ストレス

ガイド:大美賀 直子

不安や過労などの「悪いストレス」をためずに心身共の健康を提案する情報サイト。

 

掲載日: 2004年 04月 15日

許すまじ! モラルハラスメント


■パワハラもセクハラもモラハラの仲間!

−−ある晴れた休日、Y家では家族そろって外出の準備をしています。お母さんは朝から家族の朝食作りや子どもたちの世話に忙しく、お父さんは車を洗ったり、自分の身支度を整えたりしています。

支度を終えたお父さんは子どもたちを車に乗せ、自分もさっさと運転席に乗り込み、エンジンをかけはじめました。お母さんは夫をイライラさせてはいけないと、化粧もそこそこに、あせる気持ちで家中のカギをかけて回ります。

しかしお父さんは待ちきれず、大きく2〜3回クラクションを鳴らしてしまいます。せかされたお母さんは、慌てて助手席に乗り込みましたが、運転席のお父さんは子どもたちに聞こえるように大きな声で・・・。

「まったく、いつものろまだな。グズならグズなりに、なんで昨日のうちから準備しておかないんだ!子どもたちも呆れてるぞ!」−−

モラル・ハラスメントは、こんな日常の何気ないやりとりのなかにも見られます。身近な誰かの非を見つけ、人間的な価値を貶めて自尊心を満足させるのが、加害者の常套手段です。

モラル・ハラスメントは、家庭だけで起こるものではありません。友人、恋人関係の中でも起こりますし、職場のパワーを利用したいやがらせ(パワハラ)、異性に対する性的いやがらせ(セクハラ)も、モラル・ハラスメントの仲間です。つまり、どんな状況であれ、自分より立場の弱い人間に精神的な苦痛を与えて満足する行為は、すべてモラル・ハラスメントに関連するのです。

しかし、モラル・ハラスメントを受ける被害者は、なかなか加害者の支配から抜け出すことができないことも多いのです。

■モラハラのワナから逃れられないのはなぜ?

被害者は、自分の人間性を非難され「ダメ人間」のレッテルを貼られますが、加害者はさらに巧みに「非難されるのはおまえに非があるせいだ」と思わせます。そのため、被害者はその言葉を素直に受け入れ、自己を否定してしまいやすいのです。

しかし、被害者が自己を責めつづけるかぎり問題は他人に気づかれにくく、加害者の支配からもなかなか抜け出すことができません。 しかも、加害者は「ダメなおまえを受け入れられるのは、私しかいない」と自分を唯一の理解者であるかのように思わせることもあります。そして、支配から逃れようとすると「おまえのために自分を犠牲にしてきた私から離れようとするなんて、最低な人間だ」などと、罪悪感を植えつけることもあります。

被害者が素直な人であればあるほど、巧みな言葉に惑わされて、自ら犠牲的立場をとりつづけてしまうこともあるのです。つまり、加害者が自己満足を続けたいがために言葉で操っていることに、被害者自身気づかないということです。

しかし、モラル・ハラスメントを受けつづけると、被害者は抑うつが高まり、うつ病に移行してしまったり、支配から抜け出したのちにも、PTSDに悩まされることもあります。こうしたリスクを避けるためにも、本人がモラハラの被害に早めに気づいて加害者の支配から脱出する必要があるのですが、それにはまず加害者の特徴を知っておくことが肝心になります。

■どんな人がモラハラするの?

フランスの精神科医、マリー=フランス・イルゴイエンヌ氏は、著書『モラル・ハラスメント』のなかで、加害者を「自己愛的な変質者」「症状のない精神病者」であると語っています。

つまり、加害者は、自分がモラル・ハラスメントを行っているなどとは夢にも思っておらず、考え方を修正しようという気持ちもありません。被害者がなんとかして加害者の心を変えようと思っても、精神的負担を増やすだけで、状況は何も変わらないということが多いのではないでしょうか?

加害者のなかには、やさしい態度やへりくだった態度であなたに近づこうとする人もいます。しかし、それがあなたを利用するための行為ではないかを注意深く見極める必要があります。自己愛が強く、自己中心的な人には以下のような特徴があるので、心当たりがないかチェックしてみましょう。

・いつも自分が優位に立ち、賞賛が得られないと気がすまない
・他人の気持ちに共感することや、心を通わせあおうという気持ちがない
・他人にあこがれて近づいても、すぐに嫉妬で心がいっぱいになる
・他人をほめることをしない。欠点をあげつらい、いつも悪口をいっている
・自分の考え方や意見に異を唱えられることをいやがり、無条件に従うことを要求する
・自分の利益のためなら、他人を平気で利用しようとする
・自分は特別な人間だと思っている

また、先ほど紹介した『モラル・ハラスメント』の本には、加害者が相手を不安に陥れるためによく使う方法について記されています。

・政治的な意見や趣味など、相手の考えを嘲弄し、確信を揺るがせる
・相手に言葉をかけない
・人前で笑い者にする
・他人の前で悪口を言う
・釈明する機会を奪う
・相手の欠陥をからかう
・不愉快なほのめかしをしておいて、それがどういうことか説明しない
・相手の判断力や決定に疑いをさしはさむ
  
  −−『モラル・ハラスメント』(マリー=フランス・イルゴイエンヌ著・高野優訳/紀伊国屋書店)より

もちろん、多少上記のような特徴を持ち合わせていても、すべての人がモラル・ハラスメントを行うとはかぎりません。特に精神的にまだ未熟な人、挫折を経験したことのない人のなかには、尊大な態度で不用意に傷つけてしまうこともあるかもしれません。

また、もし自己中心的な部分があったとしても、相手のことを認める心があったり、少しでも他人と共感したいという気持ちがあれば、いずれ精神的に成長して、思いやりの心が育っていくこともあるでしょう。

しかしあなたの友人に、明らかに自己愛的傾向が強く、自己満足のためにあなたを支配し、利用しようとする人がいたら、早めに距離をおいたほうが賢明なこともあります。しがらみ上、どうしても抜け出せない関係の場合には、なるべく相手との精神的な交流を断つことで、自分を守っていくことも大切なのではないかと思います。


2008年3月18日付記

モラルハラスメントは、夫婦間、男女間に限って起こるものではありません。また、加害者本人も気づかないままに、家庭や職場、地域、学校、施設などでも発生している可能性があります。被害者がモラハラ的言動を受けたときには、最初から解決不可能な問題と考えるのではなく、まずは話し合うことで善処を試みていくことが肝心です。

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