All About トップ    編集長インタビュー    第50回:「介護・福祉業界で働く」ガイド  宮下 公美子


「介護・福祉業界で働く」ガイド:宮下 公美子

第50回:「介護・福祉業界で働く」ガイド
宮下 公美子

2007年11月20日


「All About」を支える約500名のガイド。ガイドは一つのテーマに一人だけ。厳しいいくつもの審査を通りぬけ、そのテーマのナビゲーターとなる。彼らがそのテーマに魅せられた理由とは? All Aboutを通して発信したいこととは何なのか? このインタビューでガイドたちの素顔に迫ります。

厳しい介護業界全体底上げの一助に。働くみなさんと一緒に、業界の将来について考えたい。

「介護・福祉業界で働く」ガイド:宮下 公美子
「介護・福祉業界で働く」ガイド:宮下 公美子

左:「介護・福祉業界で働く」ガイド
宮下 公美子/
右:編集長 森川 さゆり

編集長:森川さゆりと「介護・福祉業界で働く」ガイド:宮下 公美子

Photo by Hideo Matsumura


ガイドインタビュー第50回目は、「介護・福祉業界で働く」ガイドの宮下 公美子さん。さまざまなジャンルをカバーするライターとして活躍する中で、介護・福祉業界の奥深さに魅せられ、ヘルパー2級・社会福祉士の資格を取得。人材・資金不足から厳しいといわれる介護・福祉業界の現状と宮下さんの思いをお伺いしました。

大変なのに生き生きと働く人が多い介護・福祉業界は奥深い

ライターとして関わったことがきっかけで、資格を取得

――
All Aboutのガイドとして活躍される前は、どんなことをされていたんですか?

宮下
就職情報から、女性誌、グルメ関係などいろいろな分野でライターをしていました。東京ディズニーリゾートのガイドブックを7年間担当したこともあり、当時は「生き字引」と呼ばれたくらいだったんですよ(笑)。

――
介護・福祉分野に特化するようになったきっかけはなんですか?

宮下
介護保険制度が開始される際に、転職情報誌『とらばーゆ』で力をいれて取材をしていた時期があり、ライターとして関わったことがきっかけです。もともと看護の仕事に興味があったのですが、さらに大変で、もっと給料が低いのに、生き生きと働いている人が多い介護・福祉業界ってすごいな、おもしろいなと思って、積極的に取材を引き受けるようになりました。

――
ホームヘルパーや社会福祉士などの資格も持っていらっしゃるんですよね?

宮下
ホームヘルパーの資格を取ったのは、All Aboutのガイドを始めてからです。奥深い業界ですが、現場を知らなかったので、知識だけで記事を書いているのではないかと感じていました。もう少し現場のことが分かったら、もっといい記事が作れるのでは?と思い、知識も身につき、仕事にも出来るヘルパーの資格を取りました。社会福祉士の資格取得の勉強は、ガイド記事で受講レポートを書いたのですが、本当に大変でした。取るまでは知らなかったのですが、現職の方も多く目指す資格なんですよ。私は通信講座で学んだのですが、大学生から、退職後ソーシャル・ワークをしていきたいと考えている年配のかたまで、受講生の年齢層も幅広かったです。

人材不足・低賃金など、介護業界の課題は山積み

積極的に意見を募集して、働く人の役に立ちたい

――
コムスン問題は、衝撃的なニュースでしたね。介護業界で働く人へ影響がありましたか?

宮下
業界イメージが悪くなり、どんどん人が辞めていったことが1つあります。募集をしても応募がなく、これまで以上に採用が難しくなっています。それにも関わらず、在宅の事業者には人員配置基準について行政から監査が入り、一部自治体では、人員が配置基準に一時的にでも不足していた事業所は、指定取り消しとしているケースもあります。事業者には非常に厳しい状況です。業界構造を抜本的に変えて、イメージアップを図らないと、介護業界は疲弊して立ち行かなくなるという危機感もあるくらいです。

――
人員不足は深刻な問題ですね。

宮下
事業者収入の大半は介護保険の報酬なので、一般の営利企業と違い、経営努力をしても限界があります。過去の改定では、事業者あるいは施設が経営努力で黒字を出すと、介護報酬を削減されてきました。給与を上げるのはかなり難しい状況です。法律を作って、介護職の給与をとりあえず月3万円上げようという運動もあるくらいなんですよ。でもそれくらいしないと、いくら情熱を持っていても、介護業界で働いていては家族を養えず、転職をせざるを得ない状況です。次々と人が入れ替わっていくので、介護のスキルが継承されていきません。このままでは、業界全体をみてもなかなか一定以上からレベルアップしにくいと思います。

――
本当に業界自体が厳しい状況にあるんですね。サイト運営では何か難しい点がありますか?

