第56回:「家づくりトレンド情報」ガイド
河名 紀子
2008年6月13日
「All About」を支える約500名のガイド。ガイドは一つのテーマに一人だけ。厳しいいくつもの審査を通りぬけ、そのテーマのナビゲーターとなる。彼らがそのテーマに魅せられた理由とは? All Aboutを通して発信したいこととは何なのか? このインタビューでガイドたちの素顔に迫ります。

編集長インタビュー第56回は、「家づくりトレンド情報」ガイドの河名紀子さん。ハウジングジャーナリストという肩書きは、分かりにくい住まいの情報を生活者・女性・母の視点でソフトに伝えたいと思ったからとか。執筆以外にも幅広いフィールドで活躍されている経験から、今の家づくりの傾向や暮らしに対する考え方などを伺いました。
どう暮らしたいの?どう生きていきたいの?という提案
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新聞記者の経験を経て、現在はハウジングジャーナリストという肩書きをお持ちですが、何か住まい分野と特別な関わりがあったのですか?それとも、学生時代に住宅関係の勉強をされていたとか。
河名
いいえ、学生時代は文学部でしたし、住宅について特別に勉強していたわけではありません。その後就職して、一般の新聞社に6年と、住宅業界系の新聞社に8年おりました。一般紙では生活部記者として衣食住関連を担当していたんですが、中でも住まいは、すごく裾野が広くて面白い分野だなと思ったのが興味をもったきっかけですね。そのうち住まい方とか暮らしとか、いろんなことを包括する住まいの分野を、じっくり勉強するのもいいなって思うようになったんです。今の肩書きも、建物のハード部分だけじゃなくて「住まう」という意味も含めて伝えていきたいという思いから、あえて住宅ジャーナリストではなく、少し意味を広げる形でカタカナ表現しています。
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ということは、ライフスタイル的視点での住まいに注目されているわけですね?
河名
ええ、次の職場となった住宅業界紙は、たとえばハウスメーカーA社の業績とか、住宅設備メーカーB社が新商品を発表したというような内容が主な記事でした。また私は住宅政策の担当として、100人を超える国会議員らにこれからの住宅政策についてのインタビューなどをしていました。その当時は、福田康夫現首相や故・宮澤喜一氏など著名な政治家が考える住宅への思いを聞くなど、なかなか経験できないこともやらせていただきました。ただ、国の動きや業界の動向を掴むことはできても、実際に住むエンドユーザーには届きにくい。そこでもっと裾野の動きにも目を向けたいと思うようになったんです。天下国家というトップダウンではなく、エンドユーザーの声に耳を傾け、住まいの世界のボトムアップを図りたいという思いが独立するきっかけのひとつになったのは確かですね。
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「どう暮らすか?」といった視点で書かれている記事が多いのはそのせいなんですね。
河名
はい、常にライフスタイルから家づくりのことが提案できるといいなと考えています。今、住宅の業界では、耐震性や耐久性、高気密・高断熱といったちょっと難しい性能レベルでのアピールが盛んですが、技術開発で各社の性能の差が縮まりつつある今、それはエンドユーザーにとっては分かりにくく区別しづらくなっているのでは、と思うんです。なので私は、あえて住まい方というか、あなたはどう暮らしたいの?どう生きていきたいの?という提案を記事に盛り込もうと心がけています。
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確かに、家づくりに夢はあっても、性能や構造の話になってくると頭の中が混乱してきそうですね。
河名
たとえば「あなたの10年後、20年後を家づくりで提案します」みたいなことができる社会は理想的ですね。そういえば、All Aboutのガイドになった当初、担当プロデューサーの方から「隣の主婦にでも分るように記事を書いてください」とアドバイスを受けました。それまでは業界向けに堅い記事ばかり書いていましたから転換が難しかったんですが、記事を書くたびに、近所の主婦の方やママ友達にもわかるようにと意識することで、少しずつ変われたように思います。それが今の私のガイドとしてのスタイルになっているのかな?と思います。
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セミナーやエンドユーザーとの接点を通じて、今の家づくりにはどんな課題があると思われていますか?
