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「その道のプロ」のルーツを探る ガイドの原点−origin-

vol.039

ファッションに自分を合わせるのではなく、生活の中で無理のないおしゃれを提案したい

流行に振り回されない、自分らしいおしゃれとは何だろう。おしゃれは、決まりきった型があるわけではない。一人ひとりに心地よいおしゃれを提案する久野さんに「おしゃれ」とは何か「ファッション」とは何かを聞いた

「レディースファッション」ガイド 久野 梨沙

文/むなかたようこ 写真/須藤明子

モノだけ市場に送りこんでもマーケットは広がらない

服装心理学に基づいた個人向けスタイリングを行うスタイリスト久野さんは、大学卒業後アパレル業界に身を置いていた。ターゲットに向けてブランドを立ち上げ、売っていくという仕事にやりがいがなかったわけではない。昔から仮説をたてて分析をするのが得意だったからだ。

ターゲットを決め、企画立案し、目標値を定め、売り上げを伸ばしたが、次第に違和感を感じるようになった。世の中は不景気で倒産が相次ぎ、安定とは程遠い社会情勢の中、モノだけどんどん作って送りこんでもマーケットは広がらないと焦りを感じていた。

おしゃれに一家言あり、自信のある人がアパレル業界を牽引している。それは一般的な消費者とのずれがあるのではないか。そのもやもやとした疑問がひとつ明確になったのは、消費者一人ひとりの生活を追っていくマーケティングを行ったときのことだった。ごく普通の人々は、どういう生活をし、どういうときにどういう服を着ているのか、何を着たいのかを時間をかけて追っていった。その結果「一人ひとりは、おしゃれもしたいし買いたいものもある。ただ何を買っていいのかわからないでいる」と感じた。

人を見ずにモノだけどんどん送っても、ブランドのつぶし合いになるだけでマーケットは広がらない。かえってお客さんを混乱させているだけではないかという想いは広がる一方だった。

パーソナルスタイリング風景。直接お客様と話しながら、似合う服装を探していく作業は楽しい。

小さいときから人間観察が好きで、大学では心理学を学んでいた久野さんは「モノ」より「人」に興味があった。「もっとおしゃれを楽しむ層そのものを広げることはできないか。ものづくりに軸足を置くのではなく、消費者側にたってアパレル業界との橋渡しをしたい」と考えるようになっていった。

「私は、ファッションが好きというよりは、人間が好きなんです。ファッションが一番とは思わない。あくまでも着こなす人間がいてこそのファッションです」

その気持ちが、久野さんの原点だ。それは起業して8年たっても変わることはない。

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