漢方・漢方薬/冷え・むくみ・だるさ・夏バテの漢方

十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)

「十全大補湯」(じゅうぜんだいほとう)は、体力や血液を補う代表的な漢方薬です。疲労、虚弱体質、食欲不振、手足の冷え、めまい、貧血のほか、病後の体力アップや慢性病、生理不調などにも用いることができます。

杏仁 美友

執筆者:杏仁 美友

国際中医師 / 漢方・薬膳料理ガイド

「十全大補湯」はどんな人・どんな症状にいいの?

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脱力感、貧血、めまい、食欲不振など、エネルギーや血液不足による諸症状に

虚弱体質だったり、疲労や産後、病後などで体力を消耗しているとき。消化器や循環器の機能が低下し、貧血になったり、手足が冷えるとき。

 

「十全大補湯」の効果

倦怠感、食欲不振、息切れ、ふらつき、手術後や病後・産後の衰弱、不正出血、貧血、脱肛、痔ろう、生理不順など。なお、がんによる体力補強に用いられたりします。

 

「十全大補湯」に入っているもの

十全大補湯

画像提供:八仙堂漢方薬局

人参(オタネニンジンの根)、熟地黄(ゴマノハグザ科の肥大根を酒で蒸して乾燥したもの)、白朮(オケラなどの根茎)、茯苓(サルノコシカケ科の菌核)、当帰(セリ科の根)、白芍(シャクヤクの根)、川きゅう(セリ科の根茎)、甘草(マメ科などの根やストロン)、肉桂・桂皮(クスノキ科のケイの幹皮・樹皮)、黄耆(マメ科の根)。

 

「十全大補湯」が合わない人

元気や栄養が足りないときに用いるものなので、強壮で体力のあるタイプや、カラダが熱を帯びている時は×。

 

「十全大補湯」の飲み方などの注意点

■ 飲む時間

一般的には食事と食事の間の空腹時、食事をする1時間前など、お腹が空で胃に吸収されやすい時期に飲みます。胃腸が荒れやすい人には食後、排便をうながすタイプの漢方には、空腹時の服用を勧める場合もあります。なお、食間に飲み忘れたときは、食後でいいので飲みましょう。

■ 「水」or「白湯」?
症状によって、冷たい水で飲むほうが効果的な場合(その反対も)もありますが、基本的には生薬を水で煎じた「煎じクスリ」の場合は、人肌に冷まして飲みます。生薬の有効成分を抽出して乾燥・加工した「エキス剤」の場合、お湯に溶かしたり、水と一緒に飲んでください。
 

「十全大補湯」の副作用

体質や症状に合わない、西洋薬との併用、アレルギー体質などの場合、不快な症状が出ることがあります。ちょっとおかしいな、と思ったらすぐ服用をやめ、漢方の専門家や処方してくれた医師に相談しましょう。

 

「十全大補湯」が買える場所

漢方薬局や病院、診療所、ドラッグストアなどです。

代表的な商品名:(アイウエオ順)

  • 一元 十全大補湯 (一元製薬)
  • クラシエ 十全大補湯エキス (クラシエ薬品)
  • コタロー 十全大補湯エキス細粒 (小太郎漢方製薬)
  • 十全大補湯エキス (松浦漢方)
  • 十全大補湯シンワ (伸和製薬)

「十全大補湯」の漢方的メカニズム<中級者向けトリビア>

気を補う四君子湯と、血を補う四物湯をあわせた八珍湯に、補気作用のある黄耆と脾腎を温め、機能をサポートする肉桂を加えたもの。八珍湯より気を補う働きが高くなります。


■ 具体的な生薬の効能
四君子湯の中身でもある人参、白朮、茯苓、甘草が、気を補って消化機能を促進させます。四物湯である当帰、熟地黄、川きゅう、芍薬が血液を養い、血流をよくしてカラダの機能を潤滑にさせます。

また、補気作用のある黄耆やカラダを温める肉桂が加わることで、さらにエネルギーや血液に力をつける働きがアップしています。
 

「十全大補湯」のおまけのエピソード

十全大補湯、八珍湯とならんでよく比べられる処方に、人参養栄湯があります。人参養栄湯は十全大補湯から川きゅうをのぞき、遠志、五味子、陳皮、生姜、大棗を加えたもので、血液を養い、精神安定やせきや痰を鎮める作用が高くなっています。

ちなみに十全大補湯は、気血、陰陽、表裏、内外の虚した部分を大いに補うという意味があります。
 


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