世界遺産/世界遺産とは

複合遺産とは

世界遺産には文化遺産・自然遺産・複合遺産という3つの種類があるが、1121件ある世界遺産の中で、複合遺産はたった39件しか存在しない。今回は複合遺産の概要と、39件の全リストを解説付きで紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

複合遺産とは何か?

トルコの世界遺産「ヒエラポリス - パムッカレ」、パムッカレ

ローマ時代より湯治の地として知られていたパムッカレ。トルコの世界遺産「ヒエラポリス - パムッカレ」構成資産

世界遺産に登録されるためには、(i)から(x)まで10項目ある登録基準の1項目以上を満たさなくてはならない。このうち、文化遺産の登録基準である(i)~(vi)から1項目以上、自然遺産の登録基準である(vii)~(x)から1項目以上を同時に満たした物件を「複合遺産」という(登録基準は「文化遺産とは」「自然遺産とは」を参照)。

2019年7月現在、世界遺産1121件のうち、複合遺産はわずかに39件しか存在しない。ここではそのすべての概要を紹介しよう。 

なお、近年注目を集めている「文化的景観」との違いだが、文化的景観とは自然と人間の共同作品を示し、人間社会が自然環境の影響下で発展したことを示す景観のことをいう。自然そのものに桁外れの景観や類を見ない生態系といった顕著な普遍的価値がある必要はなく、自然遺産の登録基準を満たさなくてもよい。

以下のリストはヨーロッパ→アジア→オセアニア→アメリカ→アフリカの順番で、その下は国名五十音順となっている。また、世界遺産名の下には国名、登録年(拡大登録年)、登録基準の順に表記している。
 

ヨーロッパの複合遺産

ギリシアの世界遺産「メテオラ」

ギリシアの世界遺産「メテオラ」の絶景。周辺の断崖をうまく利用して、下からは見ることのできない天空の修道院群を築いている

■セント・キルダ
イギリス、1986年、2004・2005年拡大、文化遺産(iii)(v)、自然遺産(vii)(ix)(x)
スコットランド沖の「世界の果て」といわれる島。6000万年前に隆起した島で、400メートルを超える鋭い断崖絶壁には数多くの海鳥が暮らしている。島には2000年ほど前の人類の遺跡が残されており、厳しい環境の中で自給自足の生活が20世紀まで守り継がれてきた。

■アトス山
ギリシア、1988年、文化遺産(i)(ii)(iv)(v)(vi)、自然遺産(vii)
東方正教会の聖山アトスは、現在も一般の観光客の入山が厳しく制限されており、女人禁制で、男性でも入山許可証が必要だ。内部は自治に任されており、修道士たちは中世から変わらぬ修道生活を行っている。ギリシア本土とは断崖絶壁によって隔絶されており、それゆえ自然は手つかずで残されている。

■メテオラ
ギリシア、1988年、文化遺産(i)(ii)(iv)(v)、自然遺産(vii)
大地から突き出した最大400メートルに及ぶ奇岩群。下からはまったく見えないが、その頂には天空に浮かぶ不思議な修道院が立ち並んでいる。6000万年の歳月が造り出した驚異的な自然景観に修道士たちは神を見て、9世紀からこの地で修行を積んでいた。14世紀には修道院が建てられて、現在も6つの修道院が活動を続けている。

紹介記事はこちら>>メテオラ/ギリシア 

■ラポニアンエリア
スウェーデン、1996年、文化遺産(iii)(v)、自然遺産(vii)(viii)(ix)
「サーメ(ラップ)人地域」とも呼ばれる世界遺産で、トナカイと共にサーメ人たちが5000年も前から伝わる狩猟・遊牧生活を続けている。土地は北極圏のラップランドの一部となっており、氷河や永久凍土、ツンドラ、フィヨルドといった自然環境がトナカイやイヌワシ、ヘラジカなど寒冷地特有の動植物を育み、生態系を築いている。

