FP(ファイナンシャル・プランナー)とはじめる賢い生き方

 

“退職金はいくらもらえる?何に使う?

「定年後は退職金をもらって悠々自適に暮らしたい」そんな憧れを抱きながら定年まで頑張って来た人もいることでしょう。けれども、せっかく退職金をもらっても、老後の生活費や病気・介護といった「いざという時の出費」を考えると、自由に使えるお金は少ないと感じられる方が多いようです。今回は、定年退職の退職金の実態についてみていきましょう。

定年退職金の平均は2,000万円。自分の場合はいくら?

定年退職金はいくらもらえるのか、隣のお財布事情は気になるところです。平成25年就労条件総合調査(厚生労働省)によると、定年退職者(勤続35年以上)の平均退職給付額は大学卒で2,156万円、高校卒で1,965万円です。

多いか少ないか、感じ方は人それぞれでしょう。あくまでも平均金額なので、自分の会社の退職金制度を確認するなどして、自分の場合はいくらぐらいなのか、具体的なイメージを持つことが大切です。「ウチの会社は平均並みの退職金は出るだろう」と思っていて、実際は予想よりも少ないと、思い描いていた老後の暮らしができなくなる可能性もあります。

退職金を「理想の暮らし」に使う人は少数派

では、もらった退職金は皆さんどのように使っているのでしょうか。
「退職者8000人アンケート2015」(フィデリティ退職・投資教育研究所)によると、最も多いのは「定年退職後の生活費」(52.2%)、次いで「ローンや負債の返済」(20.8%)となっています。「自分の趣味ややりたいことへの支出」と回答した人は5.6%で、ようやく5番目にランクインします。「退職金を趣味ややりたいことに充てて、理想の老後暮らしを実現する」と考える人は少数派で、大部分の人はローンの返済や老後の生活費、いざという時の出費に備えるために退職金を使う(取っておく)と考えているようです。

運用する/しないで、退職金が目減りするペースが変わる

平成27年完全生命表によると、日本人の平均寿命は男性80.75歳、女性86.99歳で更新を続けています。本来は喜ばしいことであるはずの長生きが、すればするほど老後の生活費がかかり、老後資金が不足する可能性が出るため「長生きリスク」というマイナスのイメージで捉えられるようになっています。

長生きリスクへの対策として「お金に働いてもらう」、つまり運用が考えられます。
例えば、老後の生活費に公的年金の補てんとして退職金2,000万円を毎月10万円ずつ取り崩していくと仮定します。その場合、取り崩した金額の残りの金額を各運用利回りで運用したとき、何年間取り崩せるかを見ると下表のようになります。

運用を行わない(=運用利回り0%)場合の受取期間は16年7ヶ月なので、60歳定年とすると、76歳7ヶ月まで受け取ることができるという計算になります。男性の平均寿命には少し足りません。運用利回りを2%とすると、受取期間は20年3ヶ月に伸び、男性の平均寿命を超えることができます。さらに4%とすると、受取期間は27年6ヶ月となり、女性の平均寿命に達することができます。運用利回りを上げるためには、投資などを行う必要がありますが、投資にはリスクがあるという点は忘れてはなりません。

退職金で投資! でもその前に

一般的な投資リスクを軽減する方法として「資産分散」「長期保有」「時間分散」があります。

資産分散
資金をひとつの金融資産にまとめて投資せず、さまざまな種類に分散して投資すればリスクも分散され、安定度が増すという考え方です。
長期保有
市場は短期的にみると一時的な要因で大きく変動することがありますが、長期的にみると、この変動リスクが小さくなる傾向があります。そのため、短期間の相場の変動で金融商品を売り買いするのではなく、長期間保有するという考え方です。
時間分散
一度に全額を投資するのではなく、何回かに分けて投資したり、毎月一定額を積み立てるなどの方法で購入時期を分散させたりすることによって、リスクを小さくすることができるという考え方です。

「退職者8000人アンケート2015」より、退職金で投資をした人が何に投資したかをグラフに表しました。「投資=日本の株式」をイメージするのか、50%超の人が「日本の株式に投資をした」と回答しています。これは、投資リスクの軽減方法の「資産分散」の点から考えると少し疑問に感じます。特定の資産に投資をすると、少しでも価格が下がった場合に怖くなって途中で投資を止めてしまう傾向があります。そうすると「長期保有」にはなりません。定年退職後、老後の期間は何十年と続くので、落ち着いて構えて投資をすると良いでしょう。また、もらった退職金で一度にまとめて投資をするのではなく、少し手間がかかりますが、時期をずらして何回かに分けて投資をすることもできます。そうすればそれは「時間分散」になります。

退職金で初めて投資をするという人の場合は、投資を始める前に投資に関する基本的な知識や情報を収集しておくと良いでしょう。資産形成に関する専門家であるファイナンシャル・プランナーなどに相談しながら進めると、自分に合った運用方法をアドバイスしてくれるでしょう。

提供:特定非営利活動法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
掲載期間:2016年6月24日~2017年3月31日【PR】