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vol.014

天文学者・大西 浩次×金環日食(後編)

偶然が起こす、奇跡的な天体現象
それを安全に見てもらうのが私の使命

2012年5月21日、日本列島を横断する形で金環日食が起こる。国内では25年ぶり、観測地域によっては数百年ぶりというところも多い(東京では173年ぶり)。2010年の小惑星探査機「はやぶさ」の帰還以来、再び宇宙と星への関心が高まりそうだ。

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まるでお茶の水博士のような容貌の大西教授。幼児の頃から自分の好きな天文に関することを追いかけ続けて、専門の学者になったオタクの鏡のような人。ともすれば、親は勉強で子どもにどの教科も、満遍なくできることを求めてしまいがち。好きな分野にとことんのめり込むという、もう一つの生き方を示されています。

取材・文/西村有樹 写真/三浦太輔

一方で大規模な天体ショーに限らず常日頃から遠い星空を見上げ、数式とにらめっこしている人たちがいる。国立長野高専で教鞭を取る大西浩次教授もその一人だ。講義、研究のかたわらで「2012年金環日食日本委員会」の副委員長を務め、全国各地を公演、シンポジウムに飛び回る。昭和のアニメから飛び出したような、まさしく「博士」らしいルックスの大西教授のメッセージは、仕事の魅力とはなにかを思い出させてくれる。

普通の天文ファンでは収まりきらない

――大学入学後は小中学校の頃のような天文への情熱は復活されたんですか?

自分では普通の天文ファンとしてたまに大きな天体ショーがあるときに観察できればいいやと思っていました。ところが1988年の3月に皆既日食があったんです。小笠原諸島まで天文ファンで小笠原丸をチャーターして30時間かけていきました。その時に不治の病にかかったんです。日食病という怖い病気です。大変なインパクトがあったんですね。その後遺症として、写真を撮り始めたのです(笑)。このときの日食の写真が雑誌に掲載されたのです。当時、天文雑誌が3つあって、それぞれ掲載されると「また送らないと」と繰り返すようになって(笑)。

博士論文に関しては痛恨のミスがあって。大学での事前審査が結構厳しかったんです。途中で研究テーマを変えたので博士論文取るのに1年遅れで、と思っていたのに1年半も遅れてしまいました。

事前審査に向けて着々と準備を進めてたんですが、審査の1週間前に新星が出たんですよ。もともと夜明けの海から天の川がのぼってくるのが好きだったところに、そこに新星が現れるわけですから、もう行くしかない。1、2月の厳冬期に仙台駅からの最終電車で浜吉田駅まで行って、撮影が終わったら始発で帰ってくるんですが、その日は雪が降ってしまったんです。体調の悪さもあってインフルエンザにかかってしまって(笑)。審査会の数日前に倒れて、結果、半年遅れたのは非常に痛かったですね。指導教官の高木先生、ご迷惑を掛けました。いまだったらこんな事は絶対しませんから。

大西教授の研究室にて

大西教授の研究室にて

――やはり熱烈な天文ファンですね。大学、大学院時代とずっと天文の研究をされてたんですか?

いえ、天文ではありません。研究分野で大きくざっくりわけると統計物理学です。研究室で統計基礎論をやっていました。普通の人が聞くと天文と間違える分野です。「ブラックホールの熱力学」といって、「ブラックホールの」とはつくものの、研究分野としては熱力学なんです。

――1年半遅れで大学院をご卒業後は、また少し違った分野に進まれたそうですが。

郵政省のCRL(現NICT)という研究所にポスドクで入りました。ポスドクは契約期間の決まった研究職なんですが、分野が超電導の研究だったんです。これが熱力学でやっていた、量子力学と重力の理論とほとんど数学的な形式が一緒なので採用になったわけです。その頃には「天文をやりたいな」という思いもあったんです。そこのCRLには日本でも有名な34メートルの電波望遠鏡がありまして、天文の勉強を始めました。

天文の分野では論文が1〜2本しかできていなくて、成果がまだ出ていない頃でしたね。

望遠鏡を覗く大西教授

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