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vol.017

ミシマ社・三島 邦弘×面白い仕事(前編)

「面白い本」を世に送り出す
三島邦弘が立ち上げたミシマ社って?

メディアが多様化して本が売れないと言われる時代。自力で小さな出版社をたちあげて、多種多様なヒット本を生み出しているのが三島邦弘さん。“原点回帰”をモットーに掲げながら、新しい出版、新しい働き方の土台を築きつつある。その思考と創造力とは――?

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子供の頃から大好きで今も週数冊は購入する本。家に連れ帰った本のいくつかにミシマ社の文字がありました。多種多様だけれど、本らしい矜持のある本たち。三島さんの本作りに対する考え方――“原点回帰”“一冊入魂”が好きです。まさに、本の本質をとらえながら、時代にそっていると思います。

取材・文/芳麗 写真/三浦太輔

編集者であり社長の三島邦弘氏は、今年、37歳。大学を卒業後に2つの出版社を経て、6年前の31歳の時に独立を決めた。無謀にも見える出発だったが、“原点回帰”と“一冊入魂”を信条に、『街場の中国論』(内田樹著)、『ほしいものはなんですか?』(益田ミリ著)など、記憶に残るヒット本を生みだし、著者と読者の熱烈な愛と信頼をうけている。出版不況と呼ばれる昨今、いかに、新鮮で面白い本を産みだし、支持を得ているのだろう。

――ミシマ社では、これまでさまざまな本を生みだしていますが、三島さんが惹かれる人やテーマに共通項はありますか?

編集者としては、面白くなるかどうかですかね。たとえば「これなら売れるだろう」とか、「今、コレが流行っているから」という理由で企画を立てることは、あまりありません。何だかよう分からんけど面白くなると思えるもの。世間的には、「これ何やねん!?」ってツッコまれそうな本でも、作り切れたら面白くなると感覚のレベルで信じられたら、やりますね。

でも、何が面白いのかは、できるだけ言語化しないようにしています。「コレがミシマ社の考える面白さです」と提示したら、それがすべてになってしまう。知らず知らずのうちに、その定義に縛られて二番煎じや三番煎じのようなものを作ってしまいます。面白いということは自由で多様でなくてはいけないし、どんどん移り変わっていく生き物のようなものだと思うから定義したくないんです。

多数派にウケるより、大切なこと

――三島さん自身の著書『計画と無計画のあいだ』でも、本を作る上では、テーマのジャンル分けすることや、マーケティングすることに意味を感じないとおっしゃっていましたよね。

僕ら出版がやっていることなんて、そもそも多数派にウケることじゃない。出版社は昔から時代に何かしらの異議があったり、反骨精神のある編集者が形にしたものが後世に残って行くと思う。企画した時点で既にみんなが良いというものは、形になったときにはけっこう平凡なものになりがち。最初は理解されずとも、出した後で、「あ、面白い!」と思われるものでないと。

ミシマ社刊の書籍たち

※写真をクリックするとミシマ社のWebサイトが別ウィンドウで開きます

――同感です。ただ、そこを分かっていても、会社の仕組みや予算のせいで実行できないとおっしゃる出版業界の方は少なくない。目先の売り上げの問題もあるでしょうし。でも、ミシマ社は、面白いと思うものを作って会社として成り立たせるということができている。

ひぃひぃですけどね(笑)

ポイントを簡単にいうと、「小商い」なんです。ウチで『小商いのススメ』という本も出していますけど、出版の原点は会社の規模を大きくしないことだと思っています。自分たちが面白くなるだろうと思うことに全力投球して、「一冊の本」と言うかたちにする。個々の感覚と会社の動きが常に連動している。

ある規模を超えてしまうと、人件費をはじめとして、会社を回すためにいろいろやらなきゃということになる。母体を維持するために、ハズした本を作るのが怖くなるから、マーケティング頼みになっていくんですよね。マーケティングは確率論で、どうしたら打率が高くなるかという方法論だから、新しいものより、かつての面白いものやヒット本の縮小生産になってしまう。

――すると、個々の編集者や作家やクリエイターの面白さは発揮されづらいですよね。

そうなんです。個々の感覚や思いを発揮しないまま打率優先になってしまうと、会社の維持ということを短期的に果たせても、長期的に見れば打率は落ちますよね。個々の感覚は使わないと鈍化していくし、失敗しても自分の考えで勝負しないと磨かれませんから。

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