狭小住宅/狭小住宅の実例

ある都市型狭小住宅の見学記 施工編

いつもハウスメーカーに絡む話ばかり書いていますが、今回はある建築家による住宅づくりの話。その建築家が設計した都市型狭小住宅が建築中で、その様子を見学してきました。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

私の友人に建築家の藤本健生さん(POIアーキテクチャー代表)がいます。先日、彼が設計した住宅の建築現場を見学させてもらいました。そこで私は、住宅づくりに関するいろいろな知識を得ることができました。今回は そのことについて書いてみたいと思います。

建築現場は、東京都大田区内にあります。周囲は古い木造住宅が密集しているエリア。建築中の住宅は、そうした環境の建坪26.4平方メートル(8坪)の敷地に立地しています。いわゆる都市型狭小住宅といわれるジャンルに入れられるでしょう。特徴を以下に書き出しておきます。

・建物規模=3階建て(延べ床面積は75.9平方メートル=23坪) 間取り=1階に浴室のほか客間など、2階にはLDK、3階を主寝室と子供部屋などとする構成(屋上利用も)
・構造躯体=軽量鉄骨ブレース構造
・設計藤本健生氏(POIアーキテクチャー)
・施工神村工務店

採光などを考慮し2階にLDKスペースを持ってくるあたりは、都市型狭小住宅の典型的なしつらえですね。この分野の建物は、非常に高度な設計提案が求められます。いくつか感心させられることがありました。

耐震性や断熱性など高い基本性能を確保

このジャンルの住宅では、土地の狭さをカバーするため、無理な設計と基本性能をおろそかにされがち。ですが、今回の建物はまず耐震性や断熱性能といった基本性能について、高いレベルを確保しようとしているのがよくわかる建物でした。

構造躯体

施工現場の様子。構造躯体には耐震性や耐久性が高い軽量鉄骨ブレース構造が採用されていた(クリックすると拡大します)

構造躯体にJFE鋼板製の「フレームキット」という素材を用いていることが第一点。軽量鉄骨ブレース構造というのは、大手のハウスメーカーでも採用されてます。JFEという大手鋼材メーカーの関連会社が供給する素材であること、構造体はその代理店が施工するため、信頼性が非常に高いということで、採用されたということです。

もう一つは、断熱仕様として外断熱工法を採用していることでした。外回りについては、断熱素材として非常に評価が高い「ネオマフォーム」(旭化成建材製)を採用しているほか、屋根裏にはウレタンフォーム吹付を充填。さらに基礎も断熱材で覆うことで、基礎断熱も行われていました。もちろん、開口部もペアガラスのアルミサッシ。

実は、この建物の施工費用は総額2000万円程度(建物のみ、消費税除く)。つまり、都市型狭小住宅によくありがちな施工コストを抑えなければいけないという、制限もありました。建物の仕様を考えると、施工費用2000万円台前半というのは驚異的と思われます。

次のページでは、どのようにしてこの価格が実現したのか、また今回の見学を通じて私が感心させられたこと、学んだことをご紹介したいと思います。
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