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vol.005
女優・中谷美紀×美(前編)
デコラティブな可愛さと一線を画す、シンプルでありながらインパクトと余韻を残せる美は、どこから生まれいずるのだろう。中谷美紀が大切にする「日本文化」と、「日常生活」というキーワードを元に紐といた。
取材・文/芳麗 写真/宅間國博 スタイリスト/菊池志真 ヘアメイク/高城裕子
女性は存在そのものが芸術品とも言われるが、この人ほど、その言葉が似つかわしい人はそういない。女優・中谷美紀。ドラマ『ケイゾク』『JIN』から映画『源氏物語〜千年の謎〜』まで、記憶に残る作品に出演してきた。30代半ばにして、数々のキャリアを残しながらも、その功績に捕らわれることなく、軽やかに前進している。その美しさには、背筋を伸ばさせ、心の深みに触れる力がある。情のみならず、知がある。動だけではなく、静でも魅せる。デコラティヴな可愛いものがもてはやされる時代において、シンプルでありながらインパクトと余韻を残せる美――。深化する美は、どこから生まれいずるのだろう。彼女が敬愛する「日本文化」と、「日常生活」という2つのキーワードをもとに紐といた。
——中谷さんは、以前よりお茶や日舞やお能を習ったり、骨董や伝統工芸を愛して金沢の職人さんを訪ね歩いたり日本文化に精通していらっしゃいますが、興味をもたれたのは、いつ頃ですか?
大好きなだけで、今も決して詳しいわけではないんです。しかも、最初はモノから入りました。
お蕎麦が好きだったので、蕎麦猪口を集め始めたのが、19歳くらいの時でしょうか。江戸とか古伊万里の蕎麦猪口をいろいろな骨董屋さんや骨董市に行って集め始めたのが興味を持ち始めたきっかけですね。ただ、当時は、日本のモノは好きだったんですけれども、日本の心にはあまり親しめなかったんです。
——日本の心ですか。
はい。古いしきたりや形式ばった所作は、堅苦しいだけのような気がしていて。相手の心を慮って気持ちを思い遣る文化も、嵩じれば、口から発する言葉とお腹のなかで思っていることが明らかに違うことになる。もっと、はっきり言ってくれた方がラクなのになぁ……なんて当時はもどかしく思っていたんです。
でも、お互いにそれを分かった上で、騙されたふりをすることも大事なんだなと、今なら思えますけど。
——経験を積むとだんだん感じ取れるところですよね。
はい(笑)
でも若かりし日は、とにかく、心よりも、日本の古く美しいモノだけに惹かれていて。蕎麦猪口に始まって、京都でアンティークの着物を求めたこともありましたし、一時期は、骨董屋さんに足繁く通った時期もあったんですけれども、それも底なしの沼にはまるような気がして急に恐ろしくなって、しばらくは距離をおくようになったんです。日本文化に再び傾倒しはじめたのが27歳の時ですね。