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綱川先生に聞く、ドーピングと素朴な疑問(2ページ目)

アナボリックステロイドの副作用は、心身を蝕み、時として人の命さえも奪ってしまう。そんな恐るべきドーピングに対する素朴な疑問をリングドクター・綱川先生に聞いたインタビュー後編。

執筆者:川頭 広卓

いたちごっこの現状 “遺伝子レベルの検査が必要”

――これらを防ぐ手立てはないのでしょうか?

綱川先生「遺伝子レベルでの検査が必要になってくるんじゃないでしょうか。遺伝子ですと操作ができない訳ですからね」

――ステロイドを使用で一時的に優れた能力を得たとしても、そのツケは蓄積されていく訳ですよね?

綱川先生「以前、(アーノルド)シュワルツェネッガーも大腿骨を折っていますが、あの年齢でココを折るってことは少ないんですよ。やっぱり、ステロイドの副作用で、骨粗しょう症というか骨が弱くなっているんだと思います。また、最近では、HHHなんかも大腿四頭筋を切っていますよね。これも同様のことが言えると思います」

――選手心理としては副作用を知っていながら、それでも使用してしまう?

綱川先生「うーん、どうでしょうね。ステロイドの使用をカミングアウトをして、その後、使用を止める様な選手もいますし、“美しい身体を見せなければならない”といった様々な理由から使用を続けている選手がいるのも確かですよね」

――簡単に使用を発見できるケースというのもあるのでしょうか?

綱川先生「例えば、ステロイドの影響が大きく表れる箇所として僧帽筋が挙げられますね。だから、僧帽筋が異常に盛り上がっている、発達している選手というのは、ステロイド使用の可能性が考えられます」

――一概には言えないとは思いますが、その根拠というのは?

綱川先生「僧帽筋は、アナボリックステロイドが一番受け皿になりやすい箇所なんですよ。受容体って言うのですが、ステロイドがそこにくっついて、筋肉を増強しますよっていうシグナルを出すんですよね」

――ちなみに(プロレス&格闘技界における)ステロイドの使用は、主にアメリカで発覚するケースが多いようです。日本国内ではこうした検査はなされないのでしょうか?

綱川先生「できるんですけどお金が掛かりますよね。これが一つの要因であることは間違いないと思いますけど・・・」

――話を戻しますと、ベノワの事件では、薬物検査の結果、鎮痛剤や抗不安剤が検出されたという報道もありました。

綱川先生「それは、ステロイドとは全く別モノですね。鎮痛剤で精神錯乱は起こらないので、今回の事件では、これが直接的な原因ではないでしょう」

――薬物検査の結果、WWEの声明では、テストステロンが陽性で、アナボリックステロイドは陰性と発表されたそうです。これはどういうことなのでしょうか?

綱川先生「テストステロンというのも、結局アナボリックステロイドと似ているんですよね。同じと言ってもいいかもしれません」

――そうなんですか!全く知識のない私が、この部分だけを切り取って言われれば、“アナボリックステロイドは使用していなかった”と錯覚してしまいますね。

綱川先生「アナボリックステロイドを入れて、テストステロンに変わっていきますので」
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