Human dept. スゴイ人、そろってます。

「その道のプロ」のルーツを探る ガイドの原点−origin-

vol.065

絵本は子どもの心の栄養。
大人もいっしょに関わって
豊かな読書経験を与えたい

普通の専業主婦だった大橋さんが、絵本専門通販店を始め、All Aboutガイドへ。その原動力はなにか。絵本の楽しさを、そして子どもと絵本を読む幸せを、子どもたちの親へ、祖父母へ伝えたい。大橋さんは淡々と、しかし尽きることのない絵本への思いを語ってくれた。

「絵本」ガイド 大橋 悦子

文/宗像陽子 写真/須藤明子

絵本を読んでもらった記憶はないけれど…

「今の仕事に影響を与えたのはソニーかもしれません。仕事のイロハを叩き込んでくれました。失敗を恐れず面白いことをみつけてやっていきたいですね」

「今の仕事に影響を与えたのはソニーかもしれません。仕事のイロハを叩き込んでくれました。失敗を恐れず面白いことをみつけてやっていきたいですね」

浅草の草履職人の家に生まれた大橋さんは、親から絵本を読んでもらった記憶はついぞない。
「だって、暗くなる前に家に帰ると『もっと遊んでこい!』と怒られるような家だったんですよ」と笑う大橋さん。とても気さくで明るく、初めて会った人でもほっと安心できるような雰囲気を醸し出している。

転職を経て株式会社ソニーに勤務した後結婚し、出産を機に退職。以降は専業主婦として家庭を守る。と同時に川崎市婦人消防隊長として地域の防災活動や子どもの問題を専門に扱う民生委員である主任児童委員などを引受、子育て支援にあたってきた。

子どもの手が離れ、もう一度社会へ出ようと思った矢先に介護問題が生じ、なかなか仕事に復帰することは叶わなかった。こうしてみると、大橋さんの半生は、昭和を生きる女性の典型的なそれだったことが分かる。けれども、世の中の多くの女性のようにそのままでは終わらなかった。

絵本専門通販店を創業

古物商許可証も取得し、晴れて絵本専門通販店主となる

古物商許可証も取得し、晴れて絵本専門通販店主となる

「自分の名前を呼ばれることもなく、このままおばあちゃんになって終わるのか」。
介護が終わってから再就職はできるのだろうか。10年後の社会復帰は、自分の年齢を考えればもうむずかしいだろうと考えたとき
「収入にならなくてもいい。大橋悦子として責任のある仕事をしたいと思いました」と大橋さん。

「なにか今の自分にヒントがもらえないだろうか」。そんな気持ちで行ったハローワークで見つけたのは「産業能率大学で開催されるベンチャー企業幹部養成講座開講のお知らせ」だった。

3ヶ月半の講座を受講、自分は何をしたいのかを掘り下げ、思いをカタチにしていく方法を学んでいく。講座に参加したことは、内容が濃密だったことに加え、年齢層もバックグラウンドも多種多彩な人たちが集まっており、非常に楽しく有意義なものとなった。

この経験を経て、当時はまだ少なかった絵本専門の通販店を創業することを決意。それが、子どもを3人育てる中で絵本の魅力を知った大橋さんが選んだ道だった。

道が定まれば迷いはない。2006年に「おひさま堂」を創業、その後JPIC読書アドバイザーの資格をとる。

よくめぐり合うサイトAll About

「おひさま堂」ではご主人が29種類生豆を焙煎。焙煎する15分ほどの間にあらかじめ焙煎してあるコーヒーでおもてなし。店内で絵本をゆっくり楽しめる

「おひさま堂」ではご主人が29種類生豆を焙煎。焙煎する15分ほどの間にあらかじめ焙煎してあるコーヒーでおもてなし。店内で絵本をゆっくり楽しめる

そのころ本のことや日常のことをネットで調べると必ず検索の上位に挙がってくるサイトがあり、それがAll Aboutだった。メルマガ登録をしてほどなく、絵本のガイドを募集していることを知り応募、絵本ガイドの大橋さんが誕生した。

以来10年近く絵本に携わり、昨年には念願の「おひさま堂」の実店舗も出すこともできた。
那須高原の「おひさま堂」は、ご主人のコーヒー焙煎店とともに安らぎの場を地域に提供している。

絵本は、いっしょに読んでこそ価値がある

最近は、絵本が幅広い年齢層に読まれるようになってきたと思う一方で、心配な場面に遭遇することも多い。
子どもに本を読んでとせがまれて「ああ、それなら今度読み聞かせの会で読んでもらいなさい」という親。
「その本は読んだでしょう?違う本にしなさい」という大人。

福音館の月刊雑誌「こどものとも」「たくさんのふしぎ」。大橋さん親子がお世話になった名作がいっぱい

福音館の月刊雑誌「こどものとも」「たくさんのふしぎ」。大橋さん親子がお世話になった名作がいっぱい

「もう、字を覚えたんだからひとりで読めるでしょう?」と読み聞かせを放棄する親。
そんな光景を見るにつけ悲しくなってしまうと、大橋さんは顔を曇らせる。

「絵本と本の違い、わかりますか?」と大橋さん。
本は読んでいる人と楽しむ人は同一だが、絵本は、違う。絵本は誰かに読んでもらうことを前提で作られている。読んでくれる「人」がとても大きなファクターになる。
「絵本を読み聞かせていれば本が好きになるとか学力がつくとか、そういう幻想を抱いている方が多いのですけれど、それはちょっと違います。
大好きな人といっしょに読む。その人のお膝のぬくもりを感じながら読む。お母さんといっしょに読んだあのシーンがおもしろかったなと子どもたちの心の中に残る。それが大切なことなんですよ」と大橋さんはいう。

読み聞かせを生活の一部にして欲しい

仕事のオン・オフを切り替えるアイテムは不思議な国のアリスのペンダントとイヤリング。仕事のときには着けて、オンモードに

仕事のオン・オフを切り替えるアイテムは不思議な国のアリスのペンダントとイヤリング。仕事のときには着けて、オンモードにのふしぎ」。大橋さん親子がお世話になった名作がいっぱい

「みんなで集まって聞くお話会は、たとえていうなら『今日は綺麗なお洋服を来てお出かけして外食よ』というのと同じ。
そんな日があってもいいけれど、毎日のお母さんのふつうの手作りのご飯も大切でしょう?それがお膝の上で読んであげる家庭の読み聞かせです。ぜひ、そんなふうにして絵本と付き合って欲しいのです」

読書推進運動といえば、お話会など子どもに直接働きかけるものが盛んだが、親にこそもっと働きかける必要があるのではないか。大橋さんはそう考え、All Aboutを通じて親や祖父母に向け情報発信を続けている。

  • 1
  • 2

Next

Info

All About Human dept.とは、「人」にフォーカスし、人間が持つおもしろさを追求するウェブメディアです。様々な分野から、自分のスタイルを持ち、第一線で活躍している「その道のプロ」たちをご紹介します。