてくださいね。また、確定申告の還付の届出は5年間さかのぼることができます。なので、3年前に退職金をもらってそのまま……という人も還付される可能性があります。

<目次>  

退職所得は勤続年数によって計算方法が変わる

まずは、退職金に対する税額を決めるための「退職所得」の決め方をご紹介しておきましょう。

退職金の所得税は、その年の退職金の収入金額から、その人の勤続年数に応じて計算した「退職所得控除額」を差し引いた残りの2分の1の金額(これを退職所得と呼びます)について課税されます。

この「退職所得控除額」の計算方法は以下の通り。勤続年数によって変わります。

●勤続20年以下:勤続年数×40万円
(80万円に満たない場合は80万円)

●勤続20年超:(勤続年数-20年)×70万円+800万円
(1年に満たない端数があるときは、1年に切り上げ)

例えば平成1年4月入社、平成22年12月退社のAさんの場合は、勤続が21年8カ月となります。1年未満は切り上げですので、勤続年数は22年として計算します。

Aさんの退職所得控除額
=(22年-20年)×70万円+800万円
=940万円

つまり、勤続年数22年で退職金が940万円以下だったら、所得税はかからないということですね。
 

退職金の所得税も基本的には源泉徴収される

退職金の金額が退職所得控除額を超えた場合は、所得税や住民税の税金が源泉徴収されることになります(「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合)。

源泉徴収される所得税は、退職所得控除額を引いたものの2分の1に税率をかけたものです。
 

退職所得にかかる所得税の計算例

例えば勤続年数38年、退職金3000万円のBさんのケースで試算してみましょう。

退職所得控除額
=(38年-20年)×70万円+800万円
=2060万円

課税対象となる退職所得
=(退職金額3000万円-退職所得控除額2060万円)×0.5
=470万円

つまり、Bさんは退職所得470万円に対して所得税がかかることになります。

所得税の税率は、所得金額が330万円を超え695万円までは20%で、控除額が42万7500円です。したがって、Bさんの退職金に対する所得税は以下のように算出されます。

退職金にかかる所得税額
=(課税所得額470万円×所得税率20%)-控除額42万7500円
=51万2500円

「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、この所得税51万2500円が源泉徴収されています。これで税金の手続きは終了、と思う人も多いですが、実は確定申告をすると税金が還付されるパターンがあります。
 

所得に対して控除額が多いほど税金が安くなる

そもそも所得税は、1月1日から12月31日までの1年間の所得に対してかかります。

さらに、所得にはいくつか種類があります。給与所得や退職所得をはじめ、家賃収入などの不動産所得、保険の一時金や懸賞金などの一時所得、土地、建物や株などの資産を譲渡して得られる譲渡所得などがあり、これらの所得から所得税を計算していきます。

また、これらの所得から控除されるものもあります。配偶者控除扶養控除の人的控除と、医療費控除社会保険料控除生命保険料控除などの物的控除の2種類です。この控除額が所得額から引かれて税金が計算されますので、控除額が多いほど税金が安くなるというわけです。
 

退職金で源泉徴収された税金が還付されるケース

では、具体的に退職金で源泉徴収された税金が還付されるパターンをご紹介しましょう。それは、退職金以外の所得が少ないということ。具体的には、退職前の給与が少ない場合です。

前出のBさんは、勤続年数38年、退職金3000万円で、所得税51万2500円が源泉徴収されていました。 このBさん、同じ年の給与収入が以下の場合を考えてみます。

給与収入=120万円
給与所得=55万円
給与所得控除が65万円なので、120万円-65万円=55万円)

Bさんの1年間の所得が給与と退職金だけだった場合、年間の所得は給与所得55万円と、上で算出した退職所得470万円となります。

一方、Bさんの所得控除(配偶者控除や社会保険料控除など)の合計が170万円だったとしましょう。給与所得は総合課税、退職所得は分離課税となります。

※総合課税と分離課税については「所得税の課税方法、総合課税と分離課税」もご覧ください。

まず、総合課税の給与所得のほうから所得控除を差し引きます。給与所得55万円に対して所得控除170万円ですから、給与所得55万円-所得控除170万円となります。給与所得分の課税所得はゼロになりましたが、所得控除115万円分が控除しきれていません。

この差し引き切れなかった所得控除115万円分を退職所得のほうから差し引くことができます。退職所得470万円から所得控除115万円を引いて、355万円が課税退職所得となります。所得税の税率は20%でしたから、新たに控除できる所得控除115万円×0.2=23万円が還付されることになります。

退職金とお給料の源泉徴収をされて税金の計算は終わり! と思っていたBさん。確定申告をすれば、23万円も税金が還付されるのです。
 

国民年金などの社会保険の申請も忘れずに

所得税の計算は、年間の所得と控除額によって計算されるということです。所得が少なく控除が多いと税額が少なくなり、天引きされていた源泉徴収額のほうが多くなるというパターンがでてきます。

最後に、控除額で忘れやすいものをご紹介しておきましょう。それは「社会保険料」。退職後、国民年金や国民健康保険などの社会保険料を払った場合は、社会保険料控除にこれらの金額を足すのを忘れずに。 税率20%とすると、支払った社会保険料10万円に対して所得税が2万円安くなります

また、退職金をもらう時、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合も、忘れずに申告しましょう。この時は、退職金の20%が源泉徴収されていますよ。これは、絶対損ですので、確定申告をお忘れなく!

※以上の所得税額はいずれも概算。復興特別税は考慮せず

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