政府が高齢者の免許返納を推奨も・・?シニアドライバーの事故原因まとめ

執筆者:All About編集部

最近の60~70代は見た目も気持ちも若く、65歳以上を「高齢者」と呼ぶのは気が引けるが、それでも若い頃と比べたら……。何しろデータではある意味「衰え」が出ている。今一度、ご自身や親の運転を振り返ってみてはいかが?


65歳以上の交通事故が増えている

帰省の折、父親の運転する車に乗せてもらうことがよくある。最近は新しいバイパスができたりして、知らない道も増えたから運転してもらうことはうれしいのだが、同時に両足でつい踏ん張ってしまうことも増えた。

私の感覚より、ブレーキがはっきりと遅いのだ。とはいえ、そんなことをひと言でも発すれば「うるさい、わかってる!」といきなり不機嫌になる。親からしてみれば子どもはいつまで経っても子ども。子どもをしかりつけるのが親の役割であって、子どもに注意されるなんてことはあってはならないからだ。

そんな父親であるがゆえ、後期高齢者に義務づけられている、免許証の更新時の講習予備検査に我慢がならないご様子。「今何時ですか?とかバカにしたような質問をされる」と何度も聞いた。ええ、年寄りは同じ話を何度も繰り返しますからね。

しかし子どもはいつまで経っても子どもだからこそ、親のことを心配するもの。万が一事故でも起こしたら……なんて想像したくもないが、現実にはこんなデータがある。交通事故の件数自体は全体的に順調に下がってきているのに、それに反して高齢者ドライバーによる事故の比率は逆に上がっている。

出典元/警視庁交通総務課統計。高齢運転者とは、原付以上(特殊車を含む)を運転している65歳以上を示す

確かに少子高齢化が進む日本ゆえ、高齢者が増えているのだから高齢者の事故も増えるのは当たり前。そう頭ではわかっても、いざ自分の親が事故を起こした際に「まあ、高齢者が増えているんだからしょうがないよね」なんて言える子どもが果たして何人いるのか。


65歳以上は交通事故で亡くなる率が高い

またこんな怖いデータもある。

出典元/警察庁交通局「平成25年中の交通事故の発生状況」(平成26年2月27日発表)

交通事故で重傷を負ったり死亡する率が高齢者ほど高い、というわけだ。今どきの65歳以上は見た目も気持ち的にも、確かに昔と比べたら若い人が多いけれど、体は間違いなく老化が進んでいる。事故の衝撃に体が耐えられないのは不思議ではない。


運転時の死亡者数は65歳以上がダントツ

さらにこんなデータも。

出典元/内閣府「平成27年版交通安全白書」

車を運転中に交通事故で亡くなる人の、実に43.8%が65歳以上だというのだ。父親のブレーキの遅さを目に浮かべれば、そりゃ確かにそうだろうと思う。とっさの判断が遅れ、脳から筋肉への指示も遅れ、だからブレーキを踏む足も、ハンドルを切る腕も間に合わないとなれば……。


地方で暮らす高齢者は免許証返上がむずかしい!?

かくなる上は猫の首に鈴をつけるがごとく、怒鳴られるのを覚悟の上で「お父上、そろそろ免許の返上を……」などと子どもとしては進言すべきなのだろうか。東京都を管轄する警視庁をはじめ、各自治体の警察でも高齢者の運転免許返上を推奨している。

とはいえ親の住む田舎で車がないのは、自殺行為と言っても過言ではない。何しろ近くにあった商店街は長年どこもシャッターが下ろされたきりだ。せっかく最寄りの駅から徒歩2分という、かつては好立地であったわが家も、今では国道沿いのスーパーまで車でいかないとならない逆郊外と化している。

ちなみに「すぐそこの病院跡にコンビニができたから便利よ」と運転免許のない母親は言うが、かつて私が初めて東京で一人暮らしをした際に「コンビニの弁当じゃなく、ちゃんと自分で作って食べなさい」とコンビニ文化を全力で否定したのは、あなたでしたよね?

自治体によってはタクシーやバスなどの代替交通費の援助制度などもあるようだが、もちろん毎日のスーパー往復費をすべてまかなえる額ではない。バスだって田舎では路線も本数も少なくなっている。

買い物事情だけではない。二人の親は最近車で15分のところでプチ農園を始めた。毎年「今年は何を植えようか」「そろそろ草を刈らないといけないね」などと話をしている。そのついでに近くを30分ほど散歩する。健康的だ。楽しそうだ。その笑顔を見ていると、とても車を手放しなさいなんて、なかなか言えない。

さらに孫も増えた。孫がくれば海へ山へ遊園地へと連れて行きたくなるのが祖父母としての性である。しかし田舎には遊園地の名前がそのままつくような駅などない。すべては車で解決する。


両親には、コンパクトカーを一番に勧めたい

やっぱり車を取り上げることは不可能だ。となれば、あとはせめて安全な車に乗って欲しいというのが子どもの気持ち。そこで参考の一つにしたいのが下記のデータだ。

出典元/公益財団法人交通事故総合分析センター
※小型乗用車はいわゆる5ナンバー車、普通乗用車は3ナンバー車を指す(編集部注)

このデータによれば、軽自動車と比べて小型乗用車(いわゆる5ナンバー車)は約1.6倍、普通乗用車(同3ナンバー車)は約1.9倍「安全」と言える。

例えば大きさの違うビー玉を正面からぶつけるように転がして見ると、大きなほうはあまり跳ね返らないけれど、小さいほうは大きく跳ね返される。これは物理の法則なので、どうしようもない。

車はできるなら大きいほうがいい。とはいえ夫婦2人で動くのが基本だということは念頭に置かねばならない。もし私が親に勧めるなら、軽自動車より安全で、夫婦2人でも大きすぎないコンパクトカーだ。

この夏帰省したら、親には「車、買い替えない?」と勧めてみよう。これなら父親の逆鱗に触れることはないし、「ん? どんなのがいいんだ」「いや、最近の車はね……」などと、私としては話を展開しやすい。かじれるスネがなくなろうとも子どもにとって親はいつまで経っても親。一日でも一秒でも長く一緒に過ごしたいのだから。

今、おすすめのコンパクトカーを紹介