メルセデス・ベンツ/メルセデス・ベンツの車種情報・試乗レポート

40年前の“パゴダ”で宮崎への旅(前編)

「名車に乗って、各地の旨いモンをいただく……」に惹かれ、'69年式のM・ベンツSLに乗って宮崎まで行ってきました。人生の縮図にも似たグランドツーリング、どんな出会いや旨いモノがまっているのでしょう。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

「40年前のベンツに乗って宮崎まで走りませんか……」

元メルセデス広報の川上さんから、そんな誘いがあった……。

と書くと紀行文の始まりとしては格好いいのだけれど、実際には、 「パコダに乗って宮崎の家まで帰るんだ。途中で旨いもの食いながら」という話を聞きつけて、「……、川上さん、ボクも乗っていきたいデス」と、いやしくもよだれを垂らしつつ、即決していたのだった。名車パゴダのSLに乗れて、各地の旨いモンをいただく旅。ボクの大好きなグランドツーリングの典型パターンなのだった。

“ああ、人生グランド・ツーリング”は、ギョーカイの大先輩/徳大寺有恒先生の名著タイトル。おそれながら、ボクもグランドツーリングは人生の縮図だと感じることが多い。目的が明確な者もあれば、そうでない者もある。急ぐ者もあるし、ゆっくり走る者もある。脇目もふらずがむしゃらに突き進む者もあれば、いちいち寄り道を楽しむ者もある。場所や人、いろんな出会いがあり、事件や運命に巻き込まれたりもする。喜び、怒り、悲しみ、楽しむ。

走りながらまわりをみて、いつも想う。人それぞれ、グランドツーリングの趣は違っていて、奥が深い。

ボクのグランドツーリング観もまた、ちょっと自分の人生に似ているような気がする。目的地と目標は、なんとなく決まっている。それがなきゃ、やっぱり始まらない。けれども、まぁゴールに向かってそう急いで行っても仕方ないし、それ以外の楽しみも経験したいものだから、割と自由に進路を変える方だ。特に、途中に旨いものアリと知ったときには、迷うことなく、高速の割引がそこで終わってしまっても、寄り道するだろう。そのまま走れば目的地まで千円で行けるからって、数千円と引き換えに失う経験や出会いの方が、 もったいない。

'69年式のM・ベンツ280SLと、元メルセデスベンツ日本の川上昌明さん。グランドツーリング記をはじめる前に、簡単に両者(車)の紹介をしておこう。

M・ベンツSL
'69年式のM・ベンツ280SL

M・ベンツSL
M・ベンツSL
M・ベンツ280SLのインパネとエンジン
まずは、280SL、通称パゴダについて。パゴダとは、乗降性を高めた逆ぞりハードルーフ(もちろんデタッチャブル)の名称だ。SLとしては、かの300SLシリーズと190SLシリーズの両方を継ぐ第二世代。W113と呼ばれる。'63年に230SLとしてデビューし、250SLを経て'67年からこの280SLとなった。

170PS/240Nmの2.8リッター直6SOHCエンジンを搭載。4速オートマチックを組み合わせた(4MT、5MTもあり)。'71年にその生産を終えている。シリーズの総生産台数はおよそ5万台弱(うち、ほぼ半数が280SL)。

川上昌明さん
元メルセデスベンツ日本の川上昌明さん

川上さんは、われわれ自動車メディアに携わる人間には、とてもなじみの深い方だ。帝人、ホンダを経てメルセデスの日本法人へ。 マーケティングと広報のトップを務められた。今は引退されて、趣味の家がある宮崎と、家族が住まう東京を、行ったり来たりの、隠居というには忙しい日々を送っておられる。

東京から宮崎へパゴダSLを運ぶ。クーラーが付いていない(!)ので、基本的には深夜の移動となった。途中、滋賀県と福岡県によって、地元のディーラーで調子をみてもらう間、旨いモンでも食おうという算段。行く先々で待ち受けるは、川上さんとの付き合いが深い方々。さてさて、どんな出会いが待ち受けていたのだろうか……。

ひとつだけ、はじめにお断りしておきます。途中、いろんな名店が登場しますが、ネットメディアのお約束を無視して、店名以外の情報は、住所や連絡先などはもちろんのこと、お店サイトへのリンクもありません。行きたい!と思った方は、どうか自力で探してみてください(まあ、検索すりゃ一発だろうけど)。せめて、自分の意思で探すというプロセスのある方が、ボクは“楽しい”と思います。面倒も“楽”のうちなのよ、っと……。

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