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「その道のプロ」のルーツを探る ガイドの原点−origin-

vol.051

経済的理由で進学をあきらめるのはもったいない。
奨学金のメリットとリスクを伝えて、
進学したい子の背中を押してあげたい

今や大学生の半数以上の人が利用している様々な奨学金。昔の「ものすごく優秀なほんの一握りの人だけもらえるもの」というものとは様変わりしているよう。久米さんはなぜ、「奨学金」に焦点を当てたのか。「奨学金」ガイドの久米さんのガイドの原点とは。

「大学生の奨学金」ガイド 久米 忠史

文/宗像陽子 写真/須藤明子

講演で使っているレーザーポインター。かれこれ9年ほど使っている「相棒」のような存在

講演で使っているレーザーポインター。かれこれ9年ほど使っている「相棒」のような存在

奨学金のリスク

奨学金は、メリットが多くある一方でリスクもある。未成年である子どもが何百万円もの金銭消費貸借契約を結ぶのと同じであるにもかかわらず、親子でよく仕組みがわかっていなかったりすることや滞納が続けば法的措置が取られてしまうことなど。

たとえ大学を中退しても、貸与奨学金の場合の返済が免除されるわけではない。大学をやめても奨学金の返済はスタートし、滞納が連続3ヵ月続けばいわゆるブラックリストにも載る。ブラックリストに載れば、将来車や家を買うときのローンを組めなくなることもあり得る。

また、返済が苦しくなった場合の対応策として、返済猶予制度が設けられているにも関わらず、それらの情報を理解しないまま負のスパイラルに陥る例も少なくないという。

アメリカでは奨学金や学生ローンなど各種制度と学生を結びつけるNPOなどが充実し、そういった情報を提供する機関が整っているが、日本にはほとんどないと言っていい。当事者(または高校の教師)が書類をそろえることで精いっぱいになってしまい、リスク対策が置き去りになっている。

「ルポ貧困大国アメリカ」堤未果著(左)は先進国と言われるアメリカの影の部分をあぶりだす。「進学格差」小林雅之著。著者は奨学金問題の第1人者。どちらも何度も読み直している愛読書

「ルポ貧困大国アメリカ」堤未果著(左)は先進国と言われるアメリカの影の部分をあぶりだす。「進学格差」小林雅之著。著者は奨学金問題の第1人者。どちらも何度も読み直している愛読書

だからこそ、正しい情報をきちんと発信する役割が自分にあると久米さんは感じるようになっていく。
2005年から奨学金アドバイザーとして進学費用対策の講演会を行うようになり、2010年にはイベント会社の経営の一線から引き、保護者目線に立った奨学金情報提供に徹して活動している。

「保護者の皆さんも知らないことが多いんです。でも、それは恥ずかしいことではなくて、昔とシステムが変わってきているから、親も知らなくて当然。だから講演会では『知らなくて当然やで』としゃべり方もラフな感じで、語りかけるように話しています」

講演会は一般論を話すけれども、聞いている人たちの事情は千差万別。そのため、土日は無料で個別相談会をやることも。そういった個別相談会を通じて、大学と個人、大学と高校を結ぶパイプ役となり、次第に「奨学金のプロ」として知られる存在となっていった。

「どんな子どもにも教育のチャンスを与えてやりたいんですわ」

「どんな子どもにも教育のチャンスを与えてやりたいんですわ」

熱い人間性「子どもに罪はない」

「子どもに罪はないんです」そんな言葉がインタビュー中に何度も出た。
経済的に厳しいからといって、進学したい気持ちをあきらめてほしくない。
そんな熱い気持ちはどこから来たのだろうか。

久米さんが会社に勤めていた頃、北朝鮮の子どもたちの実情を知る機会があった。

自分たちは飽食の時代の子と言われ甘えた世代なのに、わずか数百キロ隣の国で辛い思いをしている子がたくさんいることを知り、久米さんは月々少しずつの寄付を続けていた。子どもたちとの手紙のやり取りもあったという。

「本当は、北朝鮮の子でも引き取れる施設でも作りたいところやったけど、力もなくてそこまでできません」
だから、せめて国内で、経済の問題故に進学をあきらめている子がいれば、「それは違うよ、行けるんだよ」と背中を押してやりたいのだと言う。

インタビュー中、北朝鮮の子どもたちの話になると、時々感極まってウッと涙目になってしまう久米さんは、いまどき珍しいほどの情にもろい熱血漢なのだった。

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