優れた食材を敬う気持ちは、まな板に表れる


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どの分野にもギアフリークがいるが、料理においても例外ではない。男心をくすぐるのは道具の美しさであり、機能性や長年愛用できるライフタイムワランティーにある。

奈良時代、中国から伝わってきたまな板は、漢字で「真魚板」または、「真菜板」と書く。

「真魚」とは、食材のなかでもっとも上等で優れているという意味があり、海に囲まれた島国日本では、魚を大切にしてきた食文化であるということが、この真魚板という漢字からも汲みとることができる。たとえば、魚貝類などの上等品で、真鯵、真穴子、真昆布など、同じ魚介類でも「真」がついているのは、このためである。

包丁で食材を捌ける者を庖丁人と呼んでいた時代、ご馳走たちはまな板に乗せられ、そのまま食事用の膳としても扱われていたそうだ。

また、まな板を数えるときは、一膳、二膳と数えるのをご存知だろうか。かつて、まな板には脚があり、その名残である。世界の国々を見ても、日本ほどまな板を使う文化は珍しいが、その歴史背景には、日本が長年馴染んできた「床座」スタイルにある。

畳に直に敷いた座布団で寝起きし、丈が低く丸いちゃぶ台で食事し、調理と言えば、かつては板の間に脚の付いたまな板を直に置き、膝をついて前のめりになって食材を切っていた。その姿は歴史資料館でも見ることができ、現代で言うならば、床にアイロン台を置いて、膝をついてアイロンをかけている姿に似ている。

やがて昭和30年代に入ると、立ち作業を主とした欧米スタイルのシステムキッチンがどんどん日本に入り、ライフスタイルの変化とともに、床で直に切るのに適した脚付きまな板も、不向きとなっていった。

現在、まな板には木製のほかにプラスティック製などの素材も目にする。しかし、包丁の刃への負担、食材を切るときの安定感、自然環境のことを考えれば、木製のまな板が優れているということを先ずはお伝えしておこう。

 

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「TOSARYU -土佐龍-」が提案する三種のまな板

■現代の食生活を見直すまな板選び
包丁で言う“三徳”包丁からも分かるように、現在、日本の食生活は魚以外に、肉、野菜を食すが、木でできたまな板であれば、それぞれの食材に適した木があることにも驚く。

高知県名産の「四万十ひのき」をはじめ、桜や銀杏といった土佐の豊かな材木を使用した「TOSARYU -土佐龍-」のまな板。現代のライフスタイルを見つめ直すことから誕生したこの三種の素材を使ったまな板コレクションは、それぞれの木の特性が、どの食材に適しているかを教えてくれる。

■魚、野菜、肉。それぞれに適した素材
肉類の脂肪になじみやすいのは桜の木。抗菌殺菌作用があり、魚に適した桧の木。野菜の切り出しに適したイチョウの木は、軽くて包丁の刃にも優しい。和食洋食、現代の食生活すべてに適応し、忘れかけていたあの木の香りも思い出させてくれるのだ。

まな板に限らず、火をおこしたり、建築に使用されたり、かつて日本の家屋や生活スタイルでは、あらゆるところで木が使われ、木はなくてはならぬほどの存在であった。そしてまた原点回帰ともいうべく、この木の魅力が、まな板でも再認識され始めたのだ。

 

料理を彩る器としてのまな板

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ホームパーティー、ギャザリングにケータリング。食事の演出法や提供法は変わり始めている。かつては、皿ごとに異なる料理を盛りつけていたが、一口サイズのポーションサイズで、アラカルトな食事を提供する、そんなもてなしと演出を可能にしてくれるのが、まな板なのだ。

この場合、まな板と言っても主に食材を切る目的の日本のものとは違い、オリーブの木などから生まれる海外のカッティングボードのことである。

オリーブオイル世界一の生産国・スペイン。「マール・デル・オリーボス」、別名「オリーブの木の海」と呼ばれる、オリーブ畑がはるか遠くまで連なるハエン県に、”ラ・エセンシア”というオリーブ畑がある。

木と対話しながら作るカッティングボードは、自然な曲線を活かし、大胆でのびのびとした風合いが魅力で、日本で発売されるや否や、すぐに売り切れ店が出てしまったほどだ。

前菜サラダ、ニシンの蒸し魚、バゲット、生カキ、野菜のグラタン。特大のカッティングボード一つあれば、これだけの料理を一堂に設えることもでき、かつホスト役としては洗い物も少なく済む。

オリーブの木は、非常に堅いことでも知られているが、使用前後に、オリーブオイルを薄く塗っておくだけで、乾燥も防ぎ、長い間使い続けることができる。たとえ、生魚などニオイの強いものを乗せたとしても、少量の酢を水で溶かしたものをスプレーすれば、消臭と殺菌もしてくれる。

日本のまな板、海外のカッティングボード。木のまな板は包丁の刃、食材、そして地球に優しい。優れた食材を敬う気持ちは、まな板に表れると言ってもよいだろう。

 

 

DATA

土佐龍┃四万十の森 天然木三種まな板セット
サイズ:270×170×15mm
原材料:四万十ひのき100%
価格:9,180円

ザッカワークス┃エルアルテ デルオリヴォ オリーブボード エクストララージ
価格:19,440円

撮影┃佐坂和也
協力┃土佐龍

荒井康成(あらい・やすなり)氏

荒井康成┃Yasunari Arai

1968年、東京都生まれ。輸入雑貨商社、料理道具メーカーを経て、料理学校の講師やフードスタイリング、料理雑誌での執筆など、料理道具コンサルタントとして活躍。著書に『ずっと使いたい世界の料理道具』(産業編集センター)がある。

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