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落語の枕(まくら)とは?役割や演目、始まり方を予想する楽しみ方

落語には、本編に入る前におこなう「枕(まくら)」というものがあります。枕とは、落語の始まり方として定着している、落語を聞きやすくするための重要な手法で、より面白く聞くには枕を理解する必要があります。今回は、落語の「枕」を紹介します。

執筆者:清水 篤司

<目次>
 

落語の枕(まくら)とは? 演目に関連する話題をする

落語の枕(まくら)とは?役割や演目、始まり方を予想する楽しみ方

落語のおもしろさ

落語には、本編に入る前におこなう「まくら(枕)」というものがあります。落語を聞きやすくするための重要な手法です。今回は、落語の「まくら」を紹介します。
 
 
 
落語はまくらと本編、そしてオチで構成されています。この3つを、それぞれ独立させることなく、一連の流れで話します。この流れで一席の落語ができあがるというワケです。

まず、噺家が高座に登場し、観客に対する感謝の意や自己紹介、もしくは時節や時事に軽く触れます。ここで、観客をある程度ほぐしながら、そのときの会場の様子を確かめます。

そして、演じる落語の演目にあった話をし始めます。これが、落語の中でまくらと呼ばれる部分です。そのまくらには大きく2つの種類があります。

このまくらでは、演じる落語の演目に関連した話をします。例えば、子供が登場する演目だったら、子供に関連する小噺をしたり、現代の子供のことを笑いとともにおしゃべりします。子供が主役の落語を演じるのに酔っ払いや泥棒の小噺や話題を話したりしません。
 
落語の枕ことば

『ま・く・ら』(講談社文庫) まくらで1時間以上話すときがある、まくらをひとつの「芸」まで高めた柳家小三治のまくら集

 

落語の枕(まくら)は演目の予備知識を解説する役割も

これが「へっつい」竈のことです。昔はこの竈で調理の煮炊きの一切をしました
また、特に古典落語の中には現代では、ほとんど使われなくなった、人、物、様子などの言葉がたくさん登場しますので、演じる落語の演目の中でキーワードとなる言葉がそれにあたる場合に、知識としてお客さんに、さりげなく解説します。

例えば、「へっつい幽霊」という演目があります。これは「へっつい」にとり憑いている幽霊の笑い話なのですが、演目の名にもなっている「へっつい」は今では、ほとんど死語となっているので、まくらで昔の台所を紹介しながら、「へっつい」自体を説明します。

このように、まくらはお客さんが本編に入りやすい状態にほぐす役割を兼ねているのです。このまくらは落語にとって前フリなのです。また、まくらは「話す」のではなく、「振る」といいます。なぜなら、まずはこのまくらでお客さんを「振り向かせる」ということでしょう。

このまくらでお客さんを徐々に、落語の世界に引き込みます。このまくらと本編がさりげなく、フワッとした感じで、お客さんを引き込むことができれば一人前の噺家と言えるかもしれませんね。

さらに、落語を聞きなれてくると、このまくら聞いただけで、何の演目かが分かるようになります。そこまで、いけばかなりの落語通。
 

前座の与太郎噺

茶の湯
柳家小三治の『落語名人会(32)茶の湯』(ソニーレコード)
趣味の話をまくらで振り出したら、ほとんどこの「茶の湯」になります。
「落語に登場する、おなじみの人物といったら、八っあん、熊さん、そして近所のご隠居。また、落語の中には少々抜けた人物が登場します」といったようなフレーズが出てきたら、ほぼ間違いなく「牛ほめ」「子ほめ」「道具屋」の三大与太郎噺でしょう。

これは、前座さんがする基本中の基本の噺ですので、寄席や落語会の一番手で聞かれます。また、高座の時間が短い場合は、真打でも高座にかけます。
 

枕(まくら)で落語の演目が予想できる?

特に決まったフレーズはありませんが、趣味の話題で義太夫を振れば、9割5分で「寝床」です。もし、茶道ならば、間違いなく「茶の湯」でしょう。

また、「数多く偽り多く世の中なれども、この可愛さは偽りなし」と語れれば、まずは名作「子別れ・下」でしょう。または、子供の可愛さや昔の子供ことを話題にすれば「薮入り」。お正月なら、「初天神」ですね。

他にも、この演目にはこのまくらといったような、大概決まったまくらがあります。「なんだか、このまくらをどこかで聞いたことがあるぞ?」と感じれば、かなり落語を聞きこんでいる証拠。そのうちに、まくらを聞くだけで「今日はこの噺をするな」と分かるようになります。たまに、それを裏切ってくれる、噺家もいます。
 

落語の枕(まくら)を楽しむ

まくらは演目への前フリだけでなく、その演じる噺家を最大限にアピールする場でもあります。まくらは決まったフレーズも多くありますが、ほとんどがその噺家のオリジナルのものや、自分の周りに起きた世間話ですので、このまくらでお客さんを掴めないようならば、本編の落語が面白いはずがありません(名人と呼ばれる人なら、まくらなんか振らずに本編だけで勝負できるでしょうが)。

それゆえ、落語にとってまくらはかなり重要な部分を占めると思います。ぜに、噺家自身の色が出るまくらを楽しんでみてはいかがでしょうか? きっと落語の楽しみがさらに広がりますよ。

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