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「その道のプロ」のルーツを探る ガイドの原点−origin-

vol.063

「安全で、環境にやさしいクルマ」
という理想を求めつつ、
一人ひとりに最適な一台を紹介したい

クルマを購入しようとする人は、一度は国沢さんの記事を読んだことがあるのではないだろうか。自動車評論家として長く活躍、メーカーに対しては叱咤激励で奮起を促し、読者に対してはわかりやすい解説でその人にとって最適な車の購入ができるよう導く。そんなクルマに対する強い思い入れは、どこにあるのか伺ってきた。

「車」ガイド 国沢 光宏

文/宗像陽子 写真/須藤明子

徳大寺有恒氏に師事

バイクも大好き。自宅ガレージはホンダCB750エアラ、ホンダCBX1000、ヤマハRZV500、ハーレーダビットソンとお宝の山。

バイクも大好き。自宅ガレージはホンダCB750エアラ、ホンダCBX1000、ヤマハRZV500、ハーレーダビットソンとお宝の山。

「クルマ?そうだなあ。いつから好きになったのかなあ」
遠くを見つめるように腕を組み考え込む、車ガイドの国沢さん。がっしりと胸幅は厚く、背は高く足は長い。

学生時代バイク雑誌の会社にアルバイトで入ったことが、そもそもこの道に入るきっかけである。
大学4年になったときに、ある出版社の新雑誌の創刊に伴い「クルマの試乗レポートを書かないか」と声をかけられる。試乗レポートといっても、22歳の若造の書く記事などほとんど相手にされない世界。

そこで編集長は、知人であった徳大寺有恒氏に若き国沢さんの記事の監修を依頼してくれた。このとき、国沢さんの運命の歯車は、ゴロンと大きく回ったのだろう。

徳大寺有恒氏といえば、元レーシングドライバーにして自動車評論家。その歯に衣を着せない自由闊達な筆致で書いた「間違いだらけのクルマ選び」は、当時ベストセラーになった。

徳大寺有恒氏に出会い、影響を受けたことは国沢さんの大きな財産となる。
「視点がいいな、好きに書いてみればいい」
「文章の内容がおもしろい。このままクルマの批評を書く道にすすめばいい」
そう言われ、自動車評論家として道を歩むことになる。その後も徳大寺氏とは長く付き合い、娘さんの名付け親にまでなってもらったとか。「徳大寺さんと密着して仕事ができたのは幸せだった」と国沢さんは感じている。

ジャーナリズムの基本を先達に学ぶ

「自分が育てられたように、若い人も育てなければね。二人くらい育てれば責任を果たせるかな」。現在弟子育成中

「自分が育てられたように、若い人も育てなければね。二人くらい育てれば責任を果たせるかな」。現在弟子育成中

自動車評論家というのは、むずかしい。誰でも試乗ができるわけではない。実績がなければメーカーも試乗車など貸してくれない。読者の目も厳しい。
「実績のない批評家など、クルマについてほめても『知らないくせに』と言われ、批判しても『知らないくせに』と相手にされない世界です」と国沢さん。

けれども若ければ実績がないのは当然のこと。幸い国沢さんは、徳大寺氏という大きな後ろ盾があって、実績を積むことができた。最初は徳大寺氏の背中を見ながら、そして徐々に国沢カラーを出しながら、評論家として成長していく。

一方、クルマ以外のジャーナリズムについては、大森実さんに学ぶこととなる。大森さんは、ベトナム戦争の取材などで知られた気骨のあるジャーナリストだ。国沢さんが出会ったころは毎日新聞社を退社して、アメリカで暮らしていた。

当時国沢さんは、年に数回取材でアメリカに行っており、その都度大森さんを訪ね、ジャーナリストとしての基本を多く教わったという。
「大森さんは、『物事は一方からではなく、さまざまな側面から見なさい』とアドバイスをしてくれましたねえ」
国沢さんは素晴らしき先達から教わった「多方面から物事を見極め、真実を伝える。権力におもねらない。いつも真剣勝負」といった心構え、ジャーナリストとしての基本は、今もその記事作りの根幹をなしている。

「まだ買うな」は「時期が来たら買え」

それにしても国沢さんの記事は一見過激にみえる。
「不満!」とか「まだ買いではない」などといった言葉も並んで、メーカーからクレームは入らないのか少々心配になる。
「文句なんて、言われないですよ。メーカーの顔色を伺って書いていたら意味がないでしょう。『この姿勢を貫かなければ仕事がなくなる』くらいの覚悟がないと、書いている意味はないんです」とピシリ。

各メーカーと自動車評論家の関係について伺うと
「真剣勝負なんですよ。メーカーも、ジャーナリスト側も。クルマって命かかっていますからね。楽しいという観点だけでは書けないまじめな分野なんです」
国沢さんはさらに言う。

「もし、僕が書いていることでなにかメーカーに文句を言われるとしたらそれは僕の実力がないということですね」

「もし、僕が書いていることでなにかメーカーに文句を言われるとしたらそれは僕の実力がないということですね」

「高速道路を走っているときのクルマは、わずかハガキ4枚ほどの面積しか地面に接していない。ちょっとしたアクシデントが、死に直結します。当然、運転者が加害者になることもありますね。クルマは人間が扱っているもののなかで一番危ないものではないでしょうか」

一方、クルマの購入を考える読者もまた真剣だ。クルマは人が一生で買うものの中で、家の次に高いもの。家を買わない人にとっては一番高価なものかもしれない。
一生のうち、4、5回しか買わないものをガイドするわけだから真剣に書かなければと、国沢さんは言う。

「まだ買うべきではない」といった書き方も、「現在はまだ揃うべきスペックが揃っていない。必ず将来は揃うだろう」という見込みがあっての「今、買うべきではない」なのだ。
メーカーにはよりよいクルマを作って欲しい、ユーザーにはそれぞれその時々に自分に合った一番いいものを買ってほしい、業界全体がよりよくなってほしい。そんな思いで国沢さんは辛口直球ストレートの記事を、痛快に書き続ける。

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