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「その道のプロ」のルーツを探る ガイドの原点−origin-

vol.066

好きなものをとことん調べ、掘り下げる。
発見の面白さを伝える
「音楽発掘家」でありたい

テクノポップガイドの四方さんは、All Aboutのサービス発足当時からガイドを務め、今年で15年目。その記事は、アルバムレビューからジャンル解説、アーティストインタビューまで多岐にわたる。未来への憧れと懐かしさが同居する、レトロフューチャーなテクノポップの世界。その魅力を語ってもらった。

「テクノポップ」ガイド 四方 宏明

文/加藤朋実 写真/平林直己

テクノポップのコンセプトは「近未来感」

1979年に結成された日本のテクノポップユニット「FILMS」。まるで宇宙服のようなマスクにテレビ電話の曲と、「近未来感」でいっぱいだ。

1979年に結成された日本のテクノポップユニット「FILMS」。まるで宇宙服のようなマスクにテレビ電話の曲と、「近未来感」でいっぱいだ。

ピコピコと混ざり合う電子音に、リズミカルで耳に残るキャッチーなメロディー。70年代末〜80年代にかけて一世を風靡したテクノポップは、現在も熱烈なファンが多い。
しかし、シンセサイザーやリズムマシンを用いること自体がまだ珍しかった当時とは違い、今や電子音や打ち込みを使った楽曲は巷にあふれている。では、それらとテクノポップとの違いとは何なのだろうか。

テクノポップガイドの四方さんは、それを「近未来感」だと語る。
「近未来感っていうのは、何となく懐かしい未来像なんですよ。ある時点の人々が想像した未来世界というか。そういった世界観が、音楽やビジュアルになっているのがテクノポップ。実際にそれが起こるか起こらないか、というのは、全く別次元の話ですね」

テレビ電話にスマートフォン、電気自動車、宇宙旅行……おそらく80年代に想像されていたであろう未来像は、21世紀の今、続々と現実のものになっている。でも、四方さんはこう言って笑う。
「たぶん今僕たちが感じる近未来も、80年代やもっと以前に、人々が『未来ってこうなんじゃないか』って思ったものが続いているような気がするんですよ」

突如やってきたテクノポップとの出合い

1980年に双葉社から出版された『テクノ・ボーイ』。当時のテクノポップ系アーティストが網羅されている。アートワークにも独特の世界観が。

1980年に双葉社から出版された『テクノ・ボーイ』。当時のテクノポップ系アーティストが網羅されている。アートワークにも独特の世界観が。

四方さんとテクノポップの出合いは、70年代末に遡る。
ビートルズや鉄腕アトムが好きな「ごくごく普通の少年時代」。音楽を聴くことも好きだったが、ただ楽曲を聴くだけでなく、そのアーティストのルーツや周辺を調べるのが楽しかったという。

「たとえばビートルズなら、メンバーのソロやプロデュース活動、他のアーティストへの楽曲提供や、海外版のアルバムなど……そんな周辺のことを調べるのも好きでした」

欲しい情報がインターネットですぐに手に入る現在とは違い、その頃、新しい音楽を知るための方法は限られていた。音楽雑誌か、ラジオか、輸入レコード店に足を運ぶか、友人からの紹介か。70年代終盤、そうやって張っていたアンテナに「面白そう」と引っかかったのが、テクノポップだった。

当時のことを、四方さんは「すべてが同時多発的にやってきた感じ」と振り返る。YMO、クラフトワーク、バグルス、等々。その近未来的な音とビジュアルに四方少年の心は魅了された。もともとロボットや宇宙が好きだったこともあり、彼らのアートワークもドンピシャに響いたのだ。

さらに拍車をかけたのが、1980年に出版された『テクノ・ボーイ』という本との出合い。まるで世界のテクノ図鑑のようで、そのデザイン性の高さにも衝撃を受けた。元来の“調べ癖”がムクムクとわきあがり、好きなアーティストの周辺、似たイメージの楽曲……と、どんどん範囲を広げ、レコードを集めていった。

好きなことで人と繋がる楽しさ

時代は進み、インターネットが徐々に普及し始めた90年代半ば、四方さんは一つのサイトを立ち上げる。All Aboutガイドを務めるきっかけにもなった「POP ACADEMY」だ。

「もともとMacintosh愛好家だったので、自分でも何かサイトを作ってみようと思ったんです。当時はまだありませんでしたが、今でいうWikipediaのテクノポップ版みたいなものを作りたいな、と」

「POP ACADEMY」には、それまで集めた膨大なレコードやCDの情報や、アーティスト、ジャンルなどについて載せていった。そうやってサイトを作っているうちに、当初の目的とはまた違った楽しみが生まれたのだという。

「海外も含めてサイトを見た人たちが、書いてあることについていろいろ意見をくれるようになったんです。たとえば、このアーティストは他にもこんなことをやっているよ、とか、このレコードを知っていますか、とか。そういう僕が知らなかった新しい情報を教えてくれる人が増えてきて、どんどん面白くなっていきました」

このサイトが当時サービス準備段階だったAll Aboutのプロデューサーの目にとまり、ガイドをやってもらえないかとのアプローチが来る。

実は当初、All Aboutが募集していたのは「テクノ」のガイドだった。四方さんがガイドを務めるにあたり、それを「テクノポップ」に変更してもらったという経緯がある。

穏やかな笑顔で、時にユーモアを交えながら話す。「今も、SNSなどの繋がりから情報をもらうことも多いですね」

穏やかな笑顔で、時にユーモアを交えながら話す。「今も、SNSなどの繋がりから情報をもらうことも多いですね」

「僕がガイドを始めた2001年頃は、テクノというのはクラブミュージックの延長線上のもの、という捉え方が主流だったんですよ。テクノとテクノポップは繋がっていて、テクノにも好きなのはあるけれど、自分が得意なのは近未来感のあるテクノポップじゃないかと。テクノ=クラブミュージックだと思って僕の記事を読んだ人が、ガッカリするといけないなぁと思って(笑)」

2001年から始めたガイドも今年で15年目。執筆した記事は700本を超える。

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