漢方・漢方薬/風邪の漢方・葛根湯

漢方医学から考える風邪予防!(2ページ目)

まだまだ風邪が流行っていますね。風邪薬さえ飲めばいいという発想を変えてみませんか。今回は漢方視点の風邪予防をご紹介します。さらに風邪の民間療法も検証しました。

執筆者:光原 ゆき

皮膚と胃腸を鍛えて守ろう

皮膚は身体そのものを外の環境から守っています。漢方医学では、皮膚の表面には、温めたり発汗を調節したりして身体を守る、「衛気(えき)」と呼ばれるエネルギーが巡っていると考えられています。皮膚を鍛えることで、衛気の働きを活性化させ、さらに発汗の調節がスムーズになります。また、皮膚と肺は影響し合っているので、皮膚を鍛えることは肺や呼吸器を健康にすることにつながるといわれています。具体的な方法を見てみましょう。

■乾布摩擦の意外な効果
風邪の予防や免疫機能の調整の効果があるとされる「乾布摩擦」。皮膚表面を鍛え、のどや肺を強くして風邪をひきにくくするという意味でも効果があるといえます。やり方は、乾いた布で数分間、上半身をこすります。皮膚の弱い人、乳幼児は、手をつかったり柔らかい布を使うとよいでしょう。効果的なのは、朝一番にすること。衛気の機能は夜間に低下するので、朝に刺激を与えることで、一日を健康に過ごすことができます。皮膚を鍛え、保護することで、「邪」から身体を守りましょう。

■胃腸を温めて鍛える
最近増えているのが、胃腸からくる風邪です。とにかくお腹を冷やさないように気をつけましょう。さらに、自分の体調に合わせて足から太ももにかけて温めることも大事です。温めることで血流を増やして代謝を上げると、邪が入りにくい身体になります。また、お腹が冷えると代謝低下と共に体温が下がり、消化吸収も悪くなり、さらに水の循環も悪くなってあちこちがむくんできます。そうして身体に溜まった水は冷えの原因になり、風邪の治りを悪くします。風邪が長引いてすっきりしないという人は、お腹を温めてみましょう。


これからの季節は、ストレスが風邪を招く

ストレッチ
ストレッチもおススメです
これからの季節は、ストレス性の風邪に要注意です。漢方医学では「春は肝がたかぶる」といわれています。どういうことでしょうか? 漢方医学における「肝」とは、肝臓というより、生きる活動をスムーズにする働きがあるものとして考えられています。春には木々が枝葉を四方八方にのびのびと伸ばしますよね。自然の中で生きている私たちの身体も同様に、春は気が巡ってのびのびとした気分になる季節です。「肝」がこの気の巡りをコントロールしていますが、「肝」はストレスの影響を受けやすく、それにより「肝」の機能が衰えて気がうまく巡らなくなることがあります。そうすると、イライラしたり五月病のように落ち込んだりしてしまいます。先程出てきた皮膚の表面を守る衛気も「気」です。ストレスで衛気が十分皮膚に巡らないと、邪が侵入しやすくなり風邪をひきやすくなるのです。

この予防には、特別なことをする、というより、身体が楽に感じられるようなちょっとした工夫がよいでしょう。深呼吸してリラックスすることが有効です。また、普段の姿勢も大切です。自分に合った、楽で無理のない姿勢を心がけましょう。余分な緊張があるままの姿勢だと、左右のバランスも崩れてしまいよくありません。また、大声で笑うのも有効ですし、呼吸法や発声法にトライしたりするのもいいでしょう。

風邪は予防と引きはじめが肝心。簡単に取り入れられる工夫で、風邪知らずで過ごしたいですね。



今回お話を伺った先生

東京慈恵医科大学総合診療部漢方外来 古賀実芳(こが みほう)先生

東京慈恵会医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学形成外科学講座。平成3年から漢方専門外来に勤務し、神奈川リハビリテーション病院東洋医学科、日本医科大学東洋医学科医局長などを経て、現在、東京慈恵医科大学総合診療部漢方外来、たかみざわ医院漢方外来(横浜市)などを担当。日本東洋医学会専門医。日本アロマセラピー学会認定医。


取材協力:株式会社 ウェルネス 医療情報センター


【 関連リンク 】
  • 漢方について総合的に学ぼう
       ⇒漢方ナビ
  • 漢方について相談できる病院を探す
       ⇒漢方処方を推進している医療機関一覧(ここカラダ)
  • 葛根湯が効く風邪と効かない風邪があります
       ⇒漢方薬の誤解! 葛根湯の正しい飲み方は?(オールアバウト)
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