3/6 映画で世界遺産1 インディ・ジョーンズ [世界遺産] All About

『インディ・ジョーンズ／レイダース失われたアーク＜聖櫃＞』

『旧約聖書』の「出エジプト記」に描かれているモーセの十戒の神話。ユダヤの民がエジプトのファラオの下から脱出し、海をまっ二つに割って逃げたというあの伝説だ。

脱出の途中、モーセはシナイ山に立ち寄り、神から10の戒律を授かる。ユダヤの民たちは神の指示通りにアカシヤの木で「契約の箱＝アーク」を作って十戒が刻まれた２枚の石板を収め、金で覆い、２本の棒を通して担いでこれを掲げながらさすらいの旅を続けた。

紀元前10世紀前後、ソロモン王によってエルサレム神殿が建てられると、アークは神殿の至聖所に収められたが、その後は行方不明になってしまう。世界中に「ここにある」伝説があるが、有名なのはエルサレムの「岩のドーム説」や「聖墳墓教会説」、あるいはエジプトに運ばれたという説もある。

また、『旧約聖書』ではシバの女王がソロモン王を訪ねるが、エチオピアに伝われる伝説では、彼女の国がエチオピアにあり、しかもエチオピアの初代国王メネリク１世は彼女とソロモン王の子であるとする。そして新バビロニアによるエルサレム破壊を前にメネリク１世がアークを自国に退避させたというのが「エチオピア説」だ。エチオピア正教の教会には「タボット」というアークのレプリカが収められているが、アクスムの聖マリア教会のものは本物だという。アクスムのアークは門外不出・完全非公開で、司祭ひとりのみが見ることを許されている。

エルサレムの岩のドーム。このどこかにアークが収められているという噂も。©牧哲雄

さて、映画。持つ者が世界を治めるとされるこのアークをナチスが追っているという情報を得たアメリカ政府は、考古学者にしてトレジャー・ハンターだったインディアナ・ジョーンズに発見・入手を依頼する。こうしてジョーンズがペルー、ネパール、エジプト、地中海などを冒険するのが『レイダース』だ。

特にジョーンズのかつての恋人として登場するカレン・アレン扮するマリオン・レイヴンウッド。彼女は最新作『クリスタル・スカルの王国』にも登場するので、新作を見るならぜひ本作を復習しておきたいところだ。

『レイダース』には直接世界遺産は登場しないが、上の解説に出てきたシナイ山の一部はエジプトの世界遺産「聖カトリーナ修道院地域」、エルサレムはヨルダン申請の世界遺産「エルサレムの旧市街とその城壁群」、アクスムはエチオピアの世界遺産「アクスム」として登録されている。

【映画基本データ】
『インディ・ジョーンズ／レイダース失われたアーク＜聖櫃＞』
監督：スティーヴン・スピルバーグ
製作総指揮：ジョージ・ルーカス、ハワード・Ｇ・カザンジャン
製作：フランク・マーシャル
音楽：ジョン・ウィリアムズ
脚本：ローレンス・カスダン
出演：ハリソン・フォード、カレン・アレン、ジョン・リス＝デイヴィス

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