■ピレネー山脈 - ペルデュ山
スペイン/フランス共通、1997年、1999年拡大、文化遺産(iii)(iv)(v)、自然遺産(vii)(viii)
ピレネー山脈ペルデュ山の山頂付近には広大な森林地帯が広がっており、渓谷や草原、氷河の浸食による断崖や洞穴が連なり、エーデルワイスやスペインアイベックス、ライチョウなどが生育する独特の生態系が維持されている。伝統的な牧羊生活が伝えられており、文化遺産としても評価された。 

■イビサ、生物多様性と文化
スペイン、1999年、文化遺産(ii)(iii)(iv)、自然遺産(ix)(x)
地中海に浮かぶ不思議な島、イビサ。古代から地中海の覇権を争ってさまざまな民族がこの島を侵略した痕跡が残されている。一方、海中には固有種であるポシドニアと呼ばれる海藻の森がどこまでも広がっており、さまざまな動植物を育んでいる。
トルコの世界遺産「ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群」

「ペリバジャ=妖精の煙突」と呼ばれるカッパドキアの奇岩群。トルコの世界遺産「ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群」構成資産

■ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群
トルコ、1985年、文化遺産(i)(iii)(v)、自然遺産(vii)
数千万年の年月が造り出した奇岩群が連なるカッパドキア。ローマ帝国やイスラム帝国の迫害から逃れたキリスト教徒たちはこの神秘の土地に集まり、奇岩をくりぬいて教会や住居を造り、地下100メートルを超えるアリの巣状の地下都市群を築いて修行生活を送った。

紹介記事はこちら>>カッパドキア/トルコ

■ヒエラポリス - パムッカレ
トルコ、1988年、文化遺産(iii)(iv)、自然遺産(vii)
パムッカレは断崖に連なるまっ白な石灰棚と、滝のような石柱、その上を流れる温泉を特徴とする。温泉の効能は古代から知られており、紀元前から保養地として人を集めていた。ヒエラポリスはローマ帝国によって築かれた都市遺跡で、円形劇場などが残されている。

紹介記事はこちら>>ヒエラポリス - パムッカレ/トルコ

■オフリド地域の文化的・歴史的景観とその自然環境
アルバニア/北マケドニア、1979年、1980・2019年拡大、文化遺産(i)(iii)(iv)、自然遺産(vii)
オフリド湖は500万~400万年前にできたといわれるヨーロッパ最古の湖。水深は288メートルに及び、古代の生態系が維持されている。オフリド湖畔には紀元前3世紀頃から人が住みはじめ、9世紀前後からは正教会の修道院が数多く建築され、10世紀にはブルガリアの首都となった。
 

アジアの複合遺産

中国の世界遺産「黄山」

中国の世界遺産「黄山」の絶景。左上、断崖の上にポツンと乗る岩は「猴子観海」で、サルが周辺を見下ろす姿からその名が付いた

■南イラクのアフワール:生物の避難所と古代メソポタミア都市景観の残影
イラク、2016年、文化遺産(iii)(v)、自然遺産(ix)(x)
ウル、ウルク、エリドゥというメソポタミアの古代都市遺跡と、東ハマー、西ハマー、フワイザ、セントラルの4件の湿地帯からなる世界遺産。チグリス-ユーフラテス、両大河周辺の湿地帯がメソポタミア文明を生み、渡り鳥をはじめとする豊かな生態系を育んでいる。

■カンチェンゾンガ国立公園
インド、2016年、文化遺産(iii)(vi)、自然遺産(vii)(x)
世界第3位の標高を誇るカンチェンジュンガには6000メートルを超える峰を20もあり、標高1220~8586メートルの間に森林から氷河に至る多彩な気候を有している。東ヒマラヤ生物多様性ホットスポットの一角を担う一方で、シッキムの先住民にとっては天地開闢の地でもあり、仏教寺院や僧院等々を備えた巡礼地として尊崇されている。

