狭小住宅/狭小住宅の実例

ある都市型狭小住宅の見学記 施工編(2ページ目)

いつもハウスメーカーに絡む話ばかり書いていますが、今回はある建築家による住宅づくりの話。その建築家が設計した都市型狭小住宅が建築中で、その様子を見学してきました。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

藤本さんと施工を担当する工務店の神村忠利さんによると、この建物のスペックでは、通常、2000万円程度という価格は「無理」なのだそうです。では、どのようにして、この建物の価格が実現したのでしょうか。その謎解きは、住宅づくりのヒントや現実を考える上で重要だと思います。

良い住宅づくりには関係者全体の信頼関係が大切

外断熱

性能面で高い定評がある「ネオマフォーム」やウレタンフォーム吹き付け、ペアガラスサッシなどによる外断熱工法が施されている

良い住宅を作る上で重要なのは、施主と建築家、工務店、その他関係者がいかに良い信頼関係を作れるか、だと思います。それは、ハウスメーカーで住宅を建築する場合でも同様です。言葉を換えると、「どれくらいいいチームが作れるか」ということ。

藤本さんによると、「まじめで信頼できる神村さんと出会えたこと、(躯体を提供した)JEF関係者などが協力してくれたから」とのことでした。そして施主さんの協力も見逃せません。「施工中に変更が生じないように、細やかな打ち合わせを行いました」。

建築家はハウスメーカーとは違い一般的にモデルハウスを持ちません。ですから、完成した建物をアピールする場合、完成した住宅しか利用できません。今回は特に様々な関係者によるトライアルの集大成という意味合いも含まれますから、入居前にモデルハウスとして活用するということに施主さんが了解されたこと、各関係者の協力を得られた点が、価格を抑えられた一因となったそうです。

中でも、建築家と工務店の信頼関係というのは非常に大切に感じられました。今回の見学では、藤本さんと神村さんが細かく打ち合わせをしている様子が目につきました。神村さんによると「こんなに現場に来る設計士の人は珍しい」とのことでした。

信頼関係が施工価格の抑制につながる

住宅づくりも分業化が進んだといいますか、例えば建築家の中にも仕事の効率化ばかりを優先して、現場をおろそかにする人も少なくないようです。ただ、そうすると良い住宅、施主の満足が得られる住宅となる可能性は低くなるといわざるを得ません。

建築家と大工

詳細な打ち合わせを行う建築家の藤本氏(右)と工務店の神村氏

今回の現場のように建築家が進行状況をしっかりと確認し、工務店が建築家の意図をしっかりと理解することで、無駄やミスを極力減らすことができ、結果的に建物の総額を抑えられるというわけです。

実は、このような細かいことの積み重ねが、住宅づくりの実態であり、さらに住宅価格を構成する要素ともいえるわけです。だから各関係者間の信頼関係が重要なのです。そのことを今回の見学を通じて、私は改めて痛感させられました。

ところで、今回見学させてもらった住宅のコンセプトは「狭広(せまひろ)」。「狭く建てて広く棲む」ことだそうですが、建築中であったため、詳しく分からない部分もありました。11月に完成してお披露目会があるそうですので、改めて完成した建物を見た上でコンセプトを含め詳細なご紹介をしましょう。

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