ココをチェック!“疲れないクルマ”の見極め方

楽しくて、爽快感も味わえる、クルマの運転。でも、なかには、運転していると、いつも以上に疲れを感じてしまうクルマも……。“疲れないクルマ”と“疲れるクルマ”は、どこが違うのか? ご自身で50台以上のクルマを乗り継ぎ、海外ラリー参戦の経験も持つフォトグラファー、All About自動車ガイドの小川義文さんに教えていただきました。

執筆者:All About編集部


クルマはドライバーに多くの情報を伝えている

クルマを運転するのは、楽しいもの。風光明媚な場所をドライブするのはもちろん、街中を走っていても、その心地よさに身を委ねるうちに、ついつい時間が経つのを忘れてしまうことも少なくありませんよね。

その一方で、いろいろなクルマを乗り比べてみると、なかには運転中に心地よさが感じられず、むしろ疲れを覚えるクルマと出会うことも。運転していて快適なクルマと、疲れやすいクルマ、両者の違いは一体どこにあるのでしょう?

「運転していて、必要な情報がきちんと得られ、しかもその情報が心地よいものであると感じられれば、ドライバーは疲れをほとんど覚えません。逆に、必要な情報が得られない、または情報を得られてもそれが不快なものであるときには、ドライバーは疲れを感じやすくなります」

そう語るのは、これまで自身で50台以上のクルマを乗り継ぎ、海外ラリーのドライバーとしての経験を持つフォトグラファーで、現在はAll Aboutの自動車ガイドも務める小川義文さんです。

「通常、運転をする際には、ドライバーはクルマから多くの情報を知覚しています。外界の環境をフロントウインドスクリーン越しに目で見る以外にも、たとえば、腰やお尻ではサスペンションやシートの性能に由来する乗り心地を感じ、耳ではエンジン音やタイヤと路面との間で生じるロードノイズなどをとらえているのです。そうした一つ一つの情報が快いものなのか、不快に感じられるものなのか。ドライバーにとってどちらの要素をより多く含んでいるかで、疲れないクルマ、疲れるクルマと、それぞれ評価が分かれるのではないでしょうか」


まずはシートの座り心地と車内の音をチェック!

それでは、疲れないクルマ選びのためには、クルマから得られる情報の具体的にはどういった部分に着目したらよいのでしょうか。小川さんに、さらにくわしく教えていただきました。

「乗り心地に関しては、非常に多くの情報がかかわってきますが、特に重要な役割を果たすのがサスペンションとシートの性能です。サスペンションの評価は専門家でなければ難しいかもしれませんが、シートの良し悪しなら一般のドライバーでも感じるところがあるはずです。シートに座ったときに、“固い”だとか、“座り心地に違和感がある”“姿勢がつらい”などという印象を受けたら、そのクルマは避けたほうが無難でしょう」

そのほかにチェックすべき要素は?

「“音”もとても大切な要素です。車内で会話がしづらかったり、一人で運転していてストレスを感じたりするほどエンジン音が騒がしいクルマは、まず論外。もっとも、音はエンジンや路面の状況、スピードなど、必要な情報をドライバーに伝え、運転を心地良くする効果がありますから、音がしなければよいというものではありません。運転席や車内で聞こえる音が耳障りでなく、できれば心地よく感じられるクルマを選ぶのが、最良の判断といえそうです」

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運転して楽しいクルマが“疲れないクルマ”だ

個人的な経験では、高速道路での加速性能の物足りなさや坂道でのパワー不足をストレスに感じ、どっと疲れを覚えることがあります……。

「それは、エンジンのパワーに余裕があるかどうか、つまりトルクにかかわる問題です。トルクの大きさは排気量に比例しますから、たとえば軽自動車と普通自動車のコンパクトカーではコンパクトカーのほうがエンジンに余裕があるのは間違いありません。エンジンのパワー不足をストレスに感じる方は、やはり一定以上の排気量を備えたクルマを選ぶのが正解です」

シートの座り心地がよいこと。車内の音が過不足ないこと。一定以上の排気量を備えていること。これだけ押さえておけば、“疲れないクルマ”を選べますか?

「ここまではあえてわかりやすい個々の要素を取り上げましたが、それらの条件と同等以上に大事なのは、運転して楽しいと感じられるクルマかどうかということ。乗り心地、音に加え、インストゥルメンタルパネルのデザイン、材質、スイッチのタッチやハンドルのフィーリングなど、さまざまな情報を知覚したときに、総合的に“楽しい”という印象が形成されるクルマなら、その人にとっての“疲れないクルマ”である可能性が高いといえます」

確かに、“疲れるクルマ”を運転して楽しいはずがありませんから、その逆もまたしかりですよね!


長時間運転して、“疲れないクルマ”を見極めよう

小川さんにアドバイスをいただき、“疲れないクルマ”を選ぶ際のチェックポイントはわかったけれど……、さて、実際のクルマの購入時にはどんな形で生かせばよいのでしょう?

「クルマを購入する前には、試乗をしますよね。しかし、5~10分間の試乗では、クルマからの情報を十分に得られません。そこで、試乗の時間は、少なくとも30分間はとってください。30分間クルマを運転すれば、意識しなくとも、車外、車内のさまざまな風景を目にし、サスペンションやシートの性能を実感する機会にも出会い、一通りの運転操作も体験できます。そうして得られた情報が、心地よく楽しい印象として残るのか、違和感を伴う後味を残すのか。前者の場合には、“疲れないクルマ”と考えてよいわけです」

自動車のプロの小川さんと違って、正直なところ、30分間の試乗でも、クルマからの情報を十分に知覚できるかどうか、少々心許ない気が……。レンタカーを借りて、長時間運転するというのは?

「最新モデルはレンタカーで借りるのは難しいかもしれませんが、もし可能なら、よいアイデアだと思います。東京にお住まいの方なら、レンタカーを運転して横浜辺りまで出かけ、おいしいものを食べて帰ってくる。せっかくレンタカーを借りるのなら、半日から1日は乗ってほしいですね。高速走行から市街地走行、ひょっとしたら雨中の走行も体験できて、“疲れないクルマ”かどうかを判断するのに十分な情報が得られます」

“疲れないクルマ”選びの第一歩は、実際にクルマのドライバーズシートに座り、ともに時間を過ごすことから始まります。その際には、小川さんに教えていただいたポイントをぜひチェックしてみてください!

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