■泰山
中国、1987年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(v)(vi)、自然遺産(vii)
道教五名山といわれる五岳(泰山、衡山、嵩山、華山、恒山)の筆頭で、東嶽大帝や碧霞元君などを祀っている。かつては皇帝が天に感謝を捧げる封禅の儀式が行われ、宮殿や祠が多数残されている。文化遺産の登録基準のすべてを満たすと同時に、もっとも多くの登録基準を満たす世界遺産のひとつとなっている。

■黄山
中国、1990年、文化遺産(ii)、自然遺産(vii)(x)
仙郷と呼ばれる名山で、「五岳より帰りて山を見ることなし、黄山より帰りて岳を見ることなし」(明の徐霞客の言葉。「五岳を見てしまったら他の山なんて見れない。黄山を見てしまったらその五岳さえ見れない」の意)の言葉で知られている。70以上の名峰に400以上の名勝があり、特に奇松、奇石、雲海、温泉は「黄山四絶」と称される。

紹介記事はこちら>>黄山/中国 

■峨眉山と楽山大仏
中国、1996年、文化遺産(iv)(vi)、自然遺産(x)
峨眉山は杜甫、李白らに深く愛された霊山で、仏教四名山のひとつにも数えられている。最高峰である金頂は3099メートルの高さを誇り、26もの仏教施設が連なっている。楽山大仏は岷江、青衣江、大渡の3河の合流地点に設置され、川を鎮めるために90年をかけて建立された。

■武夷山
中国、1999年、文化遺産(iii)(vi)、自然遺産(vii)(x)
深い渓谷と奇岩に断崖絶壁、渓流が美しい名山で、絶景で知られる九曲渓は川が9度曲がり18もの湾を形成している。絶壁に穴を穿って「船棺」と呼ばれる棺を収める奇観が広がるほか、山中には仏教遺跡、窯の跡や茶園などもあり、武夷山で採れる烏龍茶は世界的に有名だ。
ベトナムの世界遺産「チャンアン複合景観」、タムコックの景色

ベトナムの世界遺産「チャンアン複合景観」、タムコックの景色。黄と緑の水田からタワー・カルストの奇岩群が立ち上がっている

■チャンアン複合景観
ベトナム、2014年、文化遺産(v)、自然遺産(vii)(viii)
中国の桂林やベトナムのハロン湾に似たタワー・カルストが林立していることから「ベトナムの桂林」「陸のハロン湾」の異名を持つ。資産(登録範囲)にはチャンアンやタムコック、ビックドンといった風景区だけでなく、先史時代の洞窟遺跡や10世紀に栄えたディン朝の首都ホアルーの遺跡なども含まれている。

紹介記事はこちら>>チャンアン複合景観/ベトナム

■ワディ・ラム保護区
ヨルダン、2011年、文化遺産(iii)(v)、自然遺産(vii)
「ワディ」とは水の枯れ果てた川の跡のこと。ワディ・ラムはサウジアラビアのルブ・アルハリ砂漠につながる荒涼とした大地で、砂漠の中に立ち上がる断崖や奇岩・洞穴の美しさから「月の谷」の異名をとる。古くから遊牧民族ベドウィンが住む土地でもあり、12000年前まで遡る彫刻や岩絵が確認されている。
 

オセアニアの複合遺産

オーストラリアの世界遺産「ウルル - カタ・ジュタ国立公園」のウルル、別名エアーズロック

夕陽に焼けるウルル、別名エアーズロック。オーストラリアの世界遺産「ウルル - カタ・ジュタ国立公園」構成資産

■カカドゥ国立公園
オーストラリア、1981年、1987・1992年拡大、文化遺産(i)(vi)、自然遺産(vii)(ix)(x)
大湿地帯や干潟、草原、熱帯雨林、峡谷が広がる動植物の楽園で、昆虫1万種、植物1500種、鳥類300種、爬虫類120種、哺乳類60種が確認されている。アボリジニによって描かれた、古いもので2万年以上前のロックアートが1000点以上も発見されており、彼らの子孫がいまだこの地で生活を続けている。

