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vol.025

ダンサー・黒田育世×体(前編)

生きたがっている体の色気
黒田育世のダンスが表現するもの

今、国内外でもっとも高い評価を得るコンテンポラリーダンサーの1人であり、振付家でもある。その原始的で独自性の高い創作とダンス、そして黒田自身の稀有な存在感は、誰の胸のうちにも潜んでいる生命力を呼び覚ます。「踊ること」とは? 体を使って生きることの美しさ、面白さとは?

All About「恋愛」ガイド 芳麗さんがリスペクト

黒田さんのダンスを観ていると、神聖な気持ちになると同時に原始的なエネルギーが沸いてきます。神の使いのようでもあり、野生の動物のようでもある。情報化社会に埋もれて生きている人が増えている中、全身で生の悦びを表現している。その生き方、言葉にも、刺激を受けます。

取材・文/芳麗 写真/三浦太輔

——黒田さんは、子どもの頃にクラシックバレエからキャリアをスタートさせながらも、現在はそこから離れてコンテンポラリーダンサーと称されることが多いですが、そもそもコンテンポラリーダンスとは何でしょうか?

コンテンポラリーダンスが何なのか、私も知らないんです(笑)。言ってしまえば、名前がつけられないダンスをすべて総称してコンテンポラリーダンスと呼んでいるのかなと。もともとは、「同時代性」といった意味もあるみたいですけど。

——音楽に近いものがあるのでしょうか。厳密にジャンル分けできるものではないのに、敢えて名前をつけて括っているという点で。

自分のやっていることがコンテンポラリーダンスだという意識はないですね。バレエのように型があるダンスも素晴らしいと思う。いちばん美しい型を求めていくことは、とても謙虚な姿勢だし、型があることで毎回ゼロに戻っていくことができるのは良いなと。表現する上で慢心することがいちばん怖いじゃないですか。型はそれを防いでくれる。「もっとこうありたい」「ここまでしかできない」と思わせてくれる、素晴らしいものだと思う。

黒田育世氏

——黒田さんのダンスはどんな型にもはまっていませんが、型を破っているという感覚ではないんでしょうね。

全然、そんなつもりはないです。型を破ることが前衛的で革新性を持っているとは思わない。でも、私の踊りは何とも呼べない。人間の中にある「踊りたがっている何か」をそのままカタチにしているというか、いちばん幼いものだと思います。

嘘っぱちのものに宿る真実

——黒田さんのダンスからは原始的なものを感じるんですけど、「幼い」というのは、なるほどなと思いました。

「踊りたがっている何か」って目には見えないじゃないですか。それを、ありのままに見せたいなって思う。もちろん、舞台に乗せるものは、そもそもが嘘っぱちですよ。開演時間が決められている時点で、もう嘘がつきまとっていますから。でも、嘘っぱちに真実が滲むことはあると思いませんか?

——そうですね。ニュースよりも、小説や映画や舞台という虚の世界に、自分にとっての真実を見出すことは多々あります。

リアリティが大切とか言いますけど、私は興味無いですね。「嘘ですよ」って言いながら、本当になっちゃっている切ない姿のほうが興味があるし、潔いと思います。そもそも、表現しようとしている時点でリアルに好かれていない気がするんです。嘘っぱちが、たまたまリアルになっているかどうかですよね。リアルというのは、自分で作り出せるものじゃなくて、与えてもらうものだと思う。

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