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vol.016

切り絵作家・福井 利佐×子育てと制作(後編)

子供を育てること、作品をつくること
福井利佐が描き出す未来

2007年に初の作品集となる『KI RI GA』を刊行。現在は、2012年8月から故郷の静岡で開催される個展の準備と、5年ぶりとなる新しい作品集『KI RI GA 2』の制作に追われる彼女は一女の母でもある。子育てや時の経過は制作にどのような影響を与えているのか。

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切り絵であることが信じられないけれど、その手法は必然と感じずにはいられない、そんな「福井ワールド」に引きこまれました。奥行きがあってダイナミックな構図、それでいて繊細さが同居する作品を見ていると、何だか日々のあれこれがスコーンと抜けていきます。加えて、ママ業と創作活動へのアグレッシブさを両立させている福井さんの姿には、勇気ももらえるのです。

取材・文/中村桃子(All About編集部) 写真/三浦太輔

――私が福井さんの作品を知ったのは和風のモチーフをつかった宝生流「和の会」のチラシでした。「和の会」のお仕事は2009年の「羽衣」からされていますよね。

宝生流宗家が開く和の会。その第一回公演は2009年の「羽衣」。福井さんが作成した「羽衣」のメインビジュアル。

宝生流宗家が開く和の会。その第一回公演は2009年の「羽衣」。福井さんが作成した「羽衣」のメインビジュアル。

いちばん最初に手掛けた宝生流「和の会」の演目の能面は小面でした。小面にはお面だけで勝負できるお面の強さがありました。

2012年の演目は平氏の怨念が海から上がってくる「船弁慶」という演目だったのですが、面と対峙したときに怨念を感じなかったんです。だから面だけで全てを表現せずに、アイテムを周りに配置して海の怨念を表現しました。

「和の会」の仕事に関しては、毎年1回、10年継続してつくっていく予定なのですが、毎回、家元のところで面や着物を見せていただくんです。本物を見ると、作品の完成度が全然違ってきます。

制作にあたって、いつも面をつけてもらって、写真を撮って、それから切り絵をつくっているのですが、置いてある面と、実際つけて動いてもらったのでは面や装束から受ける印象が違うんです。役者が面や装束をつけた時の「豹変」「憑依」というものを感じて、それからつくっています。

――「和の会」の宝生流をはじめとして、他のクリエーターや企業と仕事をしていくと、相手の世界観やクライアントのオーダーがあると思いますが、それはどう受け止めていますか?

私自身、「切り絵という手法はこういうものだ」というのを出したいというのが無く、グラフィックとして美しければ、それで良いと思えるので抵抗が無いです。

ただ、つくっている作品自体がダークなので、それを理解した上でご依頼下さったり、世界観に共鳴してくれているアーティストやクライアントとの出会いが多いですね。だからこそ、自然に入っていけます。

つくるときにエネルギーをもっていかれるものほど、作品に力がある

――作品をつくっていくなかでパワーを持っていかれて、きついときはありますか?

全部が細かい作業なので、肉体的疲労があります。切り絵自体、難しい工程は無いですし、作家性が高いものなので、弟子やアシスタントなどを取ることはないですが、もし娘が成長して器用だったら手伝ってもらいたいです(笑)

作品づくりでは精神的にもっていかれることがあっても、出来上がりが良いと吹き飛びますよね。切り抜いたり、色を配置するときではなく、下絵がもっとも精神力を使うんです。精神的にもっていかれるようなものがある下絵は切り上げ甲斐があって、何より自分自身が出来上がりが見たいので楽しいです。

福井利佐氏

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