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「その道のプロ」のルーツを探る ガイドの原点−origin-

vol.042

モノを減らして暮らしをシンプルに。大切なものが見えてくる、とっておきの方法を教えます

家の中にモノがあふれて息苦しい。シンプルに暮らしたいけれど継続しない。そんな人にとって金子さんの記事は、生活感あふれリアリティがあると大人気。「シンプルライフが生き方を見つめなおす」という彼女の原点とは

「シンプルライフ」ガイド 金子 由紀子

文/むなかたようこ 写真/平林直己

モノの増える気持ちの悪さを知る

シンプルライフガイド金子さんのお宅にお邪魔した。何もモノがないツルンとしたリビングなのだろうか?という予想は軽く裏切られた。リビングの扉を開けると、そこは生活感が適度にある温かな居心地のよい空間だった。

天板と脚を買ってきて自分で作ったテーブルは、高さにもこだわった大切なもの。13年ほど使っていて味が出てきた

低めのテーブルとそれに合わせたイスはすわり心地がよく、鍋のこげ跡のついた使い込まれたテーブルの上はすっきりと片付き、気持ちがいい。竹で編まれたかごがいくつかあって「おとうさん」「おかあさん」と子どもたちの名前がついていた。

家族やよく訪れるだろう友人たちとのさんざめく会話が聞こえてくるような温かいリビングだ。

金子さんには、シンプルにこだわるようになったきっかけともいえる「モノに関する記憶」が2つある。

一つは故郷栃木県の実家の風景だ。幼いときは家の中にモノはあまりなく、お母さんの嫁入り道具のたんす以外は何もないような家。それがちょうど高度成長期にあたると、モノがどんどんと家の中に入り込んできた。

モノのない生活に慣れてきた親世代は片付けの文化もなく、家の中はどんどん煩雑になっていった。モノがあふれてくる不愉快さや気持ちの悪さは、子どもの金子さんをして「大人になったらモノの少ない生活をしたい」と決意させた。

「複雑なことは苦手なの。田舎の風景がだだっ広くてシンプルだったせいかしら」

もう一つの記憶はオイルショックだ。「トイレットペーパーがなくなる」と奔走していた人々がいる一方、金子さんの親の世代はとんと気にしていなかったそうだ。「どうせすぐ収まる騒ぎだよ」と。親の世代は、モノの便利さは知っていたけれど、いざとなればモノなどなくても何とかなる知恵を持っていた。

そんな親の姿を見て育ち、金子さんも「モノの価値」を考えるようになっていった。

普通の人ができるすっきりした心地の良い暮らし

社会人となり一人暮らしを10年間続けて、シンプルライフをより目指したいと考えた金子さんは、シンプルライフ提唱者たちの言うことに耳を傾けてみたものの、なかなか思うようにはいかなかった。

カゴやザルが好き。いつか捨てるときにも、燃やせて土になる。重ねて収納できるものを選ぶことも重要。

「質のよいものを選びましょう」「アンティークに価値を見出しましょう」といった先駆者たちはあまりにもセンスがよすぎて、自分が背伸びしても続かない。

特に美意識が高いわけでもない自分にできることはなんだろう。そう考えてまず実践したことは、センスのよいものを選ぶというよりは自分の家の中の嫌いなものを排除していくことだった。

この「普通」の感じ、庶民感覚が金子さんの記事の最大の魅力である。

実は筆者も「見せる収納」やら「一点豪華主義」やら、目指してはセンスのなさに頓挫を繰り返してきたエセシンプル人間。金子さんに言われて家に帰り、少しだけ「ほんとは好きじゃないモノ」を処分したら、思ったよりずっとすっきりして驚いた。確か何年か前に断捨離をしたはずだったのに、それからいつの間にかまたモノは増え続けていたのだ。

シールで引出に入れるものの名前を付ける事で、所在地を明確に。時によって中のものは変わって行くのではがせるシールを使用。ラベルライター「p-touch」(メーカー:brother)(左)はシャンプーなど水にぬれるものの名づけに有効。

さて、金子さんは結婚後、子どもができると格段にモノが増える現実に直面する。部屋いっぱいに散らかったものをみて茫然とする日々。そして気づいたことは「捨てても捨ててもモノが減らない。これは、家にモノを入れる前にシャットアウトするしかない」ということだった。

「セレブでもなければ、特別センスのいい人間でもない。でも放っておくと、モノはどんどん増えて生活を脅かしていく。それはイヤ。そうならないためにどうしたらいいのか考えたい」。そんな普通の目線が多くの人に受け入れられて、金子さんの記事は人気を集めている。

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