雑貨

ガイド:江沢 香織

プロのナビゲートで、あなたにぴったりの雑貨や雑貨ショップを探してみませんか?

取材依頼 問合せ

 

掲載日: 2004年 07月 02日

切子作家・吉田順子さんのうつわ



切子のうつわ
繊細なすうっと細い線。
凛とした色艶を感じるクローバーの葉と花。


夏になると食卓はもっぱらガラスの出番が多くなる。 おそばに冷奴、ちょっとしたお漬物でも、ぽんとガラスのうつわに盛れば、 この季節はそれなりにサマになる。ムシムシじっとりと暑い日本の夏に、 見た目に少しでも、爽やかでひんやりとした印象を与える心遣い。 ガラスで涼をとる感覚はもしや、日本ならではのものなのかもしれない。

ふとしたことから吉田順子さんの作品に出会う。 切子と聞いたが、自分の今までイメージしていたものとは違う。 縦横に細かく線が入り、その無数に連なる線が重厚で豪華な模様を織り成す、従来の切子ではない。そっけないほどあっさりしているが、 凛とした余白のある、切れの良いデザイン。和とも洋ともつかない、 程良いニュートラルさに品を感じる作品だった。
美大でグラフィックデザインを学んでいた吉田さんは、 日本の伝統工芸である江戸切子の面白さに惹かれて工房へ。2000年に独立。 現在は江戸切子の技術をもって独自のデザインで作品を作り上げる。

うすはりグラス モダンな印象のグラス
左のグラスはうすはりグラスといってとっても薄いのだけど、
工程がしっかりした丈夫な素材なのでカットが可能なのだとか。

吉田さんのアトリエを訪れた。ガラスを使う工房と聞くと、 ちょっと荒くれた危なっかしい印象を勝手に抱いていたが、 実際はこじんまりと整ったきれいな部屋だった。 そして無駄が無い。 一見何に使うか分からない道具たちにも、これでないとダメ、というくらいそれぞれしっかりとした役割がある。 ガラスを切るときは、細く水を流しながら行うのだが、何気なく置かれているくったりと使い込まれたスポンジは、このこなれ具合が絶妙な加減で水分を吸い取る。一緒に置かれたどっしりと分厚い鉄板は、まるで工事現場にでも落ちていそうなカケラだが、スポンジをあてがって微妙な水分調節を行うのに欠かせない。全てが合理的で必要最低限な道具なのである。

ラインを引く道具 切る前のグラスたち
型紙いろいろ
左上は割り出し機といって、板に手を固定して下書き用の線を引く。
右上は線を引かれてカットを待つグラスたち。
下はイレギュラーな模様のための手作りの型紙。

ガラスをカットするための下書きとして、まずうつわにマジックペンで線を引く。江戸切子の場合、線を網目のように絡ませたデザインがほとんどなので、 この線に沿ってガラスをカットする。 工房で修行していた頃は、受注が多いと一週間ぶっ続けで線引き作業を行うこともあったという。 写真にある割り出し機は、線を引くための機械なのだが、 オーダーメイドで吉田さんの使い勝手がいいように作られている。 しかし吉田さんの作品は線だけでなく、円や花、動物など、 イラスト的な模様を入れることもあるので、その場合は別に型紙を自分で作っている。 グラスの内側にぴったり入るように立体的な型紙を作り、外側から模様の下書きを描く。

そしてガラスのカットは下の写真にあるグラインダーで行っている。 グラインダーとは円盤状の刃で、これをモーターに取り付け、電源を入れると高速で回転する。 そこにガラスを押し当てて線を彫る。 グラインダーには人工ダイヤモンドが入っているものもあって、 面が鋭角なものやRがかったものなど、微妙な形の違いによって切れ目がまったく変わる。 吉田さんの部屋にはたくさんの種類のグラインダーが、棚にずらりと並んでいる。 素人目にみると、何が違うんだかぜんぜん分からないのだが、 吉田さんはどれを使うとどんな切れ方をするか、最初から頭に入っている。

グラインダー グラインダー
グラインダー
左上はモーターにセットされたグラインダー。
右上と下はいろんな大きさや素材のグラインダー。これを回転させてカットする。

吉田さんがカットの仕方を実演で教えてくれた。 ぎゅんぎゅんと回るグラインダーにリズムを合わせるように、 すうっとガラスの肌をなでると、あっという間にきれいな線が付く。 くりくりっと左右に動かすと、今度はまあるい円になる。 顕微鏡にでも向かっているような小さな空間。微妙な当て具合で、自在に模様付けをする。 何気なくやっているけれど、この手加減はそうそう簡単に習得できるものではない。 丁寧で慎重ですばやい手さばきは、長年の経験から体に染み付いた勘なのである。職人の技術とアーティストのセンス。 目の前で見ていると、まるでマジックのようである。

見本いろいろ
箱に入っていた今までの作品見本を見せてもらった。きれい・・・

吉田さんの技術は江戸切子から習得したものだが、彼女の作品は 江戸切子ではない。伝統を引き継ぐ職人は、血縁関係などで代々継がれて いくことが多いので、自分は自分にしかできないことをやってみたいと思ったのだそう。一流レストランで料理長をやるより、小さくても自分でビストロを開くような感じだとか。しかも吉田さんは今のところ、自分から売り込みはしていない。偶然の幸せな出会いはあったが、でもそれは偶然ではないと感じている。分かってくれる人がいるのはありがたいことで、それを信じることができるのは、吉田さんが実はきちんと実を結ぶための種を蒔いていたからなんだと思う。

切子作品


吉田さんの個展が開催されます。

吉田順子
KIRICO-KILICO
切子のうつわ展

2004年7月16日(金)〜7月24日(土)
12:00〜20:00(最終日〜18:00) 会期中無休

作家在廊日 7月17日(土)18日(日)19日(月・祝)

草so
東京都渋谷区渋谷2-3-4 スタービル青山2F
tel 03-5778-6558
http://www.so-kurashi.com

関連用語: 伝統工芸士 / 

ガイドメールマガジン
携帯電話のメールアドレスでは登録できません

掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。