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vol.023

映画監督・西川美和×女性の幸せ(前編)

女性である自分が女性を描くこと
西川美和の想う女

28歳の時に『蛇イチゴ』で映画監督としてデビュー。以降、『ゆれる』『ディアドクター』など秀作を撮り続けている西川美和監督。これまで、家族間の軋轢や男の世界を描いてきた西川監督が、今作で挑んだテーマは女。愛を求めて生き惑う女たちの姿と、その心の奥底にある、得も言われぬ本性を見事に描き出している。

All About「恋愛」ガイド 芳麗さんがリスペクト

西川作品の魅力は、その稀有な描写力。人が心の奥底に隠し持っている感情や自覚しがたい心理を、繊細に、時に大胆に描いていて、深みまで連れ去られます。デビュー作『蛇イチゴ』から毎回インタビューの機会に恵まれていますが、いち女性としても本当に楽しく興味深い方で、心より尊敬しています。

取材・文/芳麗 写真/三浦太輔

——西川さんは、これまでの作品では主に男性を描いてきた印象があります。今回はなぜ、女性を描こうと思われたんですか?

確かに女性を描くことは避けてきたところではありますね。デビュー作の『蛇いちご』は主人公が女性ですが、基本的には、男性を描くほうが好きだし、気楽だったんです。男の人の物語のほうがわくわくする。

それに、最初から女の監督が女の世界を描いてしまうと、女性しか見てくれないものになりそうな気もしていて……。普段から男の人って、女同士の閉じた世界が苦手でしょう? 2作目の『ゆれる』の主人公を兄弟にしたのも、姉妹にするとどろどろしそうだと思ったから(笑)

——なるほど(笑)

でも、大好きな「男の世界」を何作か描いてきて、男性のお客さんも観て下さった。今なら、女性を題材にした映画を撮っても、男の人に観てみようと思ってもらえるかなと。

それと、女だから女のことが分かるとは言いたくないし、簡単にはわからないですよね。男であろうと女であろうと他人ですから。女同士だから分かる、男同士だから分かるというのは完全な驕りだと思うので、自分はわかったつもりで描きたくなかったのもあります。

黒田育世氏

女から見ても、女は分からない

——今作では、さまざまな人が持つ女の不可解さを描いていますよね。腹立ちを溜め込んでいる妻、結婚したい高学歴OL、ダメ男に尽くしすぎる風俗嬢……etc それぞれが極端なものを抱えていたりして恐ろしいんですけど、一方では、理解できるような気もしました。

そう思っていただけると嬉しいです。私も世の中に、理解し難い女の人は少なからずいますけど(笑)

自分の作品の登場人物は、「は? なに、この女?」と観客に思われるのではなく、「分からなさが分かる」というところまで持っていけたらなぁと思っていたので。

——今作に限らずですけど、西川さんは、人間が隠し持っている嫌な部分をも描きつつも、完璧に嫌な人としては描いていない。だから、怖いけど共感できるところもあるのかなと。

圧倒的な悪人は作品の中には出せないんです。懐が深くないので、心底、嫌いな人やものは書けない。すべての人間には、その人なりの道理や都合があると思いながら、登場人物を作っているので。私の映画に出てくる人間は、一見、すごく嫌なヤツに見えても、私の理解の範疇です。不寛容なので、自分が許容できていないものや人はまだまだあると思います。

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