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vol.026

ダンサー・黒田育世×体(後編)

体の声を聞くということ
「好き」から始まるダンス

ダンスカンパニー BATIKを率いる黒田育世。近年は、自ら踊るダンサーとしての活動のみならず、野田秀樹氏演出の舞台において振付を担当、中島哲也監督作品『告白』では、女優としても登場するなど、活躍の場を広げている。

All About「恋愛」ガイド 芳麗さんがリスペクト

黒田さんのダンスを観ていると、神聖な気持ちになると同時に原始的なエネルギーが沸いてきます。神の使いのようでもあり、野生の動物のようでもある。情報化社会に埋もれて生きている人が増えている中、全身で生の悦びを表現している。その生き方、言葉にも、刺激を受けます。

取材・文/芳麗 写真/三浦太輔

黒田育世「うみの音が見える日」振付 笠井叡、写真/市川勝弘

黒田育世「うみの音が見える日」振付 笠井叡

黒田育世「うみの音が見える日」振付 笠井叡、写真/市川勝弘

写真/市川勝弘

——今春に上演された舞台『海の音が見える日』を拝見したんですけど、踊りという表現がワイルドなのに、とても雄弁で感動しました。どこまでが振り付けで、どこからが、その場で湧き出てきた即興なのか、区別がつかなかったです。

冒頭のAKB48『ヘビーローテーション』部分は即興ダンスで、その後の古事記の朗唱での踊りは振り付け、祝詞を唱えながら踊っていたパートは即興。あの時は、即興と振り付けを、交互に踊っていましたね。

——『海の音が見える日』は、「3.11」をテーマに、世界の起源と終わり、生死など、さまざまな風景が喚起されましたけど、黒田さんが本作のパンフレットの中に「体は随分前においてけぼりにされて 懐かしいほどの存在になってしまったような気がします。もしかしたら、言葉も徐々にそうなっているような気がします」と書かれていたのが印象的だったんです。「体を置き去りにしている」のはその通りだなと思うのですが「言葉も置き去りにされつつある」と思われたのは、どうしてですか?

肉声も、書き言葉も、両方のことなんです。言葉って、一度、放ったら二度と戻らない危うさ、一回性の残酷さをもっていて、人を殺すこともできるし、感謝もいたわりも表現できる。すごく怖くて、尊いものだと思うんです。

それなのに、言葉への畏怖がなくなっています。みんなが言葉を自由に発することができる時代だし、「誰にでも表現する権利がある」と言いますが、本当にそうなのかなと。権利っていうのは「ある」ではなく、「ない」という時にしか使えないものだと思う。「人を傷つける権利はない」というようにね。

中谷美紀氏

多くの人が、「自分には言葉を発する権利がある」と思いはじめた瞬間に、言葉が本来持っていた強烈な力やサンクチュアリがなくなってしまった気がします。

——よく分かります。ブログやツイッターや掲示板で無尽蔵に言葉を垂れ流したり、そこらじゅうに、思いが宿っていない言葉が増えすぎているなと。

踊ることもそうなんです。踊れないけど、踊ることにこそ、生命が宿っているんです。言葉じゃ言えないけれど、この言葉を選ばざるをえない。言えないけど、言いたい。そこにしかサンクチュアリはないと思う。

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