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vol.013

天文学者・大西 浩次×金環日食(前編)

世紀の天体ショー「金環日食」
天体少年が叶えた夢と希望

2012年5月21日、日本列島を横断する形で金環日食が起こる。国内では25年ぶり、観測地域によっては数百年ぶりというところも多い(東京では173年ぶり)。2010年の小惑星探査機「はやぶさ」の帰還以来、再び宇宙と星への関心が高まりそうだ。

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まるでお茶の水博士のような容貌の大西教授。幼児の頃から自分の好きな天文に関することを追いかけ続けて、専門の学者になったオタクの鏡のような人。ともすれば、親は勉強で子どもにどの教科も、満遍なくできることを求めてしまいがち。好きな分野にとことんのめり込むという、もう一つの生き方を示されています。

取材・文/西村有樹 写真/三浦太輔

一方で大規模な天体ショーに限らず常日頃から遠い星空を見上げ、数式とにらめっこしている人たちがいる。国立長野高専で教鞭を取る大西浩次教授もその一人だ。講義、研究のかたわらで「2012年金環日食日本委員会」の副委員長を務め、全国各地を公演、シンポジウムに飛び回る。昭和のアニメから飛び出したような、まさしく「博士」らしいルックスの大西教授のメッセージは、仕事の魅力とはなにかを思い出させてくれる。

世紀の天体ショーと科学者の気持ち

――2012年5月21日、日本列島で金環日食が観測できます。日が近づくにつれて徐々に盛り上がりを見せていますが、やはり科学者、研究者も盛り上がっていますか?

いや、当の科学者たちは結構冷めているんです。金環日食は大きな部分日食と揶揄されることもあるぐらい。金環日食では明るさも変わらず劇的な変化もないし、なにもサイエンスがないという人もいます。でもそんなことはないと思います。

子供達に何かを教える時に嫌いなのが、先生がおもしろいと思っていないのに「おもしろいだろう」と押し付けてしまうパターン。教える側がおもしろいと思える要素がないと子供に「おもしろい」と言っても動いてくれないんですよね。

天文学者が「日食はたいしたことない」、そんな気持ちでいたら子供達も察します。そういう考えがあるから、あちこちで「おもしろいテーマを探してください。何かきっとあるはずですよ」と言いまわっています。

月と明けの明星

大西氏が取材の終わりにうれしそうな顔で教えてくれた善光寺の頭上に現れた“三日月と金星”

――科学者の反応は意外です。大西先生はどんな成果を期待されていますか?

いくつかあります。太陽の大きさを測って決めることや、電波を使った観測をすること。そしておもしろがって実験をした人は成果が出たことを子供たちに報告してあげないといけない。

僕は「はやぶさ」の地球帰還の時に国立天文台チームで観測に行ってきたんですけど、あの時に絶対論文にしないといけないって思ったんですよ。はじめは「時間も準備もないしなぁ」ってずいぶん悩んだんですけど、分光観測という、人のあんまりやらないテーマを決めて、装置を持っていってやってきました。

で、観測できたのでめんどくさい解析して(笑)、「はやぶさ」の帰還カプセルの温度を求めて論文にしました。そこまでして、科学の話をしながら、「でもやっぱり落ちてくるときはキレイだった」っていう話をしたいのです。もし自分に文学ができて、詩が書ければ、そういう見てきたものを表現したいんだけど、残念ながらそれが出来ないからこそ、科学をバックにすばらしさを伝えていきたい。とてもキレイなんだよって。

――観測して終わりではないわけですね。記録して成果を伝えるべきというのは科学者になられてからのお考えですか?

私自身は4歳から星を見ています。常識はずれの天文ファンで、小学校は毎日星を見ていました。当時から常に記録していましたね。カメラがなかったものですからスケッチを全部取っていて、小学校の高学年で500枚を超えました。100番目以降はいまも全部残っていると思います。

とにかく記録に残したいんです。その瞬間の星の姿をきちんと残してあげないと。当時もいまも意識は変わらないんです。自分の記憶に残すだけじゃなくて、ちゃんと記録に残しておきたいと考えています。

教室の黒板

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