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「その道のプロ」のルーツを探る ガイドの原点−origin-

vol.004

だれもの命の原点は子宮であり、触れること、触れあうことの大切さを伝えたい

医師になったのは80年代後半。当時はベビーブームも終わり、少子化に移っていた時代。なぜ、産科医になることを選んだのか。選んだ道で彼は何を学び、どう行動しているのか? 行動派産科医といわれるに至る竹内正人の「原点」

「妊娠・出産」ガイド 竹内 正人

文/山本初美 写真/金田邦男

医師としてのあり方を変えた「赤ちゃんの死」

産科医になって10年が過ぎた頃、必死になって救ったと思っていた赤ちゃんが、後に、親から日常的に虐待を受け、その家族が崩壊したことを知った。

「幸せになっているはずだと信じていた…。もしかしたら僕が無理に助けたことで家族を崩壊させ、この子を苦しめてしまったのかもしれない。そう思うと、じゃああのときの母親や赤ちゃんは?と、考えるようになってしまったんです」

「母子を救う」ことしか見えてなかった竹内さんは、自分は何をやってきたのだろうかと、産科医としてアイデンティティー・クライシスに陥った。

「妊娠・出産」ガイド 竹内 正人

竹内さんが行動派産科医として心がけているのは「今、感じていることを大切にしてカタチにしていくこと」

そして、ふたたび赤ちゃんの死に向き合うこととなる。医師としてのあり方が変わった出来事だった。あるとき、胎盤早期剥離(※) で緊急帝王切開をしたが、救うことができなかった赤ちゃんがいた。苦しかっただろうに、とても穏やかで安らかな表情をしていた。

それまでは「忘れられなくなるから」と、亡くなった赤ちゃんを母親に会わせることはしていなかったが、母親に会わせてあげたい…とっさにそう思った竹内さんは赤ちゃんを真っ白な温かいタオルでくるんで母親へそっと手渡した。1時間後、パニック気味だった母親は穏やかな表情に変わっていった。

※胎盤早期剥離(たいばんそうきはくり)…何らかの異常で、本来出産後にはがれるはずの胎盤が、まだお腹に赤ちゃんがいるときにはがれてしまうこと。胎児に十分な酸素が届かなくなる。

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