河名
やはり、情報が多すぎて消化不良になりがちなことでしょうか。特にネットから入ってこられる方が多いと思いますが、今は性能やスペックも含めてかなりの情報はネットで自宅に居ながらにして集められます。ただこれだけ情報がある中から、「あなたに一番合う家」を選び出す方法は誰も教えてくれないんですよね。そこがたぶん、一昔前のように住宅展示場に行ったり、雑誌を見たりして選べばよかった時代と比べて、むしろ難しくなっていると思います。だからこそ、どう暮らしたいか、という軸を持っていただきたいなと思っています。
今は、一企業が提供する商品だけみても、たとえば輸入系から和風系まで一通り揃っていたりします。同じく一企業の商品ラインナップの中に鉄骨造も木造もあったりしますから、ほんとうに混乱しやすいと思います。ですので、そういったスペック情報からだけではなく、営業マンとの相性や企業理念、どんな新サービスを行っているのかなどもこれから家を選ぶ上でのベンチマークになるのではないでしょうか。あとは、「こんな家に住みたい」と伝えたときに、一番自分たちの気持ちを汲み取ってくれたメーカーや工務店を選ぶとか。
平日の住宅展示場で集客のためのプロジェクトをプロデュースしているのですが、横浜サロネーゼ倶楽部という、自宅を拠点にお教室やサロン活動をしている女性のコミュニティを企画しています。子育てや介護があっても自宅が拠点なら自己実現できるのではないか、自分の人生を楽しむための空間をひとつ持つ、それは広いリビングでもいいですし、教室をするための空間でもいいのですが、そうしたプラスアルファの空間をもつことで、生き方がフレキシブルになってくるんですね。実際、子育てでいったん、家庭に入ったけど、もう一度「社会の表舞台に出たい」という30〜40代の主婦は非常に多いですし、講師もご自宅に教室などをもっている等身大の方たちなので、多くの女性の生き方の応援になっているようです。
仕事柄、このサロネーゼの方々のお宅にお邪魔することも多いのですが、ご自宅で教室をされたりすることもあって、普段からとてもきれいに保たれているんです。たとえば玄関にフラワーアレンジメントが飾られていたり、ちょっとしたところにセンスのよい小物が置いてあったり。そういう家を見ると、やはり「住まいは志から」で、人を写す鏡なんだと思いますね。そしてそういう家を拝見すると、「よし、私もきれいにしよう!」という気持ちが伝播するようなんですね。
今はやっぱり、家づくりでも女性が主導権を握っているんでしょうか?
河名
昔は8割とかいわれていましたが、今は約9割超が女性リードで家づくりが行われているのではないでしょうか。キッチンやインテリア、内装などはもちろんですが、「家を買いましょう」という提案も女性のほうが積極的、という例が非常に多くなっているようですね。子供部屋が必要になったとか、子供が増えたのでもうひとつ部屋が欲しいとか、親を介護しなければいけないといったことは、だいたい女性に降りかかる出来事ですよね。スペックとか耐震性とか構造といった難しい点については、依然男性が強いようですが、家づくりに対してのモチベーションや思いは女性のほうが強いのではないでしょうか。
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そうですね。女性のほうが圧倒的に家にいる時間が長くなりますし、家自体がライフスタイルに直結しますから当然かもしれませんね。
河名
自分たちの家を持つということは、女性は日々の暮らしを豊かにするため、男性は家族を自分の城で守っていくため、それぞれの理由で明日へのモチベーションの原動力になっている気がします。
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河名さんのサイトのテーマは「家づくりトレンド情報」ですが、最近の気になっている傾向などはありますか?
河名
先ほども言いましたように「住まい方」を提案するようなコンセプト住宅が多くなっているようですね。たとえば現在の20代後半〜30代半ばにあたる団塊Jr世代やその後のポスト団塊Jr世代に向けた、家族の幸せなあり方をコンセプトにして五感に訴えるような商品が多く見られます。一昔前の住宅カタログは、スペックが中心で、間取りや外壁、内装といった情報が多くて、ここから選んでくださいといったスタイルでしたが、今は主婦の生活を助けてくれる家事動線の説明があったり、ホームシアターにしてお友達を呼ぶライフスタイルを提案していたりとか、広いバルコニーでガーデニングやホームパーティができますよといった風に、生活スタイルを映像的に訴えかける住宅商品が増えていると思います。
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こだわりのニーズが多いということですね。
河名
やっぱり今の若い世代にはわかりやすいんだと思います。あと面白いと思ったのは、団塊世代の男性に向けて、男の料理を提案する住宅。カッコいいアイランドキッチンで昔の同僚を呼んでホームパーティをしたり、家族をもてなしたりという提案が、潜在的なニーズを形にしているようで面白いな、と。これからは、こんなストーリー性のある住宅が求められてくるように感じています。ストーリー提案があったほうが、よりその住宅のよさが伝わるのではないでしょうか。
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同じ人でも状況や年齢などのタイミングによって家に求めるものは変わってきますよね。どのタイミングで家を建てるのかは重要な気がするのですが。
河名
そうですね。難しい問題ではありますが、たとえば戸建住宅の場合、敷地さえあれば増築も減築もできますから、刻々と変化するライフスタイルに合わせていくひとつの方法ではないでしょうか。年齢の若い時期で取得すれば、長い間で変化するニーズにもリフォームなどで対応できますし、買い替えだってできますから、安心して長く暮らしたい人にとっては、それもひとつの選択肢なんだと思います。
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これから家をつくろうという方にメッセージはありますか?
河名
これだけ情報があふれていますので、まずは自分の家族がどんな家に住みたいかをよく話し合うことをお勧めします。「家族リクエストシート」といったものに、パパやママの要望や家族全員のここは譲れない点を優先順位付きで全部書き出しておくんです。それを持って住宅展示場に行ったり、ハウスメーカーの営業所を訪ねたりすれば、当初の軸がぶれることなく余裕をもってプランが選べます。これで、人一倍熱心なママの要望ばかりが通ったりすることもなく、家族みんなが満足できる家づくりができるのではないでしょうか。