文章:郡司 勇(All About「温泉レポート」旧ガイド)
1新木鉱泉 再訪
単純硫黄泉 15.5度 HS5.71
透明、少重曹味+源泉のみ痕跡たまご味、
無臭 循環 源泉樽浴槽あり 蒸発450
母屋は文政年間築 小屋裏の梁が表し、風情良し
弱いすべすべあり。源泉水風呂良し
秩父盆地は関東の小京都ともいえる地方都市で、古い文化が良く残っている。歴史があり寺院が多いので34ヶ所の巡礼の寺巡りがある。それらは瀟洒な結構が多く四国88ヶ所に続く寺巡りで有名である。
その四番札所の金昌寺に近いところには単純硫黄泉の鉱泉が多く湧出し不動鉱泉、山田鉱泉、美やま鉱泉、丸山鉱泉、和銅鉱泉、武甲鉱泉、などの鉱泉群があり以前楽しみで制覇したものである。
この地域は硫黄臭のある湧水が出る場所で、それらは繊細な硫黄泉群なので加熱や時間の経過で飛散し白湯との違いが判別できなくなる恐れがあり、温泉の訪問タイミングでその評価や感触が変ってくると思われる。
今回の新木鉱泉は3回目になるが、温泉よりもその宿の建物が民家建築の落ち着いた佇まいを見せ記憶に強い。母屋が白眉で天井の低いエントランスが旧家を思わせるが、中には吹き抜けの空間を内包しており飛騨高山などにもある商家を思わせる。部屋が秀逸で文政年間創建当時の梁や小屋組みが現しになり曲がりくねった黒い梁が見える。民家園などに保存されている文化財のような表現を見せている。
浴室も凝った物で一人用の桶風呂や木枠の内湯があり民芸的な良さを持っている。湯は15.5度の単純硫黄泉でHS 5.71mgのものである。しかし加熱循環で硫黄臭は飛んでしまっている。源泉垂流しの樽風呂がありサウナの水風呂として利用されているがここのみ僅かに痕跡の硫黄臭が感知できた。
2柴原温泉 かやの家 再訪
単純硫黄泉 11.4度 HS 4.88
透明、無味、無臭 循環
四角いかやの木露天風呂と八角露天風呂がある。
施設の情緒はあるが、温泉を感じず。
柴原温泉で以前白百合荘といった宿、朝日旅行会の秘湯を守る会に入会されて「かやの家」と改名された。広いエントランスロビーが白木で美しく清々とした宿である。各種の旅行雑誌で四角または八角の「かやの木」露天風呂が紹介されている。
ここも3回目であるが「かやの木露天風呂」は楽しみであった。湯は貴重なもので単純硫黄泉が毎分1.6リットルである。HSは4.88mgであるが循環加熱でほとんど温泉を感じない。透明、無味、無臭ながら木の浴槽の香りがある。源泉利用の浴槽を一個所にするなどの改善が必要であると思った。
3柴原温泉 菅沼館 温泉地再訪
単純硫黄泉 11.3度 HS7.99 柴原の湯元、
湯治宿と銘打ってあり好感
浴場1ヶ所 源泉入れて加熱する方式。
源泉垂れ流しをバケツで加湯自在の方式。
透明、たまご味、はっきりとした硫黄臭。
つるつるやや強しの湯。良い湯である。
柴原の本来の湯は良かった。今回の温泉行きで一番
硫黄臭多し、浴場に近づくだけで硫黄臭感知。
温泉とは良い物である。昔からの名湯はやはりそれだけの格調を持っていると思った。柴原温泉は4軒の宿があるがこの菅沼館は湯元として古くから営業されている。入口の看板に湯治宿と書かれその自信が伺える。
建築が秀逸である。落ち着いた宿の原風景とも言える木造の二階家で周囲に欄干が廻り四畳半の湯治部屋が襖の仕切りによって連続している。特にアピールする意匠ではないが手摺や窓枠、庇などに見えるレトロな意匠が自然にまとまっている。この温泉宿の外観に心を打たれしみじみと眺めてしまった。
浴室は一ヶ所のみであるが湧出量を考えると必要充分な大きさと思われる。扉を開くと硫黄臭が漂い温泉の存在感を主張していた。加熱浴槽の脇に源泉が垂れ流しされておりポリバケツがおいてある。それを各自、自由に加湯自在としている使い方である。
源泉はかなりの硫黄臭で飲泉するとたまご味のしっかりしたものである。HSはこの界隈最多の7.99mgである。ずっと掛け流しなので源泉の新鮮さがあり、硫黄の表現が強く残っているのである。
入浴してみると匂いや味覚だけでなくつるつるするトロミを持った泉質であり非常に感触が良い。隠れた名湯といっても良いと思った。