キッチン/キッチン選びの基礎知識

火気使用室の定義とは?内装制限緩和によるキッチンデザインの変化

従来、住宅のキッチンは火気使用室と定義されていましたが、2009年4月1日に告示された改正条例で、コンロ周りの不燃仕上げを徹底すれば、内装制限が緩和されることになりました。この内装制限の緩和によってキッチンデザインが変わることになります。

執筆者:黒田 秀雄

キッチンデザインに朗報!? 戸建住宅の内装制限が緩和

従来、コンロなどの加熱調理器具が設備された住宅のキッチンは火気使用室と定義され、火災予防の見地から建築基準法(令128-3-2条~129条)で、準不燃材料以上の不燃材料で仕上げることが義務づけられてきました。
トレンドとなっているオープンキッチンの場合、下記の図面のように垂れ壁を設けなければ、キッチンから離れたダイニング空間やリビング空間まで、準不燃材以上で仕上げるように決められていたわけです。

開放的なキッチン空間をデザインするときに、この規制は結構厳しく、建築家やデザイナーはダイニングやリビングの内装材を選定することに腐心してきた訳です。以前のガイド記事でご紹介しましたが、神奈川県条例ではIHクッカーを使ったキッチンの場合は、内装制限の規制が緩和されている特例がありますが、現在の消防庁の見解では、ガスクッカーでもIHクッカーでも火気使用室という点では同じ扱いとなりますから要注意です。

今回の内装制限緩和の告示は、住宅における火気使用室の内装制限に係る規定の合理化を図るため、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条第1項第二号ロの規定に基づいて、「準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める告示」として、平成21年2月27日に公布、4月1日に施行されました。告示本文は、国土交通省の「準不燃材料でした内装の仕上げに準ずる仕上げを定める件(平成21年国土交通省告示第225号)(PDFファイル)で内容を確認できます。

またこの改正法規は、戸建住宅だけに適用され、集合住宅には適用されません。また従来の内装制限とは並列法規となり、どちらかをクリアすれば良いということになります。

本告示の適用対象は、加熱の状況が比較的よく把握できており、かつ、ログハウス等の木材を内装に使用している一戸建て住宅において一般的に用いられる火気使用設備として、『こんろ・固定式ストーブ・壁付暖炉・いろり』に関する技術基準を整理したもので、囲炉裏のある和室デザインや、暖炉やストーブを設置したログハウスの内装デザインに自由度が増すことは嬉しい。

平面図で従来の内装制限と、今回の規制緩和を表現すると下図のようになる。

◇従来は、コンロから天井までの高さ(一般的に1,550~1,850mm位)の1/2以上の距離を、火源から離隔した距離に天井から50cm以上の不燃材料の『垂れ壁』を設けるのと併せて、壁と天井を準不燃材で仕上げれば、キッチン以外のダイニングやリビングは内装制限を受けなかった。またコンロと周囲の壁に指定された離隔を確保できない場合、コンロ周りは9mm以上の不燃材で仕上げる必要がある。
 


並列法規となる今回の規制では、
◇コンロの中心から半径250mm、高さ800mmの円柱の内部仕上げは特定不燃材(壁、天井がある場合は間柱、下地も特定不燃材)。
◇回り縁、窓台、その他これらに類する部分を含んで特定不燃材。
◇コンロの中心から半径800mm,高さ2,350mmの円柱の内部および天井面、および間柱や下地材も特定不燃材、またはそれに準じるで仕上げること。
特定不燃に準じる材料として12.5mm以上の石膏ボード、5.6mm厚の珪酸カルシウム板2枚重ね、5.6mm厚の繊維強化セメント板2枚重ね、厚さ12mm以上のモルタルの使用が認められる。
◇コンロから天井までの距離が2,350mm未満の場合、800mm+(2,350ー天井までの高さ)のコンロを中心とした半径の天井面が、不燃材仕上げの対象となる。
◆戸建て住宅を対象とし、集合住宅では適用されない。
◆火力が一口4.2Kw以下のコンロ、発熱量18kW/sec.以下のストーブが対象となる。
 

パースでみるキッチンの変化

以上の説明をパースで表現すると下図のようになる。


今回の法改正によってキッチンの内装制限は緩和されたように見えるが、上のパースで表現されるように、コンロ周りの規制は結構厳しい。注意したいのは、ダイニングやリビングに向かったオープンキッチンの場合、コンロバックの立上がり材料や仕上げの規制が従来よりかなり厳しくなり、不燃認定を受けていない木製カウンターや人造大理石のデッキカウンター等が不可となることだ。

もう一点注意したいことは、コンロ近くの吊戸棚の材料だ。従来はレンジフードに接する吊戸棚は150mm以内の両底面の仕上げを3mm以上の金属以外の不燃材で仕上げる必要があったが、今回の改正では、吊戸棚そのものの材料を準不燃材以上の仕上げにする必要がある。このあたりは、関係するキッチンバス工業会や、リビングアメニティ協会などの公式見解が未発表のため、そちらを確認する必要がある。

■建築に使われる不燃材料をもう一度見直してみよう
◇『不燃材』(法2条九号、令108条の2)とは、建築材料のうち、通常の火災による火熱で加熱開始後20分間、
1:燃焼しない
2:防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じない
3:避難上有害な煙またはガスを発生しない
という不燃性能に関する技術的基準を満たしているものを指し、
例えば、コンクリート、れんが、ガラス、金属板、瓦、陶磁器質タイル、モルタル、しっくいなどがある。

◇『特定不燃材』とは、
コンクリート、れんが、鉄鋼、アルミニウム、モルタル、しつくいその他これらに類する不燃材料で、ガラス及び、グラスウールは含まれない。

◇「準不燃材』(令1条五号)とは、建築材料のうち、通常の火災による火熱で加熱開始後10分間、
不燃材料と同じ技術的基準を満たしているものを指し、
例えば、厚さが9mm以上の石膏ボード、厚さが15mm以上の木毛セメント板、厚さが6mm以上のパルプセメント板などがある。

◇「難燃材料』(令1条六号)とは、建築材料のうち、通常の火災による火熱で加熱開始後5分間、
不燃材料と同じ技術的基準を満たしているものを指し、
例えば、難燃合板で厚さが5.5mm以上のもの、厚さが7mm以上のせっこうボードなどがある。

■今回の改正法の詳細は、国土交通省の公式サイトをご覧ください。
■この記事は執筆当時の2009年6月18日から、イラストとテキストの一部に修正加筆を加えています(2009年7月11日)。今後もこの規制緩和法規の詳細が判明次第修正させていただきます。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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