■ウィランドラ湖群地域
オーストラリア、1981年、文化遺産(iii)、自然遺産(viii)
4万年前、干上がりかけた湖の水が風の影響でさまざまな紋様を描き出し、奇岩や砂漠と相まって地球とは思えぬ奇観を見せている。域内のムンゴ国立公園ではムンゴマンと呼ばれる約4万年前の人類の化石が発見され、その近くでは人類最古の火葬化石であるムンゴレディが発掘されている。

■タスマニア原生地域
オーストラリア、1982年、1989年拡大、文化遺産(iii)(iv)(vi)、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
動物たちが独自の進化を遂げているオセアニアの中でもタスマニア島の特殊性は際立っており、タスマニアデビルをはじめ数多くの固有種や絶滅危惧種を育んでいる。また、2万~1万年前のアボリジニのロックアートも多数発見されている。「泰山」と並び、もっとも多くの登録基準を満たす世界遺産でもある。

■ウルル - カタ・ジュタ国立公園
オーストラリア、1987年、1994年拡大、文化遺産(v)(vi)、自然遺産(vii)(viii)
「エアーズロック」の名で知られる一枚岩ウルルと、一枚岩が割れてできた「マウント・オルガ」の名を持つ奇岩カタ・ジュタからなる世界遺産。アボリジニたちは古来聖地としてこれらの岩々を崇め、ロックアートにメッセージを残し、さまざまな神話を語り継いでいる。
ニュージーランドの世界遺産「トンガリロ国立公園」、トンガリロ山のエメラルド・レイク

ニュージーランドの世界遺産「トンガリロ国立公園」、トンガリロ山のエメラルド・レイク

■トンガリロ国立公園
ニュージーランド、1990年、1993年拡大、文化遺産(vi)、自然遺産(vii)(ix)
トンガリロ、ナウルホエ、ルアペフの3つの火山が連なっており、噴煙が吹き出し温泉が点在する荒涼とした火山地形や、さまざまな鉱物が溶け込んで妖しく発光する湖等々、神々しい景観で知られる。先住民マオリの聖地で、首長たちは代々トンガリロ山に埋葬された。 

■南ラグーンのロックアイランド群
パラオ、2012年、文化遺産(iii)(v)、自然遺産(vii)(ix)(x)
古いサンゴ礁が隆起してできた445もの島からなり、島々には多数の塩湖が存在し、隔絶された環境の中でそれぞれ独自の生態系を築いている。また、古代の洞窟壁画や墳墓などの遺跡が残されており、これらが評価されて複合遺産としての登録となった。
 

北中南米の複合遺産

グアテマラの世界遺産「ティカル国立公園」

ジャングルから顔を突き出すグアテマラの世界遺産「ティカル国立公園」のマヤ・ピラミッド (C) Peter Andersen

■パパハナウモクアケア
アメリカ、2010年、文化遺産(iii)(vi)、自然遺産(viii)(ix)(x)
ハワイ島の北250キロメートルに位置する世界最大級の海洋保護区。全長は1900キロメートルに及び、サンゴ礁やラグーン、海山、深海等さまざまな環境が存在し、多様な動植物が生息している。先住民が「魂が生まれ帰る場所」と信じる場所でもあり、文化遺産としての価値も評価された。

■ピマチオウィン・アキ
カナダ、2018年、文化遺産(iii)(vi)、自然遺産(ix)
バーナーズ、ブラッドヴェイン、ピジョン、ポプラーの4河川の水源地で、美しい川や湿地・湖沼・森林を狩猟採取民アニシナアベ族が先祖代々7000年にわたって守り続けている。彼らの遺跡や住居・祭祀場等が文化遺産として評価されただけでなく、アメリカグマやクズリなど絶滅危惧種や固有種を含む豊かな生態系がその価値を認められた。

