「ル・クルーゼ ワールド」というべき、圧倒的な世界観


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どの分野にもギアフリークがいるが、料理においても例外ではない。男心をくすぐるのは道具の美しさであり、機能性や長年愛用できるライフタイムワランティーにある。

日本に上陸して25周年を迎える「ル・クルーゼ」。今や日本でも、親子二代にわたって使い続けている家庭も少なくない。

家庭用品、キッチン用品市場では、「10年に一度やってくる鍋ブーム」というジンクスがある。80年代が圧力鍋、2000年代がタジン鍋ならば、90年代は圧倒的に「ル・クルーゼ」の鋳物ホーロー鍋だった。

鋳鉄製で重くて高額にもかかわらず、これだけの認知度と価値を高めた背景には、色彩の豊かさに加え、一度手にすれば手放すことのできない愛着が湧いてくるアイテムであるということがいえる。また、ビストロブームの仕掛け人であり、カフェ文化を流行させたフランスのライフスタイルデザイナーのパトリス・ジュリアンが自身のレシピ本で「ル・クルーゼ」を使った料理を立て続けに紹介したことも、全国区の知名度につながったといえる。

昨今競合する「STAUB」「シャスール」、そして「バーミーキュラ」といった鋳物ホーロー鍋も各社それぞれの世界観を見出しているが、日本のライフスタイルにおいて鋳物ホーロー鍋を不可欠とさせた「ル・クルーゼ」の貢献度は計り知れない。

 

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その世界観に惚れ込む“ル・クルーザー”

■独自の熱伝導が生むおいしさ
職業柄、「鋳物ホーロー鍋は、どれがいいですか?」と聞かれる。どれがいいのではなく、どれがもっとも自分のライフスタイルに合っているか、先ずはここから探ると良いでしょう! と答えるのだが、「ル・クルーゼ」しかり、そもそもフランスを代表する鋳物ホーロー鍋は、なぜ鋳物鉄製(キャストアイロン製)である必要があったのか。

ル・クルーゼ社が誕生したのが、今から91年前の1925年。日本は大正14年。日本食が軽くて薄い熱伝導に優れたアルミ製の雪平鍋を使い、まな板で細かく切った食材を短時間で調理するのに対し、フランスの食は、今も昔も重い鋳物鉄製のホーロー鍋に塊の肉をそのまま入れて長時間煮込むのが家庭の味だった。長い時間、天火オーブンだろうが、直火であろうが、耐久性に優れた鋳物ホーロー鍋はビクともしない。

さらに、アルミ製の雪平鍋などと比べれば、鋳物鉄製の鍋は熱の伝わり方がゆっくりなことで味が染み込みやすくなる。一般に加熱しているときに味が染み込むと思いがちだが、実は火を止めて、50度までゆっくりと冷めていく間が一番味が染み込みやすい。

この鉄特有のゆっくりとした熱伝導によって、分厚い肉の塊に対して熱が上下し、柔らかく、味の染み込んだものができるというわけだ。

■各国の食生活に浸透する「ル・クルーゼ」
オレンジ色をアイコンとする「ル・クルーゼ」。色のバリエーションが豊富なのも他社にない特徴だが、鍋を取り巻くガジェット、ツール市場においても、いち早く展開したのが「ル・クルーゼ」だった。

かつてはゴムベラと呼ばれ、お菓子専用のツールだったものを「ル・クルーゼ」の鍋専用のものからキッチンアイテムとして、一般化させたのが「スパチュラ」という名のツールだ。今でこそ、スパチュラという呼び名は珍しくないが、広く普及させるにいたったのは、「ル・クルーゼ」の「スパチュラ」がヒットしたことであり、同社の鍋の最大の特徴であるホーロー加工された内面塗装を調理時に傷つけないために開発された。

鍋同様、カラフルなスパチュラは、瞬く間にヒット商品になったが、その後も「ル・クルーゼ」の鍋を取り巻くガジェット類は、他社を圧倒するほど多種多彩である。日本ですき焼き用の鍋として発売された「ココット・スキヤキ」(現在のココット・ジャポネーズの前身)をはじめ、中華鍋にヒントを得た「ウォク」や、北アフリカのタジン鍋を楽しむ「タジン」……。

フランス生まれながら、変幻自在に姿を変え世界中のキッチンで愛されている「ル・クルーゼ」。それは「ル・クルーゼ ワールド」ともいうべき、世界観で多くのユーザーを虜にしている。

 

フランスのシンボルである雄鶏

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フランスを代表する食材といえば、ウサギ、カタツムリ、牛、そして鶏である。なかでも鶏はフランスという国の文化をも表す存在で、先のラグビーワールドカップやサッカーのフランス代表のユニフォームには雄鶏のエンブレムが施されている。

英語圏ならば「チキン」と揶揄されてもおかしくないが、「ル・クルーゼ」の鍋に代表される楕円型こそ、フランスの食文化を彷彿させるものなのだ。

丸鶏を真上から見れば、形の縁は楕円を描き、この丸鶏をそのまま入れやすい形となっているのが「ル・クルーゼ」の伝統的な形、楕円型の「ココット・オーバル」なのだ。同じく丸鶏を乗せて焼くグラタン皿も同様の理由で楕円型である。この形こそ、フランスの食文化そのものを表すものであり、これこそが「ル・クルーゼ」のアイデンティティーを体現するフォルムでなのである。

 

 

DATA

LE CREUSET┃ココット・オーバル 25cm
サイズ:長径25cmm/高さ(蓋含む)14.5cm
重量:3.7kg
容量:3.2L
カラー:オレンジ、フルーツグリーン、チェリーレッド、ホワイト、マットブラック、シフォンピンク(ル・クルーゼショップ限定)
価格:34,560円

LE CREUSET┃ココット・ロンド 24cm
サイズ:直径24cm/高さ(蓋含む)15cm
重量:4.2kg
容量:4.2L
カラー:オレンジ、フルーツグリーン、チェリーレッド、ホワイト、マットブラック、シフォンピンク(ル・クルーゼショップ限定)、クインスイエロー
価格:39,960円

撮影┃佐坂和也
協力┃ル・クルーゼ ジャポン

荒井康成(あらい・やすなり)氏

荒井康成┃Yasunari Arai

1968年、東京都生まれ。輸入雑貨商社、料理道具メーカーを経て、料理学校の講師やフードスタイリング、料理雑誌での執筆など、料理道具コンサルタントとして活躍。著書に『ずっと使いたい世界の料理道具』(産業編集センター)がある。

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