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vol.019

アーティスト・青木涼子×伝統と革新(前編)

アウトサイダーだからこそ歩める道
青木涼子が能と現代音楽の融合に向かうまで

日本最古の舞台芸能とも言われている能。そしてクラシック音楽の最先端にある現代音楽。このふたつを融合させ、新しいものをつくりだそうとしている青木涼子。女性である彼女が能を志し、現代音楽と接点をもった理由に迫る。

All About「おけいこガイド 山口 佐知子さんがリスペクト

「好き」を仕事にする難しさと、「能」という伝統芸能特有のしきたりの重さ。それらを、まるで軽やかに越えたかのように見せてくれる青木さん。実はものすごいことをやってのけているのに声高に語らず、粛々と歩んでいくスタイルは、これからの私たちの生き方のお手本にもなりそうです。

取材・文/中村桃子(All About編集部) 写真/三浦太輔 ヘアメイク/田所千佳

――8歳からバレエを習われていたというのはよくあることだと思うのですが、そこから何がきっかけでお能に興味を持ってお稽古を始めたんですか?

バレエを習いつつ、日本人なのに西洋のものをお稽古しているということに疑問を抱いていて、何か日本のものをやりたいなとは思っていました。ある日、偶然、テレビで能の番組を見て、「かっこいい!」と思って、近くの教室に通い始めました。

――一般的には能は男性のものというイメージがありますが、女性でもできるのでしょうか? 白洲正子さんが舞台に立たれたり、ということはあったようですが。

室町時代には女猿楽といって女性も活躍していたのですが、江戸時代に女芸人を全面禁止にして、完全に男性の舞台芸術となってしまいました。でも、江戸幕府が崩壊して能楽師は扶持を失い、素人にお稽古をつけて生活していくようになります。その過程で、女性のお弟子を取ることとなり、徐々に解禁されてきます。

――そして次第に女性が能を舞うようになったんですね。

そうです。今は舞台に立つのは問題もなく、プロの女性能楽師も活躍していらっしゃいます。

しかし、能は男性役者が演じるように練り上げられてきています。例えば、能面一つ取ってもそうです。普通は女性の役を演じるとき、女面をかけ、生きている男性の役をやるときは、能面をかけないで演じます。これは男性が演じるように考えられているからなんです。女性が演じる場合も、それをそのまま踏襲しているんです。

女性であることの自由と制限

――14歳からお稽古をして、その流れのまま東京藝術大学音楽学部邦楽科の能楽専攻に入られたということですが、女性が藝大で能楽を専攻するのは、珍しくないですか?

私の場合は、女性が能をやるのが一般的ではないという事も知らずにこの世界に入っていきました。「能をやっていたら、藝大に行けるよ」と言われて。藝大って面白そうじゃないですか。

しかし、藝大に入ってみたら、能楽専攻の同級生はみんな男性で能の家の出身で、初めて女性で能の家の出身ではないことはこの世界でやっていくのは大変なんだということに気付きました。

――子供の頃は好きというだけでやっていけるので、その世界を取り囲む事情なんて分からない。藝大の雰囲気、また女性がその世界でやっていくのは珍しいということに気付いたあとの学校生活はどうでしたか?

将来トップアーティストになる人たちと交流できると思って、藝大に入ったのですが、入学した当時は完全な縦社会で、美術学部や音楽学部の他の学科との交流は全くなくって、がっかりしました。

学部の3年生の時に、野村萬斎さんの叔父さんにあたる観世流シテ方の野村四郎先生が担当教授になっていただいて、先生が非常に熱心だったので、すごく能が好きになりました。それと、大学が学科間の横の交流を相互に持たせようと動き始めていて、野村先生が推薦して下さって、他の科とのコラボレーションの企画に積極的に参加するようになっていきました。

もしかしたら、私が能の家の出身ではないので、いろんな束縛がなかったおかげで、自由に参加できたのかもしれません。それが今の現代音楽とのコラボレーションという活動の原点になっていると思います。

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