感染症/風邪

風邪の予防法

風邪の予防法として推奨されているマスク・手洗い・うがい。実は過剰な工夫に意味がなかったり、実行の仕方によっては効果がないこともあります。それぞれの予防の有効性や注意点についてお教えします。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

風邪の予防法として推奨されているマスク・手洗い・うがい。実は過剰な工夫に意味がなかったり、実行の仕方によっては効果がないこともあります。それぞれの予防の有効性や注意点についてお教えします。

使い捨てマスク 最も有効な予防法

最善の予防策はマスクです!

最善の予防策はマスクです!

風邪を完全に予防する方法はありません。しかし、呼吸器である鼻や口からウイルスを吸い込む量を減らす事は、予防につながります。

具体的にはマスクを使用することです。市販のマスクには色々ありますが、少し値段が高いマスクを使い回すよりも、安価な使い捨てマスクを毎日取り替えて使うことをお薦めします。マスクの外側の部分は病原体に汚染される可能性があるからです。

通常のマスクをした場合、マスクがある部分から空気の80~90%、マスクと顔の間から10~20%の空気を吸い込んでいます。マスク自体の空気の濾過に関して高い性能があってもマスクと顔の間から吸い込む空気に対しては関係がないからです。

N-95と呼ばれる高性能のマスクもありますが、医療機関でも空気感染する結核のような病原体があるような場合でないと使用しません。一般の人が風邪予防のためにこれらの高性能なマスクを使っても、顔の形にきちんとあった形状のものを使用しないとマスクと顔の間から空気を吸い込んでしまい、通常の使い捨てのマスクと効果は変わらなくなってしまいます。逆にきっちりと顔の形状にあって装着した場合は呼吸が苦しくなるので、長時間の装着には適していません。

マスクは、公共交通機関、エレベーターの中、最近多い机を並べた簡単なしきりの職場、集団生活する学校の教室などで特に予防効果を発揮します。

手洗い 有効だが、公共の場では状況に応じて

風邪はウイルスを含んだ飛沫を、気道から吸い込む事でかかります。しかし咳やクシャミで飛んだ飛沫は小さくて目には見えないので、公共交通機関のつり革や手すり、自動販売機のボタン、エレベーターのボタン、エスカレーターの手すり、手動のドアの取手などに付着している可能性もあります。手に付着した病原体を食事などで体内に入れてしまう可能性は十分あるので、手洗いによって病原体を洗い落とすことも有効な予防手段です。

しかし、外出時は水回りの構造が問題となります。職場や学校では手を洗える場所は限られていると思いますが、蛇口や手洗い場から出る時のドアノブなどが、病原体に汚染されていては、意味がありません。

できれば手洗い後に、直接ドアなどに触れないで済む洗い場が望ましいです。手洗いも蛇口ではなく、自動水洗か足踏みの構造の場所の使用をオススメします。

うがい 高齢者以外の効果は疑問

実は英国、米国の感染予防のガイドラインには、日本流のうがいの記述はありません。うがいが風邪の予防に対して有効かどうかは不明なのです。

例えば帰宅後にうがいをしても、帰宅中に気道の粘膜内に侵入してしまったウイルスを洗い流すことはできません。ウイルスの侵入には時間はかからないとされています。電車に1時間乗っていた場合、乗った直後に粘膜に付着したウイルスを帰宅後のうがいで洗い流すことはできません。また、うがいで鼻から吸い込んだウイルスを洗い落とす事はできません。

うがい後に口の中の微生物が一時的に減少することは確かですが、裏を返せば、うがいで吐き出された水には口の中の微生物が含まれていることになります。他人がうがいに使いそうな、職場、学校、食堂やレストラン、商業施設の水回りでのうがいは、なるべく避けた方が賢明という意見もあるくらいです。

一方で、うがいを含めた口腔ケアが高齢者のインフルエンザの発症を予防したという報告があります。口腔ケアは歯周病の予防が本来の目的ですが、風邪の予防に役立つ可能性があるとしたら、試す価値はあるのかもしれません。

タオルの使用法 家族との共有を避ける

予防法の最後にもう一点。一人暮らしなら大丈夫ですが、家族で同居している場合も水回りには気をつける必要があります。家のドアや蛇口の構造を変えるのは現実的ではありませんが、タオルの共有を避けるだけでも家族間での風邪予防効果はあります。色分けしてタオルを使うなど、工夫を試みましょう。

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