宮下
読者には、介護業界で働いている被雇用者も、雇用側の事業者・経営者もいます。読者からの問い合わせを記事にすることもあるのですが、例えば「移動時間の賃金はヘルパーに支払われないの?」という質問に、「法律で決まりがあるので、払わない事業者がよくない。ちゃんと請求して」と書いたことがあります。すると事業者の方から、「移動時間は介護報酬に反映されていないので、支払えば事業者の持ち出しになる。その点はどう考えているのか」とお叱りをいただいて。働いている人にはできるだけ多い給与を、と思いますが、事業者が厳しい中で一生懸命経営しているのも事実。一体どうしたらいいんだろうと、本当に思いますね。双方から意見をいただけるのは難しいですが勉強になります。

――
読者とのコミュニケーションが多いサイトでもありますね。

宮下
読者には「質問はいくらでも受け付けます」と呼びかけていて、出来るだけ答えるようにしています。始めた頃は、介護の仕事があまり注目されていなかったので、どんな人がサイトを見てくれていて、どういう人に対して伝えているのか、本当に分かりませんでした。いうなれば、公園でいきなり街頭演説を始めたけれど、チラチラ見ている人はいるものの、聞いてくれているかどうか分からない、というような状況。けれど、今は人が集まっていて、顔が見えて、どんな人かが分かってきて、そこから批判を浴びたり、応援してもらったりと声も聞こえてきている、なんとなくコミュニティーっぽくなってきたと思っています。

介護職の地位向上を図るために、何かをしたい

問題意識を持つ人の母数を増やしていくことがカギ

――
「介護・福祉業界で働く」サイトを通じて伝えたいことは、何ですか?

宮下
啓蒙というと非常におこがましいですが、読者のみなさんに、「介護職の地位を上げるために、自分たちでいろいろと考えていこう」と提案したいんです。特に「何の働きかけもしないで、誰かに何かをしてもらおうと思うのでは、何も変わらない」ということを伝えたいですね。

介護の仕事は生活に密着しているだけに、気をつけなければいけないこと、求められることもとても多い。大切で大変な仕事なのに、本当に報われない仕事です。だからこそ、この業界を変えていくには、業界のこと、介護保険のこと、そして日本の国全体のあり方についても考え、学んでいく必要があるのかもしれません。記事の中で「ここが問題だから、こういう風にしなくてはいけない」というような書き方をすると、「言うだけではダメだ」「きれいごとだ」というような批判をたくさん頂きます。確かにそのとおりだと思っています。けれど、中にはまったく問題意識を持っていないかた、問題意識の薄いかたもいます。そういうかたに、まずは気がついてほしいと思っているので、怒られても言い続けます(笑)。

――
実際、厳しい環境の中で働いている人が本当に多いですよね。この業界は今後どうなっていくと思いますか?

宮下
決して高くない給料なのに、モラルも高く、モチベーションを保って、みなさんがんばっています。けれど「いつまで続けられるか分かりません……」という声もよく聞くんです。何とか待遇を改善しないと、日本の介護は本当にぼろぼろになってしまいます。

国の方針として、フィリピンやインドネシアから介護職の人材を受け入れることも決まりました。本当は外国人を受け入れる以前に、待遇を改善して、日本人の人材を確保できるようにしてほしい。けれど、待遇改善のためには介護報酬を上げなくてはならない。介護報酬を上げるには介護保険を上げなければいけない。上げれば高齢者の方の生活を圧迫してしまう……。難しいですよね。

それに、介護職の待遇改善を訴える前に、自分たちの技術や知識が、高い給与を得るに値するのかどうかを見直す必要もあります。All Aboutの読者には、自分自身のレベルアップを心がけている意識の高いかたがたくさんいます。ひとりひとりが周りの人々を啓蒙して、意識の高い介護職の母数を増やしていくことが、業界を変えていきます。このサイトを通して、そのお手伝いができればと考えています。

宮下さんがよく利用するAll Aboutのサイト