世界の軍用機・戦闘機

掲載日: 2003年 02月 19日

スパイ偵察機「U2」

文章:秋本 俊二(All About「世界のエアライン」旧ガイド)
『13デイズ』というアメリカ映画を、みなさんはご覧になりましたか?

1962年のキューバ危機を舞台に、核戦争回避に全知全能をかけて苦悩し決断した若き閣僚3人の、13日間におよぶクライシスを描いた政治サスペンスです。日本でも大ヒットした映画ですので、きっとご覧になった人も多いでしょうね。

いまから41年前、世界を核戦争寸前にまで追いつめたキューバ危機。自国の目と鼻の先で誕生した社会主義政権に危機感を抱いたアメリカは、キューバと国交を断絶し、カストロ政権の転覆を図ります。一方のキューバは、アメリカの侵攻を恐れてソ連に急接近。ソ連のフルシチョフ首相はアメリカ東部を射程内におく中距離ミサイ ルのキューバ配備計画を画策します。中距離ミサイルの存在はその後、キューバ上空で撮影した写真で確認される。その写真を撮影したのが、じつはU2偵察機でした。

U2はアメリカ空軍所属の一人乗りスパイ偵察機です。全長約19メートル、翼長約31メートル。グライダーのような長い翼で空気の希薄な高空を飛ぶのが特徴で、一般の旅客機の3倍近い2万7,000メートルの高高度を飛行できるうえに、滞空時間が10時間超と非常に長い。最高時速は約800キロ。機体の先頭・胴体・翼の各部分に赤外線やレーダーなど複数のカメラを搭載し、どんな天候でも柔軟にカメラを使い分け、移動するトラック1台1台の判別も可能です。

U2はもともと冷戦下の1950年代、旧ソ連領空の偵察を目的に米中央情報局(CAI)がロッキード社に発注し、スカンクワークスという秘密プロジェクトで開発されました。60年に一度ソ連領空で撃墜されましたが、62年のキューバ危機ではミサイル配備を撮影し“黒衣のスパイ機”として一躍有名になったことは前述したとおりです。

1994年からは最新型U2Sが配備され、現在約30機が米カリフォルニア州のビール空軍基地を拠点に、イギリス、韓国などに派遣されています。

さて、このU2偵察機が初めてイラク領空に入ったのは2月17日。大量破壊兵器開発疑惑を調査している国連査察団が同日、米軍のU2偵察機を使ってイラク上空から空中査察を行ったとイラク外務省が声明を発表しました。

声明によると、U2は17日午前11時25分(日本時間午後5時25分)にイラク領空に入り、約4時間20分間にわたってイラク領内数カ所を調査したあと、午後4時15分に領空を出たそうです。詳しい飛行ルートについては触れていません。米国が確証をもつといわれる大量破壊兵器ははたして実在するのでしょうか。イラク攻撃への動かぬ証拠として、U2はどれだけの“成果”をもたらすのでしょうか。

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