■ティカル国立公園
グアテマラ、1979年、文化遺産(i)(iii)(iv)、自然遺産(ix)(x)
3000~4000もの遺跡からなる古代都市遺跡で、ジャングルを切り拓き、石灰岩を敷き詰めたプラットフォームの上に住居や宮殿・ピラミッドを建築し、5万~10万人が暮らしていた。水はセノーテと呼ばれる陥没湖で確保し、焼き畑農業を行っていたが、900年前後に突如放棄された。

紹介記事はこちら>>ティカル国立公園/グアテマラ 

■ブルーマウンテン山脈とジョン・クロウ山地
ジャマイカ、2015年、文化遺産(iii)(vi)、自然遺産(x)
ジャマイカ島は大アンティル諸島で3番目に大きな島で、豊富な降水量と海抜0~2250メートルに至る多彩な気候から、豊かな植物相と動物相を誇る。逃亡奴隷マルーンたちはこうした山々を神聖視しており、彼らの築いた集落や道などの文化遺産も評価されて複合遺産となった。

■カンペチェ州カラクムルの古代マヤ都市と熱帯保護林 
メキシコ、2002年、2014年拡大、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(vi)、自然遺産(ix)(x)
カラクムルはマヤ古典期前期の古代遺跡で、ユカタン半島最古級のピラミッドが多数連なっている。また、熱帯雨林はメソアメリカ生物多様性ホットスポットの中心をなし、南北アメリカ大陸をつなぐ回廊として多彩な生物種を育んでいる。ケツァールをはじめ中米の固有種も少なくない。

■テワカン=クイカトラン渓谷:メソアメリカの固有生息地
メキシコ、2018年、文化遺産(iv)、自然遺産 (x)
渓谷は熱帯常緑樹林から温帯落葉樹林・針葉混交林・針葉樹林・草原など多様な植生を誇り、砂漠も見られる。特にサボテン科の多彩性は顕著で、その密集度は他に例がない。また、紀元前12000年ほどの住居跡が出土しており、トウモロコシや豆類などを栽培し、定住生活を勝ち取る様子が示されている。
コロンビアの世界遺産「チリビケテ国立公園-ジャガーの生息地」

コロンビアの世界遺産「チリビケテ国立公園-ジャガーの生息地」のテプイ(テーブルマウンテン)

■チリビケテ国立公園-ジャガーの生息地
コロンビア、2018年、文化遺産(iii)、自然遺産(ix)(x)
コロンビア最大の国立公園。ツニア川、アパポリス川、ルイーサ川といった河川が広大な森林地帯を形成し、森林からは高さ1000メートルを超える「テプイ」と呼ばれるテーブルマウンテンが突き出している。テプイには狩猟・戦争・舞踊・儀式などを描いた75000点に及ぶ岩絵が残されており、古代民族の文化をいまに伝えている。

■パラチとグランデ島-文化と生物多様性
ブラジル、2019年、文化遺産(v)、自然遺産(x)
セラ・デ・ボカイナ国立公園、イーリャ・グランデ州立公園、プライア・ド・スル生物保護区、カイリュク環境保護区の自然と、パラチ歴史地区の5件を構成資産とする。​生物多様性ホットスポットで固有種に富み、パラチ歴史地区はブラジルでもっとも保存状態のよい植民都市として知られる

■マチュピチュの歴史保護区
ペルー、1983年、文化遺産(i)(iii)、自然遺産(vii)(ix)
マチュピチュの遺跡は標高約2690メートルのワイナピチュ山と標高約3060メートルのマチュピチュ山を結ぶ標高2430メートルの稜線に築かれており、インカ皇帝の離宮や避暑地だったと考えられている。アマゾン盆地とアンデス山脈をつなぐ要衝でもあり、双方の影響を受けた希有な生態系が広がっている。

