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「その道のプロ」のルーツを探る ガイドの原点−origin-

vol.059

女性にこそ、楽しんでほしい。
じっくり味わうモノ創りと
上質な趣味の世界「盆栽」

盆栽といえば「おじいちゃんの趣味」?いえいえ、今や「盆栽」は、おしゃれでかわいくて上質なものを好む女性達をとりこにする趣味になりつつある。そのブームの火付け役ともいうべきなのが「盆栽ガイド」の山田さんだ。盆栽の魅力をもっと女性や若年層にも広げようと活動をしている山田さんに、その魅力と原点を伺った。

「盆栽」ガイド 山田 香織

文/宗像陽子 写真/須藤明子

もともと盆栽は男社会。女性でありながら清香園の家業を継いだ山田さんは、女性である弱みを強みに変えて、盆栽ファンを増やしている

もともと盆栽は男社会。女性でありながら清香園の家業を継いだ山田さんは、女性である弱みを強みに変えて、盆栽ファンを増やしている

盆栽の街に生きる

埼玉県大宮からほど近いJR土呂駅に降り立ち、「盆栽清香園」を目指す。このあたりの住所は「盆栽町」。道沿いに「盆栽レストラン」、「盆栽美術館」、住宅街のそこかしこには盆栽が飾られ、一種独特の雰囲気を持つ街だ。

聞けば、江戸時代から江戸の街に住んていた盆栽職人たちは、関東大震災を機にこの地に移住したそうだ。そのとき移住した職人たちの中に、山田さんのご先祖はいる。

山田さんは、盆栽町に居を構える「盆栽清香園」5代目なのだ。

今や「盆栽清香園」の後継者として、また数少ない女性盆栽士として活躍中の山田さんは、小さい頃から盆栽園の跡取りとして期待され、帝王学を学んできた。しかし進路に悩みがなかったわけではない。



家業を継いだ年から世話をしている山田さんの宝物「心友(しんゆう)」という銘のヒメシャラの盆栽。次男を産んだ年には初めて2輪の花をつけた。「『この人、わかってくれているのね』という気持ちでした」

家業を継いだ年から世話をしている山田さんの宝物「心友(しんゆう)」という銘のヒメシャラの盆栽。次男を産んだ年には初めて2輪の花をつけた。「『この人、わかってくれているのね』という気持ちでした」

「中学から大学4年までの10年間は、自分にはこの道しかないのかと悩みました」という山田さん。両親や周りからの無言のプレッシャー、自分には他にもできることがあるのではないかという焦りなどから、さまざまな職種に就職活動をしたところ、ある会社から内定を得ることができた。

そのときようやく自分自身とじっくり向き合い「この会社と、清香園とどちらがより自分を活かし、自分は社会に貢献できるのか」と真剣に考えたという。環境、経験、適性、使命感、やりがい。将来の自分のイメージまで丹念に検証し、ようやく出した答えは
「自分は盆栽のナビゲーターとして、もっと盆栽人口の裾野を広げていくことを使命として、コツコツとやりがいを持っていこう」だった。

「盆栽清香園」を継ぐと決心してからの山田さんに、もう迷いはなかった。

なぜ盆栽の世界は、男性のものなのか

「実は盆栽の世界は男性社会なんです」と山田さん。盆栽の世話は、大きな鉢をひんぱんに移動したり、夏の日差しの強いでも外で仕事をしなければならない。男性の力が不可欠で、盆栽の業界に女性はほとんどいなかった。そのために、盆栽の世界そのものに「女性の視点」が欠けてしまったのではないかと山田さんは言う。

山田さんは跡を継いでからというもの、次々と斬新なアイデアを出して盆栽ファンの裾野を広げる活動を広げている。それは「女性である弱み」を「女性である強み」に変換できないかと考えたからでもあった。

かわいらしい花をたくさん咲かせる盆栽。初心者向けクラスでつぼみの多い鉢を渡し、植え付け方法を教えるのですぐ花を楽しめる。剪定の時期とやり方を間違えなければ、2年目でもきちんと咲く

かわいらしい花をたくさん咲かせる盆栽。初心者向けクラスでつぼみの多い鉢を渡し、植え付け方法を教えるのですぐ花を楽しめる。剪定の時期とやり方を間違えなければ、2年目でもきちんと咲く

なぜ、盆栽はこんなに楽しくてすてきなのに、「おじいちゃんの趣味」的なイメージなのだろう。
なぜ「盆栽」はこんなに値段が高いのだろう。
なぜ生花教室はたくさんあるのに、女性向けの盆栽教室はないのだろう。

女性の視点から感じる「なぜ?」をひとつずつ具体的なアイデアに変えていく。

「もっと気軽に参加できる盆栽教室を作ってみては」
「通信教育で盆栽を教える教材があってもいい」
「女性はかわいいものやきれいなものが大好きなのだから、鉢にもこだわってきれいなものを出してみてはどうかしら?」
「小さくてもかわいらしい花が咲く盆栽は、女性にも受け入れられるのでは?」
「基本の植え付けと剪定のコツを教えれば、誰でも教室に来やすいはず」

そんなアイデアをもとに山田さんは今、彩花盆栽教室を主宰し、おしゃれでかわいい盆栽を楽しむ人を増やしている。(当初はかわいらしい盆栽を好む女性も2〜3年たつと古風な盆栽の世界にも惹かれていくそうだ)

さらに若年層にも広めるために、母校の小学校で5年生に盆栽を教えている。このボランティア活動はすでに始めて10年になり、一期生の子どもたちは、来年成人式を迎える。

ユーザーからガイドへ

山田さんは、2000年になる前にAll Aboutガイドに応募したことがある。当時のAll Aboutは「一分野一ガイド制」。その時は結果的には縁がなかったものの、その道のトップの専門家がきちんとした知見をもとに情報を発信するというAll Aboutは、ネットの付加価値を最大限に高める会社だと山田さんは感じた。

その後結婚、妊娠、出産と続き新しい環境でなにかにつけ調べごとをするときに役立ったのはAll Aboutだった。「All Aboutから得た信頼のおけるアドバイスを実生活に生かすというのがとても便利で、本当にたよりになる存在でした」

ユーザーとして関わって数年たった2013年のこと、All Aboutから声がかかり「盆栽」ガイドとしてデビューすることとなった。

盆栽の手入れのための道具。根や太い枝を切るはさみ、細い枝を切るはさみ、針金を切るはさみ、針金をねじるためのやっとこ。土をならすコテ、掃除用のシュロなど用途によって様々

盆栽の手入れのための道具。根や太い枝を切るはさみ、細い枝を切るはさみ、針金を切るはさみ、針金をねじるためのやっとこ。土をならすコテ、掃除用のシュロなど用途によって様々

数年の間に「盆栽師」としての実力も上がっていた山田さんは「自分がお世話になったように、誰かの役に立てれば。一人でも多くの人に盆栽の世界に興味をもってもらいたい」という思いで、満を持してガイドを引き受ける。

記事を書く際には、できるだけ画像を多く使う。「盆栽は立体物なので、口や文章だけで説明してもなかなかわかりにくい。ひとつひとつ木の形から枝ぶりまで違いますから、画像を多くして、ていねいに伝えたいと思っています。『手間はかかっても、まるでペットのように長い付き合いができる盆栽の世界に一歩踏み出してみて』と伝えたいですね」

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