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【プロ野球】飛ぶボールを検証する(2ページ目)

ここ何年か、日本のプロ野球では大味なゲームが多くなった。以前よりもホームランが飛び交い、投手陣はいとも簡単に崩壊する。その大きな要因とされる『飛ぶボール』について検証する。

執筆者:コモエスタ 坂本

『飛ぶボール』の正体は?

■球団本拠地球場での使用球と1試合平均ホームラン数
年度中日(ナゴヤドーム)横浜(横浜スタジアム)巨人(東京ドーム)
 使用球本塁打数使用球本塁打数使用球本塁打数
2001一光、サン0.81サン1.42ミズノ、サン3.37
2002ミズノ1.64サン1.49ミズノ、サン2.76
2003ミズノ1.70ミズノ3.15サン2.90
2004ミズノ、サン1.29ミズノ3.04サン3.63
※「サン」はサンアップ社

上記のうち、巨人のデータでははっきりしたことが言えないが、中日・横浜のデータはかなり明快な事実を物語っている。使用球をミズノに変更した年から、ホームラン数が倍増しているのだ。そして今年、中日は使用球をミズノだけからサンアップとの併用に戻した。6/18からのことだが、もう数字に現れた部分もある。

中日のナゴヤドームでの使用球だが、在京3球団(巨人、ヤクルト、横浜)に対しては「飛ばない」サンアップ球を、阪神・広島にはミズノ球を使用するという方針にした。まだデータは少ないものの、結果は明白である。大砲の多い在京球団と対して、6/18以降は6試合で4ホームラン(0.67本/試合)、阪神・広島との対戦では4試合で8ホームラン(2.00本/試合)である。

関係者には「公然の事実」

落合監督の中日が、戦略的に使用球の使い分けをしていることからもわかるように、野球関係者にとっては最近のミズノ球が『飛ぶボール』であることは公然の事実なのだ。そして興行的・戦略的にホームランを増やしたい球団はミズノ球を使い、そうでない球団はそれ以外を使用球にするというのが近年の傾向だ。

ある引退したホームランバッターは、「年を取ると飛距離が落ちる筈なのに、年々伸びていった」と言っているし、ある投手は「打球の速さがメジャーのそれよりも速い」と証言している。またある外野手は、「失速するはずの打球が伸びていく」とも言っているのだ。

もっとも、ミズノ球が他より『飛ぶボール』であるという証拠は、科学的データとしては取れてはいないのだが、データや証言などの傍証ではかなりはっきりしたことが言えるようだ。

ミズノ球はなぜ『飛ぶボール』なのか

ここで一つ断っておかなければならないのは、私は『飛ぶボール』を作っているミズノ社を批判しているのではないということだ。むしろ、製作技術的・質的には他社よりも高い水準にあるのではないかという印象を持っている。ボールはコルク・糸・牛革などの天然素材からできており、均質な性能を保つのは難しい。また、耐久性に優れていることが、各球団の使用球採用に影響する。ミズノはその点で高い評価を得ており、打球の飛びは副産物だったのだろうと思えるのだ。

そしてもちろん、ミズノを含めた各社の使用球は、テストに合格したものだ。テストで検査されるのは、大きさ・重量の他に反発係数だ。秒速75メートル(時速270キロ、ボールスピードとバットスピードの和を想定)のスピードで鋼板に当てた時の反発係数が、0.41~0.44の範囲内ならば合格である。ただし実際は、時速270キロを出せる機械がないので、それ以下の6段階のスピードで計測し、反発係数を回帰曲線によって算出している。

それでは、なぜミズノが他社のボールより飛ぶのだろうか。仮説として考えられる2つの点を述べてみよう。

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