紹介記事はこちら>>マチュピチュの歴史保護区/ペルー

■リオ・アビセオ国立公園
ペルー、1990年、1992年拡大、文化遺産(iii)、自然遺産(vii)(ix)(x)
アマゾン盆地の低地からアンデス山脈の高地までをカバーする国立公園で、300~4200メートルまで標高差は4000メートル近い。ジャングル、広葉樹林、草原、サバナ、高山と環境は多様で多彩な生態系を誇る。域内では高地で暮らす「雲上の人々」チャチャポヤス文化の遺跡が多数発見されている。
 

アフリカの複合遺産

マリの世界遺産「バンディアガラの断崖(ドゴン人の地)」

マリの世界遺産「バンディアガラの断崖(ドゴン人の地)」。この驚異的な断崖の内部にドゴン人約25万が暮らしている (C) Timm Guenther

■タッシリ・ナジェール
アルジェリア、1982年、文化遺産(i)(iii)、自然遺産(vii)(ix)
サハラ砂漠にありながら「泳ぐ人」をはじめ人間や動植物の生き生きとした様子が描かれており、当初ヨーロッパの人々は「暗黒の大陸」に高度な文化があったことを認めなかった。こうしたロックアートは人々の高い芸術性を示すだけでなく、この地がかつて緑に覆われていたなど当時の環境をも伝えている。

■ロペ-オカンダの生態系と残存する文化的景観
ガボン、2007年、文化遺産(iii)(iv)、自然遺産(ix)(x)
熱帯雨林とサバンナをつなぐ環境を持つロペ-オカンダは、その特異で多彩な地形から独特の生態系を有し、数多くの哺乳動物や鳥類を育んでいる。特にゴリラやチンパンジー、マンドリルなど類人猿が多いことで知られる。また、1800点に及ぶロックアートや鉄器時代の遺跡が残されている。

■ンゴロンゴロ保全地域
タンザニア、1978年、2010年拡大、文化遺産(iv)、自然遺産(vii)(viii)(ix)(x)
高さ400~600メートルの壁に囲われた直径約2キロメートルのンゴロンゴロクレーター。野生動物たちはこの壁を越えることができず、周囲と隔絶された環境の中でサバンナの生態系が維持されている。資産には猿人や原人の骨が多数発掘されている「人類発祥の地」オルドバイ渓谷も含まれている。

■エネディ山地:自然および文化的景観
チャド、2016年、文化遺産(iii)、自然遺産(vii)(ix)
サハラ砂漠にあって年間降水量50~150ミリメートルという乾燥地帯ながら、夏に降る雨が特有の生態系をもたらすと同時に、風雨が山を削って険しい渓谷や奇岩群を形成している。また、紀元前5000年頃から現在まで約7000年の間に描かれた多彩なロックアートが残されており、当時の生活や環境を知る手掛かりとなっている。

■バンディアガラの断崖(ドゴン人の地)
マリ、1989年、文化遺産(v)、自然遺産(vii)
サハラ砂漠南部の乾燥地帯バンディアガラにたたずむ高さ500メートル、幅200~400キロメートルに及ぶ断崖絶壁に、ドゴン人の集落が点在している。25万人が暮らす集落群では以前と変わらぬ生活が営まれており、その宇宙観からもたらされる不思議な仮面デザインは画家ピカソを驚嘆させ、彼をキュビズムへ導いたといわれる。

■マロチ・ドラケンスベアク越境世界遺産地区
南アフリカ/レソト共通、2000年、2013年拡大、文化遺産(i)(iii)、自然遺産(vii)(x)
2000年に登録された「ウクハランバ/ドラケンスベアク自然公園」が2013年に拡大されて現在の名称になった。ドラケンスベアク山脈は亜熱帯域から一気に3000メートル以上を駆け上がり、多彩な気候が豊かな生態系を育んでいる。また、サン人たちが4000年以上をかけて描き続けてきた3万点以上に及ぶ壁画群が残されている。

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